兆候( 5 / 8 )
七月十二日 曇り
いよいよ堤防が決壊する時がやって来たのだろうか?長年連れ添った相棒だけあって、酒で誤魔化そうとしても身体は正直だ。残された時間を何に使おうか?
兆候( 6 / 8 )
「人の一生なんて打ち上げ花火のようなもんだろうな。いままで何十万発もの花火を見てきたけど、毎年、夏になるとそう思うよ。花火が打ち上がり続けている間の高揚感と、終わった後の何とも言えない感じ。子供の頃は命を感じてたんだけど、最近は死を感じちゃう。俺も年を取り過ぎたからかもしれないけど、一発、一発の花火が亡くなった人たちに見えちゃうんだよね。人は死ぬ瞬間に、人生を走馬灯のように思い出す、なんて言うけど、俺はいまゆっくりと人生を思い出しているのかな・・・」
兆候( 7 / 8 )
夜を彩る打ち上げ花火。人は一瞬の中に、永遠と無常の夢を見る。
兆候( 8 / 8 )
八月十七日 雨
もう直ぐ、そちらへ行くのでよろしくお願いします、という挨拶を兼ねて、今日は墓参りに行って来た。冥土の土産は何がいいだろうか?