シニアの青春

部長は、社長が10年前に使っていたタイトリストのクラブセットを一万円で譲り受けていた。部長は、ゴルフは苦手で、社長にやむなく誘われていた。部長は、コースに出て5年にもなるが、いまだ100が切れないでいる。「社長、明日は、ベストスコアが出そうですね」社長は浅黒い顔に自信に溢れた笑顔を見せた。「でもな~、リンダの股間を見てしまうと、興奮しすぎて、ダフッてしまう」にやけた顔の社長の頭の中には、リンダのはりのある色白の内腿が浮かんでいた。

 

同じくにやけた部長は、軽やかな声で心にもないことを話し始めた。「社長、最近、ゴルフが楽しくなってきました。社長にゴルフを教えてもらって感謝しています。明日のゴルフが楽しみです。明日こそは、100を切ります。見ていてください」社長は、部長の下心を見抜いていた。「そうか、楽しくなってきたか。俺のおかげじゃなく、リンダのおかげじゃないか」部長は、心を見透かされ、顔を真っ赤にした。

 

急に立ち上がった社長は、クラブをキャディバッグに入れると、腕時計をちらっと見た。「まだ、2時だ。もう少し、アイアンを打ち込まないと。部長、ちょっと付き合ってくれ」社長は、部長にアコーディアに行く準備を指示すると、社長の愛車、ブルーのポルシェボクスターに二人は乗り込んだ。アコーディアに到着すると、一階のいつもの29番に向かった。社長は、7番アイアンで160ヤードのピンを狙って、軽くボールを打った。「社長、いい感じですね。グリーンをとらえていますよ」

 

社長は、ドヤ顔で部長に答えた。「球はよくつかまるし、ボールも高く上がる。これだったら、75が出るかもしれないぞ。植木」社長は、ボールをマットの上に置くとまた打ち始めた。リンダとラウンドするようになって、時々OBするようになっていた。リンダの股間が目に浮かぶと、興奮しすぎて、力んでしまうのだった。椅子に腰掛けた部長は、じっと社長のスイングを後ろから見つめていたが、リンダの股間の奥にちらっと見える赤いショーツを思い出していた。

 

翌日、8時30分スタートの山本親子と社長と部長は、341ヤード、パー4の1番ホールのティーグラウンドに集合した。社長がオナーに決まると、さっそく右手でティーアップした。三人が打ち終えると、最後にグリーンとピンクのチェックのミニスカートを穿いたリンダがアドレスに入った。お尻を突き出すといつものように色白のお尻が半分露出した。大きくテークバックし、トップに来た瞬間ダウンスイングに入った。一気に振りぬかれたドライバーは、オレンジのボールを280ヤード先までかっ飛ばした。

 

社長と部長は、感嘆の声とともに拍手を送った。ダイナミックな腰の切り上げでひらりと舞い上がったスカートの中からピンクのショーツが一瞬現れた。ショーツの残像に呆然と立ちすくむ社長と部長を母親の志保はいつものように微笑みながら後ろからそっと眺めていた。四人を乗せたカートは、約200ヤード地点に志保を運んだ。リンダと社長はPWでパーオン。志保と部長がスリーオン。一番遠い社長からパットを始めた。ワンピンに載せたリンダが、パッティングラインを読むために何度も腰を下ろした。

 

リンダのラインはほとんどまっすぐで、バーディーは確実であったが、社長と部長の視線に入るように何度も腰を下ろし、ほんの少し股を開いては股間を見せた。社長と部長は、リンダが二人の前で腰を下ろすと、無意識にかがみ込み、じっと股間を覗きこんだ。リンダは、よだれを垂らしたハイエナのような二人の顔を横目で覗くと、いとも簡単に2ヤードのバーディーパットをカップインさせた。社長と部長は、突然、笑顔を作ると大きな拍手を送った。

 

352ヤード、パー4の2番ミドルホールもほとんどストレートでリンダと社長にとっては、バーディーホールであった。1番ホールでバーディーを取ったリンダがビッグドライブをかっ飛ばすと、社長も負けじと渾身の力でドライバーを振った。部長は慎重に低いボールでフェアウェーを捉えた。志保は、40歳を過ぎて飛距離は落ちたもののドローボールで220ヤードほど飛距離を出した。部長は、緊張し始めたのかダフリが出始めた。5番アイアンをダフリ、寄せもトップしていつものトリプルを叩いた。

 

社長とリンダは、確実にバーディーを取り、順調な滑り出しに満足していた。志保も寄せワンでパーを拾い、まずまずの滑り出しにほっとした。部長は、いつものスコアで別に気にもしてない様子であった。489ヤード、パー5の3番ロングホールは、鬼門となるホールで、部長はここで大たたきしていた。社長もこのホールを苦手としていて、たまにダボを叩いていた。第二打から右ドッグレッグになっていて、ちょっと方向が狂うとOBになる危険なレイアウトとなっていた。

第一打がキーとなるホールのため、社長とリンダは、アイアンでティーショットした。志保は、5番ウッドで手堅くフェアウェーをキープした。部長も5番ウッドでティーショットしたが、左のラフに打ち込んでしまった。乱れ始めた部長を気遣い、社長は部長の第二打地点に同行した。少し深いラフからは飛距離が出ないと判断した社長は、9番アイアンでフェアウェーに出すようにアドバイスした。どうにかラフから脱出できた部長は、5番ウッドで第3打を打った。

 

部長は、いつものいやな流れになり、愚痴をこぼし始めた。「社長、またやってしまいましたよ。この調子じゃ、100は切れそうにありませんね」部長は、苦虫をつぶしたような顔で社長を見つめた。社長は、考え込んだ顔つきで答えた。「まあ、そう、気にするな。俺も、アイアンがいまひとつだ」社長は、3番アイアンでのティーショットで、リンダより20ヤードも遅れをとっていた。

 

部長は、怪訝な顔で訊ねた。「社長、どこがいまひとつですか。ティーショットは、あんなに飛んでいるじゃないですか。会心のあたりじゃないですか」社長は、腕組みをして、部長に話しても通じないと思ったが、一応話すことにした。「植木には分かるまいが、ティーショットは、芯をはずしていた。どうにか200ヤード飛んだのは、クラブのおかげだ。最近、アイアンの調子がよくない。困ったもんだ」社長は、あたりがくるった原因を自覚していた。50歳を過ぎてから関節が硬くなり、肩が思うように回らなくなっていた。

春日信彦
作家:春日信彦
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