青闇夜藍色-こばなし-

遠音( 1 / 1 )



かみほとけ。

かみほとけ。


わたくしのまじないことば。
稚児の頃から気がつけば、口にしていたのだそう。


かみほとけ

かみほとけ

かみもほとけもいつになく。


民らは皆、わたくしのまじないに耳を塞ぎ、目をつぶるけれど、口も閉じているようでした。



かみさま。


かみさまのおわすところ、風、無く。

かみさまのおわすところ、音、無く。

それはどうして?とおばあさまにききましたら、
おばあさま曰く。

「時、無い処にありますれば。
 時、無し処、なにもありますまい。」

なれば、かみさまはそこにおわっしゃらないの?

そうきくと、おばあさまはおわらいになって、

「われわれのようには、おわっしゃりますまい。
 とおんのはじめから。」


とおんのはじめに風は無く

とおんのはじめに音は無し

かみほとけ

かみほとけ

かみもほとけもどこになく。


まじないことばを口にするとき、どうしてでしょう、
わたくしは天をみる。

かみさまは、そこにおわっしゃって?





青黎
青闇夜藍色-こばなし-
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