さ行( 51 / 51 )
シテイル
ぼんやりとしたカミソリ雲が空を征服している
女子高生が今が盛りと制服している
ビールをがぶ飲みしたサラリーマンが豚腹している
体調悪そうなOLが密かに頓服している
聖人君子に出会った村人が敬服している
悪人が拘置所で刑服している
ぼんやりした雲が限りなく黒に近い灰色になって
光の矢を放ち、怒声を浴びせ、大量の水を叩き落した
女子高生サラリーマンOLも
村人聖人悪人も
役立たずの傘を両手で握りしめたり、軒下で雨宿りしたり、逃げまどったり
皆、似たような格好をしている
た行( 1 / 18 )
遠い日の友へ
生まれて何十年も経てば、人間ボロボロになるね
僕も君もそれはもう見事なまでに
遠い遠いあの日、僕らは夢を語り合ったね
どうやら僕も君も壮大な嘘をついてしまったようだ
この先、苦しいことや辛いことがあるのは分かっている
むしろ、残りの人生のほとんどをそれらに覆い尽くされるだろう
ただ、そのわずかな隙間にささやかな幸せの侵食を期待する
僕らには顔を赤らめる言葉ではあるけれど
それを願う心が枯渇したら、人生の敗北を認めたも同然だから
夕暮れの美しさはあの頃と変わらないのに
僕らは夢を語り合う権利を失った
その資格があるのは瞬間の若葉たちだけ
僕は傷を深めながら進む。色をなくした道を
そして、ひたすら願う。どこかで君の笑顔がひっそりと咲いているよう
た行( 3 / 18 )
時よ
ためらうこともなく
急ぎ足になることもなく
時は潔く刻み続ける
過去からやってきた少女は
長い旅路を経て、鏡の前にたどり着いた
まもなく、彼女は自らの顔を両手で覆い、涙を流した
時よ、あなたなんだよ
少女に無残な落書きを加えたのは
あなたは美を創り、それを壊し
善を創り、それを壊し
悪を創り、またそれを壊していく
しかしあなたは潔く刻み続ける
ためらうこともなく
急ぎ足になることもなく