僕は敗北した( 1 / 10 )
二浪して入学した大学に5年間も在籍している僕は、ある日何となく錦糸町の場外馬券売り場へ行き、拾った新聞を見て、タップダンスシチーという馬に全財産を賭けた。
僕は敗北した( 3 / 10 )
この馬が逃げ切ったら僕の人生は変わる!そう必死に思い込んだ。レースが始まった。死ぬほど興奮した。あの馬は僕だ!僕の代わりに逃げているのだ!
「逃げろー!タップ!」
僕は知らないうちに叫んでいた。
僕は敗北した( 4 / 10 )
結局、タップダンスシチーは負けた。4コーナーを回って馬群に沈んでいくタップダンスシチーの姿を見た僕は全身から血の気が引いていくのを感じながら、とにかくその場から直ぐに姿を消そうと人ごみを掻き分けて歩いた。その後のことはまったく覚えていない。気が付いた時、僕は江戸川の河川敷に倒れていた。