シニアの青春

社長は、ドヤ顔で部長に答えた。「球はよくつかまるし、ボールも高く上がる。これだったら、75が出るかもしれないぞ。植木」社長は、ボールをマットの上に置くとまた打ち始めた。リンダとラウンドするようになって、時々OBするようになっていた。リンダの股間が目に浮かぶと、興奮しすぎて、力んでしまうのだった。椅子に腰掛けた部長は、じっと社長のスイングを後ろから見つめていたが、リンダの股間の奥にちらっと見える赤いショーツを思い出していた。

 

翌日、8時30分スタートの山本親子と社長と部長は、341ヤード、パー4の1番ホールのティーグラウンドに集合した。社長がオナーに決まると、さっそく右手でティーアップした。三人が打ち終えると、最後にグリーンとピンクのチェックのミニスカートを穿いたリンダがアドレスに入った。お尻を突き出すといつものように色白のお尻が半分露出した。大きくテークバックし、トップに来た瞬間ダウンスイングに入った。一気に振りぬかれたドライバーは、オレンジのボールを280ヤード先までかっ飛ばした。

 

社長と部長は、感嘆の声とともに拍手を送った。ダイナミックな腰の切り上げでひらりと舞い上がったスカートの中からピンクのショーツが一瞬現れた。ショーツの残像に呆然と立ちすくむ社長と部長を母親の志保はいつものように微笑みながら後ろからそっと眺めていた。四人を乗せたカートは、約200ヤード地点に志保を運んだ。リンダと社長はPWでパーオン。志保と部長がスリーオン。一番遠い社長からパットを始めた。ワンピンに載せたリンダが、パッティングラインを読むために何度も腰を下ろした。

 

リンダのラインはほとんどまっすぐで、バーディーは確実であったが、社長と部長の視線に入るように何度も腰を下ろし、ほんの少し股を開いては股間を見せた。社長と部長は、リンダが二人の前で腰を下ろすと、無意識にかがみ込み、じっと股間を覗きこんだ。リンダは、よだれを垂らしたハイエナのような二人の顔を横目で覗くと、いとも簡単に2ヤードのバーディーパットをカップインさせた。社長と部長は、突然、笑顔を作ると大きな拍手を送った。

 

352ヤード、パー4の2番ミドルホールもほとんどストレートでリンダと社長にとっては、バーディーホールであった。1番ホールでバーディーを取ったリンダがビッグドライブをかっ飛ばすと、社長も負けじと渾身の力でドライバーを振った。部長は慎重に低いボールでフェアウェーを捉えた。志保は、40歳を過ぎて飛距離は落ちたもののドローボールで220ヤードほど飛距離を出した。部長は、緊張し始めたのかダフリが出始めた。5番アイアンをダフリ、寄せもトップしていつものトリプルを叩いた。

 

社長とリンダは、確実にバーディーを取り、順調な滑り出しに満足していた。志保も寄せワンでパーを拾い、まずまずの滑り出しにほっとした。部長は、いつものスコアで別に気にもしてない様子であった。489ヤード、パー5の3番ロングホールは、鬼門となるホールで、部長はここで大たたきしていた。社長もこのホールを苦手としていて、たまにダボを叩いていた。第二打から右ドッグレッグになっていて、ちょっと方向が狂うとOBになる危険なレイアウトとなっていた。

第一打がキーとなるホールのため、社長とリンダは、アイアンでティーショットした。志保は、5番ウッドで手堅くフェアウェーをキープした。部長も5番ウッドでティーショットしたが、左のラフに打ち込んでしまった。乱れ始めた部長を気遣い、社長は部長の第二打地点に同行した。少し深いラフからは飛距離が出ないと判断した社長は、9番アイアンでフェアウェーに出すようにアドバイスした。どうにかラフから脱出できた部長は、5番ウッドで第3打を打った。

 

部長は、いつものいやな流れになり、愚痴をこぼし始めた。「社長、またやってしまいましたよ。この調子じゃ、100は切れそうにありませんね」部長は、苦虫をつぶしたような顔で社長を見つめた。社長は、考え込んだ顔つきで答えた。「まあ、そう、気にするな。俺も、アイアンがいまひとつだ」社長は、3番アイアンでのティーショットで、リンダより20ヤードも遅れをとっていた。

 

部長は、怪訝な顔で訊ねた。「社長、どこがいまひとつですか。ティーショットは、あんなに飛んでいるじゃないですか。会心のあたりじゃないですか」社長は、腕組みをして、部長に話しても通じないと思ったが、一応話すことにした。「植木には分かるまいが、ティーショットは、芯をはずしていた。どうにか200ヤード飛んだのは、クラブのおかげだ。最近、アイアンの調子がよくない。困ったもんだ」社長は、あたりがくるった原因を自覚していた。50歳を過ぎてから関節が硬くなり、肩が思うように回らなくなっていた。

部長は、まったく理解できず、おべんちゃらを言った。「社長、私からすれば、うらやましいショットです。社長の思い過ごしじゃないですか。パーにバーディー、好調じゃないですか。この調子で行けば、70が切れるんじゃないですか。今日こそは、リンダに勝てるんじゃないですか」部長は、作った笑顔でお世辞を言った。おだてられた社長は、芯をはずしたのは自分の勘違いかもしれないと、ふと思い、リンダの股間から見えたピンクのショーツを思い出してしまった。「そうか、俺の勘違いだな。よし、今日は70をきるぞ。植木も、100をきろよ」つい時間を忘れていた二人は、社長の第二打地点にかけて行った。

 

社長は、5番ウッドで右の林越えに成功し、気をよくして、カートに戻った。リンダと社長は3オン、志保は4オン、部長は5オン、どうにか無事にグリーンに載せた部長は、大きく深呼吸をしてロングパットを寄せた。社長とリンダはパー、志保はボギー、部長はダボと鬼門をどうにか潜り抜けることができた。145ヤード、パー3の4番ホールは谷越えのショートホールで、部長は、何度もトップしては、ティーショットでボールを谷に落としていた。

 

「いやな、ホールですね。どうして谷越えになんかにするんですかね。嫌がらせとしか思えません。ゴルフはこれだから嫌いなんです」部長は、ぶつぶつ言いながら5番アイアンを手にしてアドレスに入った。硬くなった部長は、肩を十分にまわさず、相変わらず早打ちをしてしまった。若干ダフリ気味だったが、運よく谷を越えることはできた。社長とリンダはグリーンを捉え、志保は、バンカーにつかまってしまった。

春日信彦
作家:春日信彦
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