よく見えている。
血は、たくさん出ていたが、傷は、それほど深くはない。
たぶん、あいつは助かる。
「あー!あー!あー!」
「ばぁっ!ばばっ!ばぁー!!」
血塗れになって運ばれていく男の姿を見て、他の患者たちが暴れ始めた。
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「ありがとうございました」
俺は、いつものように診察室を出ると、パックのフルーツジュースを買って、病棟の外に出た。
般若の夢を、よく見る話はしなかった。
心地いい風が吹いている。
小高い丘の上から見下ろす街並み
なんて、キレイなんだろう。
でも・・・・・
俺の認識している世界の外側には、もっと悲惨な俺がいて、その世界の中の俺は、いまの俺よりも、遥かに絶望的で、他人の目から見ると、ただのキ○ガイでしかない。
街の中に戻ってくると、そんなことを感じる。
俺が、明日から居なくなれば・・・
いまは、感情を捨てよう。
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