や行( 4 / 6 )
歪みながら時は過ぎる
冷たく広がる空に淡く寂しい光
クリスマスが近づき少しだけ華やぐ街
今年、僕は無意識の罪をいくつ犯したろう
君は首を横に振りながら、肯定している
何らおかしなことじゃない
世の橋はそうして渡るものだろう
時は今年も積み重なった
少しずつ歪みながら
静かに傾きながら
人はそれに気づいたとしても
慌ただしい季節を理由に
足を速め、通り過ぎる
や行( 5 / 6 )
勇気よ
数限りなく振り絞ってきた勇気たち
それらは凶器となって僕に襲い掛かった
怖いものを知るたびに、人は老いてゆく
それらは世界中に散らばっている
狂人の前に立ちふさがる勇気
小さな命を預かる勇気
立ち向かう勇気
受け入れる勇気
自死する勇気
呼吸を続ける勇気
それらは美しく残酷で
必要であり、不必要な厄介なもの
人はそれらを時に抱え、時に捨てた
勇者には明日がある
勇者でなくとも明日は来る
や行( 6 / 6 )
48のオールドたち
地球に捨てられた48のオールドたち
他者からの評価はともかく
ここまでよく生きてきたね
何せ地球に捨てられた日から
30ものオールドたちが加わったのだから
キッチンの上に置かれた水差しの薔薇
盛りを過ぎて花びらが下を向き、抜け落ちてゆく
床に落ち赤を広げる最後の表現
高層ビルから飛び降りる人のように
オールドたちが加わるたびに
大切なものがひらひらと舞って死ぬ
人生への憎しみも抜け落ちて枯れ木になればいい
ら行( 1 / 6 )
流行
立体の雲を浮かべ、空は夏を主張する
それでも夜には秋虫の声
季節は止まらない
時間の流れに乗って
数えきれない言葉が流行り
数えきれないものが廃れ
病気や障害も一つの個性と
弁舌滑らかに話す者すら現れ
自分が立場を変えれば5分と持たず
心身の健康を抱きしめる
雲も次第に痩せていき
風を冷たく感じる日も来るのだろう
その頃にも何かが流行り、何かが廃れる