:夜の街 -----
:ジッポウの音 -----
:男、タバコをゆっくりと一口 -----
:やがて携帯電話が鳴る -----
男 「はい ..... ああ、私だ... ----- やっぱりそうか ... ----- なるほど、今夜か.....
で、今どこに? ----- 北野のどの辺りだ? ----- わかった .....
それじゃ今からそっちに向かう ..... ----- ああ、そうだ。---- それじゃ ..... 」
:男、電話を切る -----
男 「..... サンドリオンか ..... 」
* * * *
:一人の女が、サンドリオンへ訪れる / ドアの開く音 -----
バーテン 「いらっしゃいませ ..... 」
マスター 「ようこそ ... いらっしゃいませ ... 」
女 「(店内を見回し) ... ここ、サンドリオンっていうお店ですよね?」
バーテン 「はい、そうですが ... 」
女 「(呟き)ということは ... まだね ... 」
バーテン 「何方か、お探しでしょうか ...?」
女 「いえ、そうじゃなくて ... 」
バーテン 「ああ ... それでしたらお待ち合わせですね ... 」
女 「ええ、まあ ... 」
マスター 「よろしければ、どうぞ ... 」
女 「ええ ... それじゃ、ここかまいません ...?」
マスター 「どうぞ ... 」
:女、カウンターの隅の席へ掛ける -----
バーテン 「... ご注文の方はいかがいたしましょう? ... 何かございましたら、お申し付け下さい」
女 「 ... そう ... じゃコルコバードを」
バーテン 「コルコバード ...?」
女 「もしかしてメニューには ...?」
バーテン 「いいえ ... そんなことはございません ... ただ、珍しいカクテルをご注文されたもの
ですから、つい ... 失礼いたしました 」
女 「いえ、気にしないで下さい ... こっちこそ変わった注文してしまって ... 」
バーテン 「それでは早速 ... しばらくお待ち下さい ... 」
:シェーカーにテキーラ、ブルー・キュラソー、ドランブイ(各30ml)が
入れられシェークされる -----
:やがてクラッシュド・アイスを入れたタンブラーに注がれ
レモネードで満たし、ライムのスライスが飾られる -----
マスター 「失礼ですが ... よくお口になさるんでしょうか? このコルコバードを」
女 「ええ ... 好きなカクテルなんです ... でも、よくメニューにないからって飲ませて
もらえない方が多いんですけどね ... 」
マスター 「このカクテルでしたら、それもありがちな事かもしれませんね ...
何しろ日本では、あまり馴染みのないカクテルですから ... 」
女 「そう云ってたな ... 確かに」
マスター 「エ ...?」
女 「いえ、何でも ... 」
バーテン 「お待たせいたしました ... どうぞ」
女 「どうも ... 」
バーテン 「それにしても、よくご存知ですね ... このカクテルを」
女 「ええ ... 私もちょっとしたきっかけから知ったんですけどね ... 」
バーテン 「コルコバード ... ブラジルのリオデジャネイロにある丘の名前でしたよね」
女 「そう ... そしてそのコルコバードの丘には、高さ30mにも及ぶ巨大なキリスト像が
建てられ、特に日没後は、ライトに照らされたその像が闇の中に白く浮かび上がり
独自の雰囲気を醸し出している ... 」
マスター 「そこまでご存知とは ... かなりお詳しいんですね ... 」
女 「いえ ... 単なる好奇心からですよ ... だってこのカクテルのネーミング、他には
ちょっとない感じだったから ... それに ... 」
バーテン 「 ... それに ...?」
女 「リオは私たちにとって ... 」
:ドアの開く音 -----