空乃彼方詩集

ら行( 1 / 6 )

流行

立体の雲を浮かべ、空は夏を主張する
それでも夜には秋虫の声
季節は止まらない

時間の流れに乗って
数えきれない言葉が流行り
数えきれないものが廃れ

病気や障害も一つの個性と
弁舌滑らかに話す者すら現れ
自分が立場を変えれば5分と持たず
心身の健康を抱きしめる

雲も次第に痩せていき
風を冷たく感じる日も来るのだろう
その頃にも何かが流行り、何かが廃れる

ら行( 2 / 6 )

らしく

男は男らしく強くあれ
女は女らしく可愛らしく
大人は大人らしく冷静に
子供は子供らしく無邪気であれ
年寄りはニコニコ日向ぼっこ
若者は若者らしく元気出せ
らしく らしく らしく

息が詰まるんだよね
らしく、らしく、らしくって


わがままを言わせてもらえるのなら
あなたらしくいてください
そのままでいいから
何も変わる必要なんてないんだ
つまずくことを知らない呑気な空は
白々しいほど青かった

ら行( 3 / 6 )

緑色の雨

夜空から緑色の雨が降る

傘にはじかれ、滴り落ちる雫は透明である

緑色の雨は、夏の花火の残像なのだろう

閑静な住宅街は、静かで寂れた街並みに変わった

萎れた空気を秋の音色が鳴いて励ます


僕は例年通り、苦悩の色に埋め尽くされている

未だに幸せの色を知らずにいる

早いもので、今年も4ヶ月を切った

ら行( 4 / 6 )

凛とした光

バケツから不安が溢れ出していたから
僕はそちらに気をとられて
握り締めていた小さじ一杯の希望を落としてしまった
絶望の大海に落としてしまった


あれだけの希望を集めるのに
どれほどの時間を要したことか
どれほどの労力を要したことか


秋は同情もせず
あざ笑いもせず
ただただ凛とした光を放っている

kumabe
作家:空乃彼方
空乃彼方詩集
0
  • 0円
  • ダウンロード

209 / 215