サンタクロースパイ

42.窓際族はカッコ良い!?

数十分後・・・



「窓河君、ノド、乾いたでしょ?」

「う、うん・・・」



彼女は、

コップに水道水を入れて飲ませてくれた。



「はい」

「ありがとう」



〝ジュー〟



コレがまた、ただの水道水なのに、とても、

そうとは思えないほど、かなり美味しい。



「ア、アレ?コレ、悪いけど、ただの水道水だよな?」

「そうだけど・・・」

「何でこんなに美味いんだろ?この前、君が会社で夜遅くにくれた水と同じくらい美味い。何でだろ?」

「う~ん・・・疲れてて、凄く苦しいぐらいにノドが渇いてたからじゃない?でも、良く分かんないけど、この前の水も、今飲んでる

その水も、窓河君にとって物凄く美味しいなら、何でもないただの水道水でも、窓河君にとっては凄く高価なモノなんだと思う」

「そうか~・・・」



「窓際族・・・か」

「うん?」

「あ、いや~、さっき言ってた〝窓際族〟って、窓河君は、嫌ってる言葉だけど、私は、

「ワケあって周りの人達から受け入れられなくて孤立してるけど、

〝渋い孤独のヒーロー〟みたいでカッコ良いと思うんだけどな~」

「そうか。君は、とても前向きで真っ直ぐなんだね!!」

「そんな事ないよ!!(笑)」この時、

窓河は、「この娘はなんて純粋な娘なんだ・・・・・・!!」と

思った。そして、彼女は言った。

43.喫茶店でお茶会

「そうだ!!私のおじいちゃんとおばあちゃんさ、小さいけど、

喫茶店持ってるの!!

最近は、身体が言う事を聞かないせいで

やってないんだけど。窓河君も、コーヒー淹れるの上手だから、

今度来てよ!!そこで、この前みたいに、

皆で一緒にお茶しようよ!!パーティみたいに!!」

「急に良くそんな事考えるな・・・(笑)」

「良いじゃん!!この前、窓河君が来た時、家族全員、

凄く喜んでたし、〝また気軽に来て欲しい〟って言ってたわよ。

それに、窓河君、いつも一生懸命頑張ってて疲れてて、

大変そうだもん。気分転換も大事だよ!!」

「そうだったんだ!!ありがとう!!」



数日後、彼女の言った通り、そうやって皆で集まって、

パーティのようにお茶会をした。



〝ワイワイガヤガヤ〟



「ねぇ窓河君、このお菓子作るの手伝って~!!」

「は~い」

「はいコレ」

「ウッス」

「はい」



窓河は、見事な手さばきで、綺麗にお菓子作りをこなしていく。



「凄~い!!カッコ良い~っ!!窓河君、

コーヒー淹れるのが上手いのはこの前から

知ってたけど、お菓子を作るのも、凄く上手なんだね!!」



窓河は少し照れて・・・



「そ、そうかな・・・?」

「うん!!!」

「経験あるの?」

「まぁね。昔、俺のばあちゃんが、お菓子作るのが好きで、

良く手伝ってた。料理もだけど」

「へ~!良いね~!!」



その日、その喫茶店は、家族ぐるみで

凄く賑わった・・・・・・



彼女の祖父は、窓河と共同作業をしている

彼女を見て・・・・・・



「大きくなったな。昔はあんなに世話の焼ける子だったのに・・・・・・」

祖母は、「そうね~。とっても優しくて思いやりのある、良い子に育ったわ。もう子じゃなくて大人だけど(笑)」

祖父は、「全くだよ」と言った。



〝ワイワイガヤガヤ〟



その日、凄く盛り上がり、凄く賑わった。

それから、たまに、その日したようなお茶会と同じようなパーティを何度も何度もした。

だが、その後、彼女は「これからは、身体が言う事を聞かない祖父母を含め、家族を大切にしていきたい」という理由で退職した。

44.ハメられた!!!

それから5年後の1984年。彼女の祖父は、

病気で死んでしまった。胃ガンだった。

祖母はまだ生きているが、〝うつ病〟にかかっており、もうかなり進行していて、もう、他人とまともに話す事すら出来ない。

どちらの病気の事も、彼女は知っていた。



「病気だったのか」

「うん」

「でも、おじいちゃんは、最後まで頑張って生きた。それに、

窓河君の事、凄く気に入ってたわよ!!私に〝あんな良い友達が

いたのか!!〟って。おばあちゃんもだけど」

「そうなんだ」

「あと、前に、何度もウチでお茶会したけど、

窓河君は、いつも、お菓子作るの手伝ってくれて、どれも、

あまりにも美味しかったから、

〝いつか自分が死んだら、もし良ければ、窓河君にあの喫茶店を

営んでくれたら良いな〟って言ってた」

「え!?そんな!?俺に!?いやいや!!

出来ないよ!!そんなの!!」

「そうかな?私は、素質あると思うんだけどな~。でも、窓河君、今、会社の仕事もあるから、夜だけ開店するお店とか?それか、

休日だけ開けるとか?」

「いや、良いよ。遠慮しとく」



窓河は、それからさらに1年後の1985年。

窓河は、ある日、窓河を嫌う上司の策略に

ハメられ、「Wind’s Delivery」を辞めさせられる事に

なってしまった・・・窓河は、絶望した。ただただ、絶望した。



「そ、そんな・・・、やっと、この仕事に

ようやく慣れてきたっていうのに」

イヤミな上司は、ほくそ笑みながら

「悪いな。じゃあ、今までお疲れ様でした」と、

窓河に皮肉を言った。

45.彼女の祖母の様子が!?

その後、また、

彼女の家へ向かった。相談するために。



そして、ドアを開けようとすると・・・



〝ドンッ!!〟



彼女が突然出てきて、窓河は、ビックリする間もなく、

顔を思いっきり打って、同時に鼻血を出した。



〝バン〟



「痛って~!!!」

「あ~!!ごめん!!来てくれたの!?でも、ごめん!!私、

今から、おばあちゃんのいる病院へ行くの!!!」

「え!?」

突然過ぎて、窓河は焦った。

「どういう事だよ」

「話は後!!!」彼女は、道路でタクシーに向かって手を上げ、

「すいませ~ん!!!」と言う。



そのタクシーに乗って、

タクシーの中で話を聞いた。祖母の様子が

おかしいというらしい。病院に着いて、様子を見てみると、本棚に置いてあるお菓子のレシピの、写真が映っているページを破り、それを食べている。



「おばあちゃん!!」そう言って、

祖母のその異食を止めたが、祖母はまだ、

「ケーキ・・・ケーキ・・・」、あるいは、

「プリン・・・プリン・・・」、あるいは、

「クッキー・・・クッキー・・・」と言っている。コレらは、

全て、窓河があの喫茶店のお茶会で作ったモノだ。



窓河は、

「アレ?何かおかしいぞ!!コレは!?」と

言った。



「え!?」

「いや、コレ、全部、俺があの喫茶店で作ったヤツだろ!?」

「あ~!確かに、そう言われてみれば!?じゃあ、私、ちょっと、急いでコンビニで買って来るわね!!」



そう言って、彼女は、

ケーキやプリンやクッキーを買って、祖母に食べさせるが、

あまり美味しそうにしない。



次の日、窓河と彼女は、あの喫茶店で、

久しぶりに色んなお菓子を作った。もちろん、

ケーキもプリンもクッキーも。



それを、

病院へ持って行って食べさせると、

彼女の祖母は嬉しそうに笑い、少しだけ元気を取り戻した。



二人は揃って、「良かった~」と言った。

「あのさ」と窓河が言い、彼女が「ん?」と言った。

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