サンタクロースパイ

43.喫茶店でお茶会

「そうだ!!私のおじいちゃんとおばあちゃんさ、小さいけど、

喫茶店持ってるの!!

最近は、身体が言う事を聞かないせいで

やってないんだけど。窓河君も、コーヒー淹れるの上手だから、

今度来てよ!!そこで、この前みたいに、

皆で一緒にお茶しようよ!!パーティみたいに!!」

「急に良くそんな事考えるな・・・(笑)」

「良いじゃん!!この前、窓河君が来た時、家族全員、

凄く喜んでたし、〝また気軽に来て欲しい〟って言ってたわよ。

それに、窓河君、いつも一生懸命頑張ってて疲れてて、

大変そうだもん。気分転換も大事だよ!!」

「そうだったんだ!!ありがとう!!」



数日後、彼女の言った通り、そうやって皆で集まって、

パーティのようにお茶会をした。



〝ワイワイガヤガヤ〟



「ねぇ窓河君、このお菓子作るの手伝って~!!」

「は~い」

「はいコレ」

「ウッス」

「はい」



窓河は、見事な手さばきで、綺麗にお菓子作りをこなしていく。



「凄~い!!カッコ良い~っ!!窓河君、

コーヒー淹れるのが上手いのはこの前から

知ってたけど、お菓子を作るのも、凄く上手なんだね!!」



窓河は少し照れて・・・



「そ、そうかな・・・?」

「うん!!!」

「経験あるの?」

「まぁね。昔、俺のばあちゃんが、お菓子作るのが好きで、

良く手伝ってた。料理もだけど」

「へ~!良いね~!!」



その日、その喫茶店は、家族ぐるみで

凄く賑わった・・・・・・



彼女の祖父は、窓河と共同作業をしている

彼女を見て・・・・・・



「大きくなったな。昔はあんなに世話の焼ける子だったのに・・・・・・」

祖母は、「そうね~。とっても優しくて思いやりのある、良い子に育ったわ。もう子じゃなくて大人だけど(笑)」

祖父は、「全くだよ」と言った。



〝ワイワイガヤガヤ〟



その日、凄く盛り上がり、凄く賑わった。

それから、たまに、その日したようなお茶会と同じようなパーティを何度も何度もした。

だが、その後、彼女は「これからは、身体が言う事を聞かない祖父母を含め、家族を大切にしていきたい」という理由で退職した。

44.ハメられた!!!

それから5年後の1984年。彼女の祖父は、

病気で死んでしまった。胃ガンだった。

祖母はまだ生きているが、〝うつ病〟にかかっており、もうかなり進行していて、もう、他人とまともに話す事すら出来ない。

どちらの病気の事も、彼女は知っていた。



「病気だったのか」

「うん」

「でも、おじいちゃんは、最後まで頑張って生きた。それに、

窓河君の事、凄く気に入ってたわよ!!私に〝あんな良い友達が

いたのか!!〟って。おばあちゃんもだけど」

「そうなんだ」

「あと、前に、何度もウチでお茶会したけど、

窓河君は、いつも、お菓子作るの手伝ってくれて、どれも、

あまりにも美味しかったから、

〝いつか自分が死んだら、もし良ければ、窓河君にあの喫茶店を

営んでくれたら良いな〟って言ってた」

「え!?そんな!?俺に!?いやいや!!

出来ないよ!!そんなの!!」

「そうかな?私は、素質あると思うんだけどな~。でも、窓河君、今、会社の仕事もあるから、夜だけ開店するお店とか?それか、

休日だけ開けるとか?」

「いや、良いよ。遠慮しとく」



窓河は、それからさらに1年後の1985年。

窓河は、ある日、窓河を嫌う上司の策略に

ハメられ、「Wind’s Delivery」を辞めさせられる事に

なってしまった・・・窓河は、絶望した。ただただ、絶望した。



「そ、そんな・・・、やっと、この仕事に

ようやく慣れてきたっていうのに」

イヤミな上司は、ほくそ笑みながら

「悪いな。じゃあ、今までお疲れ様でした」と、

窓河に皮肉を言った。

45.彼女の祖母の様子が!?

その後、また、

彼女の家へ向かった。相談するために。



そして、ドアを開けようとすると・・・



〝ドンッ!!〟



彼女が突然出てきて、窓河は、ビックリする間もなく、

顔を思いっきり打って、同時に鼻血を出した。



〝バン〟



「痛って~!!!」

「あ~!!ごめん!!来てくれたの!?でも、ごめん!!私、

今から、おばあちゃんのいる病院へ行くの!!!」

「え!?」

突然過ぎて、窓河は焦った。

「どういう事だよ」

「話は後!!!」彼女は、道路でタクシーに向かって手を上げ、

「すいませ~ん!!!」と言う。



そのタクシーに乗って、

タクシーの中で話を聞いた。祖母の様子が

おかしいというらしい。病院に着いて、様子を見てみると、本棚に置いてあるお菓子のレシピの、写真が映っているページを破り、それを食べている。



「おばあちゃん!!」そう言って、

祖母のその異食を止めたが、祖母はまだ、

「ケーキ・・・ケーキ・・・」、あるいは、

「プリン・・・プリン・・・」、あるいは、

「クッキー・・・クッキー・・・」と言っている。コレらは、

全て、窓河があの喫茶店のお茶会で作ったモノだ。



窓河は、

「アレ?何かおかしいぞ!!コレは!?」と

言った。



「え!?」

「いや、コレ、全部、俺があの喫茶店で作ったヤツだろ!?」

「あ~!確かに、そう言われてみれば!?じゃあ、私、ちょっと、急いでコンビニで買って来るわね!!」



そう言って、彼女は、

ケーキやプリンやクッキーを買って、祖母に食べさせるが、

あまり美味しそうにしない。



次の日、窓河と彼女は、あの喫茶店で、

久しぶりに色んなお菓子を作った。もちろん、

ケーキもプリンもクッキーも。



それを、

病院へ持って行って食べさせると、

彼女の祖母は嬉しそうに笑い、少しだけ元気を取り戻した。



二人は揃って、「良かった~」と言った。

「あのさ」と窓河が言い、彼女が「ん?」と言った。

46.ある決意をした窓河

「俺、色々考えた。やっぱり、あの喫茶店、

もらっても良いかな?」

「え!?どうしたの!?前に話した時と言ってる事が真逆じゃない!?」

「いや、実は、昨日、言いそびれたんだけど、

俺、会社、クビになっちまったんだ」

「え!?何で!?」

「ハメられちまったんだ。俺の事を嫌ってるヤツが勝手にお客さんに届ける品を入れてる箱の中に一緒にクモを入れて、それを

〝コイツがやりました〟って言われてさ」



「大変じゃない!?窓河君だけじゃなくて、お客さんも凄く困ったでしょ!?ちゃんともう1回、話した方が良いんじゃない!?」

「いや、皆、誰も、俺の事を信じてくれないんだ。

いくら話したってムダだろ」

「そんな・・・・・・」



「でも、これで良い。俺、前から思ってたけど、あの会社で

働いてても、幸せにはなれなさそうだから。それに、

今だって、コンビニのお菓子で全く笑いさえしなかった

おばあちゃんがとても喜んでくれたろ!?今、それが

かなり嬉しかったんだよ!!!」

「そう?分かった。じゃあ、祖父の遺言通り、あのお店、

窓河君に譲るわ」

「うん!本当にありがとうね!!」


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