たどり着いた場所は貴方の胸の中

プロローグ

 

 

 

夫婦なんてこんなものだと諦めていた。

 

勢いで結婚して早26年。

 

このまま普通の主婦で終わるはずだったのに、

 

そう、あの人に出逢うまでは。

 

 

 

 

 

 

1章( 1 / 7 )

始まりの時

今まで生きてきた中で、今が一番輝いてる時だと思います。

 

ひょんなことから48才でバイクの免許をとり、そこから少しずつ人生が変わっていきました。

 

それまでの生活は、どこにでもある、ごく普通の家庭で、夫と息子と娘の4人で暮らしていました。

 

バイクの免許をとる前は、家で過ごす事が好きで、読書やガーデニングを楽しむ、何処にでもいる中年のおばさんでした。

 

バイクをローンで購入し、さてどうやって楽しもうかな?

 

夫もバイクの免許をもっていて、付きあう前は750ccのバイクに乗っていたそうですが、一度もその姿を見る事は出来ませんでした。

 

わたしは週に4回、リサイクルショップでパートをしています。

 

同僚で仲の良い、佳代ちゃんに

 

「バイクを買ったのはいいんだけど、一緒に走ってくれる人がいないんだ」

 

「美英さん、mixiやってみればいいのに」

 

「mixiって何?わたし面倒くさい事、苦手なんだけど」

 

「全然、面倒くさくないよ」

 

「そうなの?」

 

「美英さん、バイク友達が欲しいのならmixiのバイクのコミュニティーに入れば友達ができると思うよ」

 

「そうなんだ~!じゃあ、佳代ちゃんmixiのやり方、教えて」

 

そして、ここからわたしの人生が少しずつ変わっていくのでした・・・


 

1章( 2 / 7 )

ネットの世界

佳代ちゃんからmixiのやり方を教わり、早速バイク関係のコミュニティーに参加してみました。

自分の写真とバイクの写真もプロフィールに載せてみました。

そう、両方良く撮れている写真をね。

すぐに同じバイク乗りの男性からメッセージを貰いました。

あの時、凄くドキドキしたのを今でも覚えています。

少しずつ、少しずつ、安定した生活というレールから外れ、刺激のある不安定な生活へとレールを変えて進んで行く。

そんな感覚に似ていました。

すべてが自分が望んだ事だったのだろうと今は痛感しています。

このまま歳をとっていくのは嫌だ。

また誰かに愛されたい。

女として見てもらいたい。

夫とはただの同居人。

わたしが本当に愛したのはこの男ではない・・・

mixiを面白半分で始めたわたしは、どんどんとネットの世界に入り込んで行きました。

会った事も話をした事もない、複数の男性と始めはネットを介して会話を楽しみ、アドレスを交換してメールで会話を楽しみ、しまいには会うようになっていきました。

これが出会い系だと言う事は後からわかりました。

同僚の佳代ちゃんに

「わたしね、今日、mixiで友達になった男の人に会うんだ」

「えっ!?美英さん、mixi始めてまだ一週間だよ、大丈夫なの?」

「うん!大丈夫だよ、その人ね、バイクで会いに来るって」

ドキドキしながら待ち合わせ場所に行ったのを今でも覚えています。

確か、20才くらい年下だったかな?

真面目そうな、いかにもモテなそうな男性だった。

2人でファミレスに入り、お茶をして帰り際に、その男性からアドレスを教えてほしいと言われ、断れずに嫌々教えたっけ。

一度経験すると、あとはもうどうってことなくなり、次々と男性と会い、一緒にツーリングを楽しむようになりました。

でも、今、思うとね。

あの人に出逢うために、

あの人に見つけてもらうために、

出会いを繰り返していたのかもしれないって、今はそんな気がしてならないんです。

そして、わたしは自分のバイクコミュニティーを立ち上げました。

メンバーが70人になった時に、あの人がわたしの前に現れたのです・・・

1章( 3 / 7 )

出逢い

出逢いは、時が熟した頃にわたしの前に忽然と姿を現した。


わたしが管理人を務めるコミュニティーで企画したツーリングに竜が参加してくれたのがきっかけでした。


竜の印象ですか?


そうね、何処にでもいるオジサンでした。


服装もシンプルで、目立った物と言えば手作りのシルバーのネックレスだけ。


太いチェーンの真ん中にドクロが一つ付いているシンプルだけど、
凄みのあるネックレス。


「ネックレス、カッコいいですね?」


「これですか、手作りなんですよ」


「へぇ~~、器用なんですね」


「完成するまでに一カ月かかったんですよ、手が傷だらけになりましたよ」


「そんなにですか?わたしにも作って下さいよ」


「あはは」


人が良さそうで落ち着いた雰囲気の大人の男性。


この何処にでもいるようなオジサンがわたしの大切な人になるとは・・・。
この時には夢にも思わなかったんです。

 

口数も少なく、だからと言って暗い感じではなく、立ち寄った道の駅で物凄く長いロールケーキをお土産に買って帰る、良いお父さん?旦那さん?なんだなと思い、竜をなんの感情もなく眺めていたわたし。


わたしは無事に家に帰ると自分の企画したツーリングの記事を書いたり、次の企画を考えたりと管理人としての自分のあり方などを色々と考えながら、心地よい疲れと満足感と共に深い眠りについていきました。


さて、今度はキャンプの企画でもしようかな・・・

 

 

 


 

yukinko
作家:yukinko
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