おバカな私と友人その他

謎の車( 1 / 1 )

 この間、町なかで面白い物を見た。私がバスを待っていたときである。

 私はまだか、まだかと道路を見ていた。すると、派手な車が通って行くではないか。言っておくが霊柩車ではない。私は車にはあまり詳しくないので良く解らないが、乗用車の後ろに四角いコンテナを着けたような形だった。んっ、何か書いてある。

《人生のあらゆるステージに 梅酢》

「はっ?梅酢って、あの梅酢だよね、あの梅干しを作るときにでてくる酸っぱい汁」

 私は、一瞬硬直した。なぜ、あらゆるステージに梅酢なんだろう。交通事故にあって立ち上がれなくても梅酢を飲めばヘイヘイヘイと立ち上がれるのだろうか、 そんなことがある訳がない、そんなことがあれば、ガマの油売りも商売あがったりである。うーん、どのようにして梅酢を人生のあらゆるステージに活用するの か、私の人生謎のステージである。

田舎の出来事( 1 / 1 )

 あれは、私がまだ小学生のときの事件である。
友人のタカジンと帰っていた時、川幅5メートル程の川の向こう岸のやぶからガサガサ音が聞こえてきた。はてっ、と思い二人で立ち止まる。

「一体なんだろう。」

 そんなことを言っている間に黒い影が見えた。四つ足である。しかし、妙にでかい、熊だろうか、いやいや、いくらここが田舎だからといって、熊まではいない、ドデポンとした犬かもしれない。ガサッ、ガサッ、

『あっ。』

 二人同時に声を上げた、熊である・・・。私の思考回路は爆発寸前、タカジンはガチャラピコーンといった感じである。

「なぜ、こんな所に熊がいるのだろう、恐ろしい、このまま食べられるかもしれない、熊牧場(熊本にある熊のテーマパーク)から逃げてきたのだろうか、しかし、そんなニュースは聞いていない、きっと幻だ。」

 小学生の頭でさえ、現実逃避をはじめる世界である。熊は、立ち上がり両手を広げた。

「でっでかい・・・。」

 これは相手をいかくするときのポーズなのだろうが、私にはいただきますの合図に見えた。

「あぁ、なんて良くできた幻だろう、立ち上がる熊、折れる小枝の音、そしてあの爪と牙、現実そのものではないか・・・。」

 実際に現実である。しかし、よく考えると川がある、ブロックを積んだ上に道があるので谷の様になっている。

「なんだ、これなら安心だ。」

 幻だと言いながら現状を分析している自分を凄いと思った。

「しかし、まてよ私でさえ、幅飛びで4mはゆうに飛ぶのだから、私の3倍はあろうかというデカイ熊なら3倍の12mは飛ぶのでは。」

 12mを跳躍する熊、考えただけでも恐ろしい、オリンピック委員会もおどろきである。私は、蛙になりたいと思った。

「あの大きさで、三段跳びて5m飛べるのだ。人間の大きさなら・・・気持ち悪い、そうだ兎にしよう。」

 そんなことを考えているうちに、熊はまた四つんばいになった。

「とうとう、こっちにくる気だ、冥土の土産が熊の12mジャンプとは・・・ランドセルで殴ってやる。」

 私は、静かにランドセルを背中からおろすと抗戦体制をとった。熊抜きで見れば怪しい小学生である。ガサッ

「来るっ。」

 と思ったら本当に熊はクルッと方向を変えた。

「あれっ。」

 ノッシ、ノッシと熊は去っていった。

「私はまずそうなのだろうか・・はっ!タカジン。」

 辺りを見回してもタカジンはいない。

「逃げたな、まぁいいか。」

 後から、聞いた話しだがタカジンは助けを呼んだらしい。しかし、熊が出たなどという話は、誰にも信用されなかったようだ。後日、私も一緒にみんなに訴えたのだが誰もこの話を信用するものはなく、私はしばらく嘘つきのレッテルをはられることになる。

田舎の小学校( 1 / 1 )

