空乃彼方詩集

ら行( 2 / 6 )

らしく

男は男らしく強くあれ
女は女らしく可愛らしく
大人は大人らしく冷静に
子供は子供らしく無邪気であれ
年寄りはニコニコ日向ぼっこ
若者は若者らしく元気出せ
らしく らしく らしく

息が詰まるんだよね
らしく、らしく、らしくって


わがままを言わせてもらえるのなら
あなたらしくいてください
そのままでいいから
何も変わる必要なんてないんだ
つまずくことを知らない呑気な空は
白々しいほど青かった

ら行( 3 / 6 )

緑色の雨

夜空から緑色の雨が降る

傘にはじかれ、滴り落ちる雫は透明である

緑色の雨は、夏の花火の残像なのだろう

閑静な住宅街は、静かで寂れた街並みに変わった

萎れた空気を秋の音色が鳴いて励ます


僕は例年通り、苦悩の色に埋め尽くされている

未だに幸せの色を知らずにいる

早いもので、今年も4ヶ月を切った

ら行( 4 / 6 )

凛とした光

バケツから不安が溢れ出していたから
僕はそちらに気をとられて
握り締めていた小さじ一杯の希望を落としてしまった
絶望の大海に落としてしまった


あれだけの希望を集めるのに
どれほどの時間を要したことか
どれほどの労力を要したことか


秋は同情もせず
あざ笑いもせず
ただただ凛とした光を放っている

ら行( 5 / 6 )

レール

雨に洗われたレールが朝日に照らされ輝く
少年のころ、この上を走る者たちに憧れていた
半端な力を加えても微動だにしない鉄の道
そのことに安心して疾走する列車たち
僕はどこまでも続くレールの果てを見つめていた
知りたくても叶わない遠い未来のようだった

右へ進むべきか
左へ進むべきか
どちらが善で、どちらが悪か
どちらが成功で、どちらが失敗か
どちらが賑やかで、どちらが寂れているか
どちらがささやかで、どちらが虚しいか
どちらが生で、どちらが死か

大人になった僕は修正の利かない直線の怖さに目を伏せた
kumabe
作家:空乃彼方
空乃彼方詩集
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