ぼくらは田舎の民宿で、さいごの夏を過ごした。
民宿は浜辺にあって、乾いたような、べたつくような風が、一日中吹いていた。
ぼくらは絶えずはしゃいだ。
帰る日がせまっていることを、みな忘れたがった。
この浜辺にふたたび来ることはない。
やわらかな砂も、広い海も、二度と触れることはない。
望まない帰還が胸をしめつけていたけれど、だれもそれを表には出さずに、せいいっぱい楽しんでいた。
夜の花火は、派手なものからはじまり、さいごの線香花火でしめくくられた。
線香花火の、ほとばしる光がしだいに弱まり、ぷつりと落ちたあとの余韻のまま、夜は深まっていった。
朝になれば、それぞれの帰還がはじまる。
布団に入っても、だれひとり眠っていない気配を感じながら、ぼくは暗闇のなか、ずっと目をあけていた。