シンデレラの止まり木 - bar cendrillon again -

canari ~ カナリア ~( 4 / 5 )

【 Scene - Ⅳ 】

Bar Cendrillon # opening .mp3



          :サンドリオンの店内 -----



女    「何となくだけど ... マスターの云ってたナイン・ハーフの意味がわかるような気が
      する ... 」

マスター 「マリさん ... 」

女    「カウント・テンまでいっちゃうと、ノック・アウトだもんね ... そこで全部終わり
      だもの ... 」

マスター 「本当にこれでいいんですか ...?」

女    「あ、そうだ、マスター。さっき言いかけて途中になっちゃったことだけど ... 」

マスター 「 ... エッ?」

女    「ほら、ミタさんが入ってくる前に ... 私、マスターに何か言おうとしてたじゃない」

マスター 「そういえば、確か ... 」

女    「それが私 ... 忘れちゃったのよ ... ごめんなさい」

マスター 「マリさん ... 」

女    「何言おうとしてたのか、思い出せないのよ ... 私、もう駄目ね ... 今夜は」

バーテン 「マスター、終わりました ... 」

マスター 「ありがとう ... 」

女    「ご苦労様、バーテンさん ... さっきはごめんなさいね ... 」

バーテン 「いいえ、とんでもありません ... 私こそ、失礼しました ... 」

女    「今度きた時は、可愛いカナリアでいるから ... 今夜のことは許してね」

バーテン 「かしこまりました ... その時をお待ちしております」

女    「それじゃ私、今夜はこれで帰ります、マスター ... おやすみなさい ... 」

バーテン 「ありがとうございました ... 」


          :女、店を出ようとする -----


マスター 「マリさん ... 」

女    「エッ?」

マスター 「さっきのお話の返事は ... 本当にあれでよかったんですか ...?」

女    「 ... エエ ... あれでいいのよ、あれで ... 」

マスター 「そうなんですか ... 」

女    「マスター ... 」

マスター 「 ... はい」

女    「他の人から見ればつまらない感傷でも ... その人にとっては大事なことかも
      知れないじゃない ... そう思わない? マスター ... 」

マスター 「 ... そうですね ... 確かにそうです」

女    「 ... そういうことよ ... それじゃ、おやすみなさい ... 」

マスター 「ありがとうございました ... おやすみなさい ... 」


          :女、店を出て行く -----

          :ドアの閉まる音 -----


バーテン 「少し変わったシンガーですね ... マリさんって人は ... 」

マスター 「どうしてそう?」

バーテン 「せっかくのチャンスだったのに ... 」

マスター 「それは ... 彼女がシンガーである前に、一人の女性だからでしょう ... 」

バーテン 「一人の、女性 ... 」

マスター 「ちょうど ... バカルディがバカルディ・ラムに拘ることで、ダイキリではない
       ことを主張したように ... 」

バーテン 「バカルディがバカルディであるための主張 ... 」

マスター 「彼女もまた ... 自分が女であることを主張したのよ ... 」


          :辺りに響く、ヒールの音にまぎれて -----


           :回想 -----


マリ   「今度あなたが私の目の前に現れるまで ... 私、歌を忘れるわ ...
      (少し笑って)そう ... 私は、歌を忘れたカナリアになるのよ ... 」

男    「お前 ... 」


女(Na)  あの日から ... 愛しい人のために歌うカナリアは、歌を忘れた -----
       あれからちょうど1年 ... 彼はまだ、帰って来ない -----



canari ~ カナリア ~( 5 / 5 )

【 Scene - final 】

Bar Cendrillon # opening .mp3





マスター  今宵も「バール サンドリオン」へお越しいただき、誠にありがとうございました...

      ではここで... 今回登場致しましたカクテルを、改めてご紹介させて頂きます...

      まず始めに、ホワイト・ラムをベースにした、カクテルの古典的名作と言われる
      「ダイキリ/Daiquiri」.....
      無数のレシピが存在し、それに関する議論も尽きることなく、歴史上の逸話も数多い
      カクテルとして有名です。

      そしてその「ダイキリ」のバリエーションカクテルして名高い「バカルディ/Bacard」
      「ダイキリ」と同じくホワイト・ラムをベースにしたカクテルでありながら
      バカルディ社のホワイト・ラムとグレナデン・シロップを使うことによって
      その存在が認められるカクテルで、その昔 ... ライト・ラム流行の波に乗り
      世界中でその人気を獲得したといわれております -----
      その味は限りなく「ダイキリ」でありながらも、グラスを赤く染めることで
      「バカルディ」と呼ばれる、拘りのカクテルなのです -----

      さてそのレシピは .....
      「ダイキリ」の場合、ホワイト・ラム(3/4)とライム・ジュース(1/4)
      砂糖(1tsp)をシェークすれば出来上がりです。

      また「バカルディ」の場合は、「ダイキリ」と同じ比率の内容でバカルディ社の
      ホワイト・ラムを使用し、砂糖の代わりにグレナデン・シロップ(1tsp)を
      入れてシェークすれば完成です ...

      いずれもアルコール度の強いカクテルでありながら、ミディアムな甘さの味わいを
      持ち、ラムを使ったカクテルの傑作と呼べるものです ...

      「ダイキリ」はあくまでも「ダイキリ」であり、その「ダイキリ」をバカルディ社の
      ラムと赤いグレナデン・シロップをしようすることによって「バカルディ」と呼ばせる
      このカクテルの拘りに、皆様は何を感じられますでしょうか ...?
      是非一度、この拘りを味わられてみてください .....
      

      それでは ...
      またのお越しを心よりお待ちしております .....

      ありがとうございました -----



Images Music - The Look Of Love 「 愛の外観 」 Diana Krall


ヒモト ハジメ
作家:マスターの知人
シンデレラの止まり木 - bar cendrillon again -
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