サンタクロースパイ

22.忘れていた想い

そうして2人は〝グロリアスライダー〟の魅力を語り合った。



すると霧河が

「俺も昔は、あんなたくさんの人を助けて、

たくさんの人から愛されるカッケー男になりたかったんだけどな~・・・」と言った。



「え?何言ってんの?もうなってんじゃん」

「え?いやいや、冗談はやめてくれよ(笑)。

俺はあんな強くないし、あんなに大勢の人を助けたりなんかも

出来ないよ」

「いや!兄ちゃんはもう、たくさんの人を助けてる!!だって、

ちゃんと、俺にもクリスマスプレゼントくれたし、いつも俺だけ

じゃなくて、他の人達にもプレゼントをあげてるんだろ?!」

「ま、まぁ、そうだけど・・・でも、こんなの、俺が自己満足で

やってるだけだし、本当はやっちゃいけない事だしね」

「いいや!兄ちゃんは、〝サンタクロース〟っていうヒーロー

だよ!!!たくさんの人達に、プレゼントだけじゃなくて、夢や

希望まであげてんじゃん!!!超カッケ―ヒーローじゃん!!!」

「・・・・・・!!!」



霧河は感動し、両親の事を思い出した。

(そうだ。俺がまだサンタさんを信じてた頃も、俺にとって

サンタさんは、自分の寝てる間に姿を見せずにプレゼントをくれるヒーローのようなカッコ良い存在だった。

でも、死んだ後だったけど、いつも、

プレゼントをくれてたのが実は父さんと母さんだって

知ってからは、父さんと母さんが俺にとってのヒーローに

なったんだ。こんな大切な事、すっかり忘れてしまうなんて、

俺は・・・・・・)



その時抱いた感情が蘇り、霧河は泣いた。



「に、兄ちゃん・・・どうしたの?突然泣いて・・・」



それに対し、

「あ、いや、〝グロリアスライダー〟がカッコ良過ぎて、

思い出したら涙が出てきたんだよ」と嘘をついた。



「何だよそれ(笑)。でも、感動シーンもいっぱいあるよな!!!」

「うん!!!」

23.男の子の名前

「なぁ」

「何?」

「こんな俺の事を〝ヒーロー〟って言ってくれてありがとう!!!」

「うん!!これからも、たくさんの人達に夢や希望をあげてくれよな!!!」

「分かった!!ありがとう!!!ところで、君の名前はなんて言うんだい?」

「〝夢路正義 (ゆめじまさよし)〟!!!」

「そっか!!カッコ良いじゃん!!その名前!!!」

「ありがと!!兄ちゃんは?」

「俺は〝網田謎留あみだなぞる〟」



また本名を名乗った。サンタクロースでいる時は、基本、この名前を使っている。



「へ~!!兄ちゃんの名前もカッケー!!!」

「ありがとう!!!じゃあ、頑張れよ!!!」

「うん!!兄ちゃんこそ!!!」



そうして、霧河は、その家を出た。しかし、

今回は、その子の欲しいモノを盗み聞きで知った事までは言っていなかった。



「そういや、兄ちゃんに俺の欲しいモノが何かなんて言ったっけ?言ってねぇよな。この中にはちゃんと俺の欲しいモン、

入ってんのかな?まぁ良いや、寝よう。そんで、明日の朝、

確かめりゃ良いや。いつもそうしてるし。けど、サンタさんって

ずっと、赤い服を着てると思ってた」

24.心変わりした正義の母

そして、正義は再び寝て、

朝、起きた。ラッピングされた箱を開けると、中には本当に〝グロリアスライダー〟の変身セットが入っていた。



「わぁ!!スッゲ~!!!寝る前にあの兄ちゃんに会ったのは、

夢じゃなかったんだ!!!」と、とても驚いた。



「ねぇねぇ!!母さ~~~ん!!!昨日、サンタさんが

プレゼントくれたよ!!!」と正義が言い、正義の母は、

買った覚えさえない、その変身セットを見て、とても驚いた。

「まぁ!!なんて不思議な!!こんなの買ってないはずなのに!!!」



そう、正義は、母親に、〝グロリアスライダー〟の

変身セットが欲しい事は言っていたのだが、母親は、

「ウチの子が他の子達と遊ぶ時に他の子達に変身セットを

着ている姿を見られたりでもしたら自分が恥ずかしい」という

理由で買ってあげられなかったのだ。



母親は、

(この子がコレを着ている姿をもし、この子の友達に

見られたりしたらどうしよう?でもまぁ、もう、そんな事、

どうだって良いか!!!)と思った。

25.深夜に迷惑メールが

また、時間は遡る。23軒目での出来事。霧河は、

「マフラーが欲しい」と言っていた女の子の家に入った。



(〝マフラーが欲しい〟って言ってたけど、どんなのが好きなんだろ?)



とりあえず、そこは勘で選んだ。



女の子の部屋に入り、枕元にそっとマフラーが入った箱を置く。

その時、霧河のスマホにメールが届き、着信音が響いた。



「何だよ!こんな時間に!!」



そういえばだが、さっき、スマホをいじって、間違えて、

着信音が鳴るように設定してしまった。スマホを見てみると、

送られてきたのは、迷惑メールだった。



(何だ~。迷惑メールか~。着信音量はもう一度ゼロにしとこう)

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