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病院の桜
いつもと同じ時間の
いつもの電車に乗り
いつものように立ったまま2駅
駅から少し歩き、僕は病院へ吸い込まれていく
18の時から目がアスファルトばかりを欲しがるようになった僕に、桜が上から呼びかけてくる
「早く見ないと、散っちゃうよ。今日が最後だよ」と
まだ桜は咲いていた
満開といってよかった
病院内は暗く沈んでいて
それでも、ぱっと電気はついたのだ
小さな子が手をいっぱいに広げて
ふわふわに膨らんだ空気を持ち運んで、母親にプレゼントする
その笑顔を見て、僕はいつものように缶コーヒーを飲みながら、少しだけ優しくなれた
帰り際、アスファルトはひらひらと淡く色づいていた
はっとして桜を見ると、変わらずに咲いていた
また来年、足元しか見ない僕には想像もつかない遥か未来
明日は花散らしの雨らしい
次にここに来る時はきっと葉桜
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独りよがりの幸せ
きっと今夜あたり
僕はベッドの上で
このまま眠って、眠って、眠り続け
二度と目覚めることなく、眠り続けたいと思うのだろう
そんな独りよがりの幸せを祈りながら
生きたいと願う僕の体のどこか、心のどこかと衝突して
その痛みで明日の朝
頬に涙が伝っているのだろう
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ふたつの結論
仮に天分を存分にいただいたとしても
平凡や普通の前には頭を下げるしかない
それがこれまで生きてきた僕の結論
時を重ねるごとに
平凡や普通の内に秘められた高貴や偉大の力に圧倒され
憧れは募るばかり
それに比べて、天分とか天性という危うさ、脆さ、弱さ
毒性すら帯びているという疑念が強くなる
時を重ねるごとに
それでも僕は才能を愛するという、もうひとつの結論を出す
いつかは枯渇する儚さ
ひと時の美にちがいない
ひと時の眩しさにちがいない
よく分かっているつもり
それでも僕は抱きしめていたい