輝かんばかりの双眸を切り裂いて
現れる闇から目をそらすな
そこに剥き出しの真実がある
それの前に立ち
かぐわしい匂いに耳をすます
そのままに
天からうちよせる光をみよう
それはいつも
右の目に映っていた
耳をそばだてていろ
闇の中心から、
剥き出しの真実の核から、
現れる一艘の舟
私はここから漕ぎだそう
ただ一艘の舟で、漕ぎだそう
或いは、お前はその舟を鷲掴み
引きちぎるがいい
手にしたものは
お前の中にあった愛
私の見つけた一艘の舟
闇から、
真実の核から、
それが現れたとき
私はひるがえり、せかいを生きた
私とお前は互いの心臓に
互いの愛を埋め込んだ
どちらかの心臓が失われたとき
私たちはそれが
共に失われるものであるのかを知る
私とお前のどちらかだけが
それを知るだろう
彼は最期の瞬間、私がその心臓に埋め込んだ愛を、失いはしなかった。ただそこに、置いたのです。
才能、というものが、何の呼び名か問うたとしましょう、あの人は答える。それは愛する者から得た、愛の呼び名だ、と。
彼が置いていった才能は、いつか誰かに受け継がれ、新たな水脈となるでしょう。
その才能は、愛を持ってしか、使うことができないのです。
ぼくらは田舎の民宿で、さいごの夏を過ごした。
民宿は浜辺にあって、乾いたような、べたつくような風が、一日中吹いていた。
ぼくらは絶えずはしゃいだ。
帰る日がせまっていることを、みな忘れたがった。
この浜辺にふたたび来ることはない。
やわらかな砂も、広い海も、二度と触れることはない。
望まない帰還が胸をしめつけていたけれど、だれもそれを表には出さずに、せいいっぱい楽しんでいた。
夜の花火は、派手なものからはじまり、さいごの線香花火でしめくくられた。
線香花火の、ほとばしる光がしだいに弱まり、ぷつりと落ちたあとの余韻のまま、夜は深まっていった。
朝になれば、それぞれの帰還がはじまる。
布団に入っても、だれひとり眠っていない気配を感じながら、ぼくは暗闇のなか、ずっと目をあけていた。