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「小川君、居酒屋の仕事辞めちゃったの?」
床屋のおやじが話しかけてくる。
「あっ・・・はい」
そう言えば、居酒屋で働いていたことがあった。
「(何年前だ?)」
いろいろな記憶が甦ってくるが、そんなことはどうでもいい。
「奇抜な道」に進むしかない。
現実を知れば知るほど、俺には「奇抜な道」しかないという気持ちになる。
「あの時」と同じ道
だけど・・・それしかない。
ハリネズミのような髪を、白と、黒に染めている男が歩いている。
真夏なのに皮ジャン、マスクに、マフラー
右手に、紫の電動こけしを持っている。
俺の狂いは、まだまだ足りない。
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