や行( 6 / 6 )
48のオールドたち
地球に捨てられた48のオールドたち
他者からの評価はともかく
ここまでよく生きてきたね
何せ地球に捨てられた日から
30ものオールドたちが加わったのだから
キッチンの上に置かれた水差しの薔薇
盛りを過ぎて花びらが下を向き、抜け落ちてゆく
床に落ち赤を広げる最後の表現
高層ビルから飛び降りる人のように
オールドたちが加わるたびに
大切なものがひらひらと舞って死ぬ
人生への憎しみも抜け落ちて枯れ木になればいい
ら行( 1 / 6 )
流行
立体の雲を浮かべ、空は夏を主張する
それでも夜には秋虫の声
季節は止まらない
時間の流れに乗って
数えきれない言葉が流行り
数えきれないものが廃れ
病気や障害も一つの個性と
弁舌滑らかに話す者すら現れ
自分が立場を変えれば5分と持たず
心身の健康を抱きしめる
雲も次第に痩せていき
風を冷たく感じる日も来るのだろう
その頃にも何かが流行り、何かが廃れる
ら行( 3 / 6 )
緑色の雨
夜空から緑色の雨が降る
傘にはじかれ、滴り落ちる雫は透明である
緑色の雨は、夏の花火の残像なのだろう
閑静な住宅街は、静かで寂れた街並みに変わった
萎れた空気を秋の音色が鳴いて励ます
僕は例年通り、苦悩の色に埋め尽くされている
未だに幸せの色を知らずにいる
早いもので、今年も4ヶ月を切った