空乃彼方詩集

わ行( 1 / 1 )

笑えて泣けてくる

選挙期間中の名前の連呼のように
止まない雨はないとか
明けない夜はないとか
陳腐な言葉たちがなみなみと注がれる

ジャンクフードの満腹感でベルトを緩めたら
止まないプリンや明けないケーキが次々と運ばれてくる
これらを食べ尽くす別腹などもはやどこにもない

地獄に落ちてから30年が過ぎた
あの時、僕はまだ高校生だったのか
何だか笑えて泣けてくる


最近、よく死者に話し掛けるようになった
たまに声を返してくれるけれど
向こうでの生活は一切語らない

冷たい小雨降る中
札束も、針を刻まぬ時計も
世間知らずの海にあっけなく飲み込まれてゆく
何だか笑えて泣けてくる
kumabe
作家:空乃彼方
空乃彼方詩集
0
  • 0円
  • ダウンロード

215 / 215