そして、正義は再び寝て、
朝、起きた。ラッピングされた箱を開けると、中には本当に〝グロリアスライダー〟の変身セットが入っていた。
「わぁ!!スッゲ~!!!寝る前にあの兄ちゃんに会ったのは、
夢じゃなかったんだ!!!」と、とても驚いた。
「ねぇねぇ!!母さ~~~ん!!!昨日、サンタさんが
プレゼントくれたよ!!!」と正義が言い、正義の母は、
買った覚えさえない、その変身セットを見て、とても驚いた。
「まぁ!!なんて不思議な!!こんなの買ってないはずなのに!!!」
そう、正義は、母親に、〝グロリアスライダー〟の
変身セットが欲しい事は言っていたのだが、母親は、
「ウチの子が他の子達と遊ぶ時に他の子達に変身セットを
着ている姿を見られたりでもしたら自分が恥ずかしい」という
理由で買ってあげられなかったのだ。
母親は、
(この子がコレを着ている姿をもし、この子の友達に
見られたりしたらどうしよう?でもまぁ、もう、そんな事、
どうだって良いか!!!)と思った。
また、時間は遡る。23軒目での出来事。霧河は、
「マフラーが欲しい」と言っていた女の子の家に入った。
(〝マフラーが欲しい〟って言ってたけど、どんなのが好きなんだろ?)
とりあえず、そこは勘で選んだ。
女の子の部屋に入り、枕元にそっとマフラーが入った箱を置く。
その時、霧河のスマホにメールが届き、着信音が響いた。
「何だよ!こんな時間に!!」
そういえばだが、さっき、スマホをいじって、間違えて、
着信音が鳴るように設定してしまった。スマホを見てみると、
送られてきたのは、迷惑メールだった。
(何だ~。迷惑メールか~。着信音量はもう一度ゼロにしとこう)
「う、う~ん・・・」
音を立てたせいで女の子が起きてしまった。
「あっ!いっけね!!」
慌てて壁にぶつかった霧河は、誤って蛍光灯のスイッチを
押してしまった。
「ワ~ッ!!」と女の子が叫ぶ。
そこでまた
霧河が女の子の口を霧河自身の手で抑え、
「シ~ッ!!」と言う。
もう、本日3度目だ。
(毎度、子供が叫ぶ度にこれだから、ホント焦るな~)
「ねぇお兄さん、一体誰なの?」
「俺は〝サンタクロースパイ〟さ!!」
「へ~」
今回は、いつも言われる言葉がない。
「ねぇ、ひょっとして君、〝スパイ〟って
言葉を聞いた事がある?」
「知らな~い」
霧河はここでまたズッコケた。
「知らねぇのか~!!」と思わず大声を出してしまった。
今度は女の子が「シ~ッ!!」と言う。
「あ~!悪りぃ!!悪りぃ!!」
で、会話をした。
「お兄ちゃん、サンタさんなんだね!!
サンタさんって、若い人もいるんだ!!!」
「ま、まぁね!!」
「でも、サンタさんって、赤い服を着てるんじゃなかったっけ?」
「あ~、まぁ、本来ならそうだね。でも、まぁ、〝サンタクロースは赤い服を着なきゃいけない〟って決まりはないからね」
「そっか~」
「うん。そうだよ。でも、黒いサンタクロースも悪くないでしょ?!」
「まぁね!!カッコ良いと思うよ!!!」
「ありがとう!!!」
霧河は嬉しそうに笑いながら言った。
「ところで君、マフラーが欲しいんじゃなかったっけ?」
「え!?何で知ってるの!?」
「あ~、ごめん!!言い忘れたけど、俺、たくさんの子に
プレゼントを渡すために、どこのどの子が何を欲しがってるのか、
盗み聞きしてるんだよ。ごめんな」
「そうなんだ~!!」
霧河は、
(この子、怒らないんだな)と思った。
「君は、マフラーを持ってないんだね」
「前まで使ってたのは、もうボロボロになっちゃったの」
「そっか。じゃあ、もう、捨てちゃったんだね」
「いや。まだあるよ」
「え?何で?もう使えないのに」
「だって可愛いし、おばあちゃんがくれた大切なモノだから」
「なるほどな・・・」
「いつまでだって手離さないよ」
そこに、そのボロボロのマフラーはないが、女の子の話から、
どれだけ大切なモノかが良く伝わってきた。
(良い話じゃないか)と霧河は思った。
(く~っ!泣けるぜ~!!良い話だな~!!)と。
「ところでお兄ちゃん、カギはどうやって開けたの?」
霧河は、持っていた金属の棒を取り出し、
「コイツを使って開けたんだよ」と言った。
「そうなんだ~」
「うん。でも、絶対真似しちゃいけないよ。俺の事も、お父さん
お母さん含めて、他の人達には一切秘密だからね!!」
「分かった!!」
「ありがとう!!じゃあ、また君の家に来るから、楽しみに
しててね!!!」
「うん!!!」