江戸川日記

日常3( 2 / 8 )

「いや違いますよ!本当に捨てられてたんですって。これ、この色見て下さいよ。揚げ過ぎたってことじゃないですかね」

 

「あらら、本当だな。こりゃちょっと揚げ過ぎてるけど、これで捨てられたら、鳥もたまったもんじゃないよな。考えてみな、お前が殺されて、唐揚げ粉をまぶされて、油で揚げられたのに、ゴミ箱へポイッ・・・酷いもんだぜ」

 

「ちょっと変な例えは止めて下さいよ!」



 

日常3( 3 / 8 )

「じゃああれだな、お前が昔、ファミコンの高橋名人とかいう奴にそっくりで、子供たちにサインを頼まれて、なりきってサインを書いたけど、緊張して「高橋です」って書いちゃったみたいなもんだな」



「関係ないじゃないですか!」

 

日常3( 4 / 8 )

「まあ、コイツらも、ついこの間まで精一杯生きてたんだ。捨てられる為に殺されたんじゃ可愛そうだよな。だから俺たちがありがたく頂こうじゃないか」

「ういっす」

「兄ちゃんも食ってくよな?」

「はい」

日常3( 5 / 8 )

昔、角田忠信という人が書いた「右脳と左脳」という本で、「日本語(母音語)」を話す人たちは、虫たちの鳴き声や、自然界の音を人間の声と同じように聞いていると知った。日本人は自然や動物たちと共に生きて来たのだ。昔の日本人たちは、人間と、自然や動物たちの間に境界を作っていなかった。それに対して、いまの日本人たちは・・・僕は捨てられていたフライドチキンを見てそう思った。

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江戸川日記
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