「なぁ」
「何?」
「こんな俺の事を〝ヒーロー〟って言ってくれてありがとう!!!」
「うん!!これからも、たくさんの人達に夢や希望をあげてくれよな!!!」
「分かった!!ありがとう!!!ところで、君の名前はなんて言うんだい?」
「〝夢路正義 (ゆめじまさよし)〟!!!」
「そっか!!カッコ良いじゃん!!その名前!!!」
「ありがと!!兄ちゃんは?」
「俺は〝
また本名を名乗った。サンタクロースでいる時は、基本、この名前を使っている。
「へ~!!兄ちゃんの名前もカッケー!!!」
「ありがとう!!!じゃあ、頑張れよ!!!」
「うん!!兄ちゃんこそ!!!」
そうして、霧河は、その家を出た。しかし、
今回は、その子の欲しいモノを盗み聞きで知った事までは言っていなかった。
「そういや、兄ちゃんに俺の欲しいモノが何かなんて言ったっけ?言ってねぇよな。この中にはちゃんと俺の欲しいモン、
入ってんのかな?まぁ良いや、寝よう。そんで、明日の朝、
確かめりゃ良いや。いつもそうしてるし。けど、サンタさんって
ずっと、赤い服を着てると思ってた」
そして、正義は再び寝て、
朝、起きた。ラッピングされた箱を開けると、中には本当に〝グロリアスライダー〟の変身セットが入っていた。
「わぁ!!スッゲ~!!!寝る前にあの兄ちゃんに会ったのは、
夢じゃなかったんだ!!!」と、とても驚いた。
「ねぇねぇ!!母さ~~~ん!!!昨日、サンタさんが
プレゼントくれたよ!!!」と正義が言い、正義の母は、
買った覚えさえない、その変身セットを見て、とても驚いた。
「まぁ!!なんて不思議な!!こんなの買ってないはずなのに!!!」
そう、正義は、母親に、〝グロリアスライダー〟の
変身セットが欲しい事は言っていたのだが、母親は、
「ウチの子が他の子達と遊ぶ時に他の子達に変身セットを
着ている姿を見られたりでもしたら自分が恥ずかしい」という
理由で買ってあげられなかったのだ。
母親は、
(この子がコレを着ている姿をもし、この子の友達に
見られたりしたらどうしよう?でもまぁ、もう、そんな事、
どうだって良いか!!!)と思った。
また、時間は遡る。23軒目での出来事。霧河は、
「マフラーが欲しい」と言っていた女の子の家に入った。
(〝マフラーが欲しい〟って言ってたけど、どんなのが好きなんだろ?)
とりあえず、そこは勘で選んだ。
女の子の部屋に入り、枕元にそっとマフラーが入った箱を置く。
その時、霧河のスマホにメールが届き、着信音が響いた。
「何だよ!こんな時間に!!」
そういえばだが、さっき、スマホをいじって、間違えて、
着信音が鳴るように設定してしまった。スマホを見てみると、
送られてきたのは、迷惑メールだった。
(何だ~。迷惑メールか~。着信音量はもう一度ゼロにしとこう)
「う、う~ん・・・」
音を立てたせいで女の子が起きてしまった。
「あっ!いっけね!!」
慌てて壁にぶつかった霧河は、誤って蛍光灯のスイッチを
押してしまった。
「ワ~ッ!!」と女の子が叫ぶ。
そこでまた
霧河が女の子の口を霧河自身の手で抑え、
「シ~ッ!!」と言う。
もう、本日3度目だ。
(毎度、子供が叫ぶ度にこれだから、ホント焦るな~)
「ねぇお兄さん、一体誰なの?」
「俺は〝サンタクロースパイ〟さ!!」
「へ~」
今回は、いつも言われる言葉がない。
「ねぇ、ひょっとして君、〝スパイ〟って
言葉を聞いた事がある?」
「知らな~い」
霧河はここでまたズッコケた。
「知らねぇのか~!!」と思わず大声を出してしまった。
今度は女の子が「シ~ッ!!」と言う。
「あ~!悪りぃ!!悪りぃ!!」
で、会話をした。
「お兄ちゃん、サンタさんなんだね!!
サンタさんって、若い人もいるんだ!!!」
「ま、まぁね!!」
「でも、サンタさんって、赤い服を着てるんじゃなかったっけ?」
「あ~、まぁ、本来ならそうだね。でも、まぁ、〝サンタクロースは赤い服を着なきゃいけない〟って決まりはないからね」
「そっか~」
「うん。そうだよ。でも、黒いサンタクロースも悪くないでしょ?!」
「まぁね!!カッコ良いと思うよ!!!」
「ありがとう!!!」
霧河は嬉しそうに笑いながら言った。