:サンドリオン店内 -----
:バーテンと女性客がいる -----
女 「(酔っている)お代わり、くださる?」
バーテン 「今夜はもう、その辺にされては ... 」
女 「どうして? 私はまだ飲み足りないんだけど ...?」
バーテン 「でも、次でテン・カウントですよ ... バカルディのお代わりが」
女 「じゃ、今夜はどこまでカウント出来るか、挑戦してみるわ」
バーテン 「マリさん ... 」
マスター 「そのままだと ... 大切な喉、壊しますよ、マリさん」
女 「何だ ... マスター、居たんだ ... 」
マスター 「今日は少し寄り道をしてたものですから ... こんな時簡になってしまって」
女 「このパーテンさんがいて、マスターも少しは助かるね」
バーテン 「私はパーテンではなく、バーテンです」
女 「あら、そうだった? ごめんなさい」
マスター 「(少し笑って)マリさんったら ... 」
女 「とにかくお代わり頂戴よ、パーテンさん、早いとこね」
バーテン 「(小声で)まったく ... 困った人だな ... 」
女 「そういうセリフってさ、お客に言うようなことじゃないよね、普通」
バーテン 「あ ... 聞こえましたか?」
女 「あなたは本当に、パーテンね ... 」
バーテン 「お客さんがそういうこと言いますか、普通」
女 「フーン、口だけは、一人前なんだ ... 」
バーテン 「どういう意味なんでしょうか? それは」
マスター 「そろそろそれぐらいにして ... 」
バーテン 「でもマスター ... 」
マスター 「マリさんのカクテルは私が作りますから、あなたはあちらでグラスを磨いてくださる
かしら ... 」
バーテン 「 ... はい、承知しました ... 」
女 「がんばってね ... パーテンさん」
バーテン 「ごゆっくりどうぞ、オキャクサマ」
女 「それはどうも、アリガトウ ... 」
マスター 「バカルディでよろしかったでしょうか? マリさん」
女 「エエ、お願いします ... 」
マスター 「かしこまりました ... 」
:シェーカーにバカルディ・ホワイト・ラム(3/4)と
ライム・ジュース(1/4)、グレナディン・シロップ(1tsp)が
入れられ、シェークされる -----
女 「やっぱりマスターのシェーキングは、いい音がするわ ... 」
マスター 「お褒め頂いても、これが最後のオーダーですよ、マリさん」
女 「え ...? どうしてなの? マスター」
マスター 「この店では ... お客様にお出しするカクテル・カウントは、お一人様ナイン・
ハーフまでと、決まっておりますので ... 」
女 「? ... どうしてそうなるわけ?」
マスター 「ナイン・ハーフ以上、口にされるカクテルは ... それはもうカクテルでは
ありませんから ... 」
女 「それじゃ一体何なの ... ?」
マスター 「ただのアルコールです ... 」
女 「ただの、アルコール ... 」
マスター 「カクテルはその名前どおり、様々なスピリッツのハーモニーが奏でる、微妙な味わいを
楽しんで頂く飲み物です ...
ただ単に、酔うためだけに作られるものではありませんから ... 」
女 「マスター ... 」
マスター 「どうぞ ... 」
:マスター、女の前にグラスを置く -----
女 「そうね ... そうなんだ ... 」
マスター 「今夜のカナリアは ... 少しお行儀が悪いようですね ... 」
女 「マスター ... 」
マスター 「あまり無理はいけませんよ ... マリさん ... 」
女 「マスター ... 実は私 ... 」
:店のドアが開く -----
バーテン 「いらっしゃいませ」
マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」
男 「 ... 捜したよ、マリさん ... 」
女 「ミタさん ...?!」