 私のいた小学校は木造平屋建という代物だった。全校生徒も50人弱、私の同学年はたったの5人という、超田舎である。ここまで田舎だと鼻も高い、なん てったって熊もでるのだ。夏になると毛虫が道端で車にひかれてたくさん死んでおり、虫嫌いの私にとってはまるで地獄絵図だった。さらに登校途中の大きな橋 の上ではある時期になると産卵を終えたかげろうの死体が雪のように2〜4cm程積もる。これも私にとっては地獄である。かげろうの死体というのは困ったも ので臭い、更によく滑る。私は、こけたことがないが、私の知人でこけた人を何人か見かけた。それをみるたび自分がこけたところを想像してしまい気持ち悪く なる。私は、熊に遭遇するよりもここでこけるほうがいやだと思ったほどである。しかし、学校は面白い、全校生徒1〜6年生までみんなお友達である。昼休み には全校のほぼ2/3がグランドで一つのスポーツを一緒にする。先生達の半分もまざっている。特に冬のサッカーは面白かった。保健の先生などは長靴にカイ ロを5〜8個ほど詰めて頑張っていた。誰がきめたわけでもないのに、季節ごとにやるスポーツは決まっていたようなきがする。
 数年前の事である。 私やみんなは、木造の校舎が大好きだった。なんとも言えない温もりがあった。木の床も木の壁も木の柱も全てに命があった。しかし、そんな校舎も年月には勝 てなかった。何十年もこの場所に立っていた校舎の取壊しが決定した。鉄筋コンクリートになってしまうのだ。みんな口を合わせて嫌だと言った。誰も望んでい ないのに取り壊されてしまうのだ。こんなに、みんなに愛されているのに・・・。
 取り壊されるのは校舎だけではなかった。グランドにあった、大きなポプリの木も桜の木も菜の花の咲く場所もクローバーのたくさん咲く場所もみんな、みんな消えてしまう。
  工事の着工は私たち5人が卒業してから始まった。学校の側を通るたびに思い出の場所が一つ、また、一つと壊されていった。心が痛かった。私たち5人も今ま での卒業生達もみんな声には出さなかったが、みんな泣きたかった。昔、この小学校にいた先生も何人か尋ねてきた。一度でもそこで生活すればずっと忘れられ ないような場所だったのだ。
 そして、工事は終わった。奇麗な鉄筋コンクリートの校舎と殺風景なグラウンドがそこにはできた。今では先生達のなか で、木造校舎を知る人はほんの2〜3人になってしまった。生徒も、もうそろそろ、木造校舎で暮らした年代は誰も居なくなるだろう。木造校舎の後をしのばせ るのは、写真と私達の心の中のあの暖かい姿だけである。

田舎のある朝のこと( 1 / 1 )

 当時、中学生だった私は、学校まで自転車で通っていた。その日はいつもより遅くなり急いでいたようなきがする。
 いつもの道を通っていると、ガサッ、ガサッ、と音がする。私は急に止まった。過去に熊と出会った場所である。しかし、今回はこちらの岸の方の山から音がする。
「もしや、あの時の熊では。」
  熊に会ったのは、この時からやく3〜4年前である。もし、そうならあの熊は私を大きくなってから食べようと思ったのだろうか。まるで小魚を釣り上げたおや じのような熊である。しかし、様子がおかしい、すぐ近くで音がするのに、いっこうに姿が見えない。それどころか、小さな影が2〜3個見える。
「うーん、一体なんだろう・・・あっ、こんな事を考えている暇はない急がなければ。」
 その時一つの黒い影が私の前の道路に飛び降りた。
「えっ?。」
 私の目は点になった。『猿』である・・・。赤いお尻をこちらに向けて、前のほうを見ている。そしてこちらを振り返る。バチッ、目線があう音がしたような気がする。向こうも気まずいのか動きが一瞬止まった。猿と見つめあっても嬉しくない。そのまま5秒程たったろうか、
「ウキィッ。」
 猿は突然ないた。思わずウッキィと言いたくなる。猿は山の中に向かってもう一声した。
「ウッキィキィ。」
 すると驚いたことに、ぞろぞろと猿が出てくるではないかコアラのマーチどころかお猿のマーチである。私の頭の中では、オモチャのマーチがお猿のマーチとして流れだした。まさに、「お猿のマーチだ、ラッタッタ。」といった感じてある。
「あぁ、さすが超田舎、猿までいるのか、今度から敬意を称して、グレェート超田舎と呼ぼう。」
 お猿の登場によって、私の故郷は超田舎から『グレェート超田舎』に格上げである。最後の猿が川の方へおりていった。
「おやっ。」
 少しだけおじぎをしたような気がした。
ひらくん
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