ツーリングの企画は何度もしていましたが、キャンプの企画は一度もした事がありませんでした。
メンバーの中には、キャンプに詳しい人もいて、その人に力になってもらい、キャンプを企画する事になりました。
キャンプは真冬の2月に行いました。
「寒中キャンプ」と名付けて参加者を募り、竜も参加してくれました。
10人のバイカーが各々にテントを張り、協力し合って料理を作り、お酒を飲み、極寒の中楽しく過ごしました。
わたしは管理人として、竜にキャンプへの参加をお願いしたのですが、
彼は違ったとらえ方をしたようで、気がつくとわたしの隣にいました。
周りのメンバーも美英さんの彼?みたいな感じになっていました。
ぜんぜん違うんですけど・・・。
夜も遅くなり宴も盛り上がった頃に、わたしはトイレに行きたくなりました。
「ちょっとトイレに行ってくる」
すると、竜も
「俺も・・・」
2人でトイレに向かって歩いていると、竜がいきなりわたしの手を握ってきました。
(え~~~っ!?ナニナニ?)
わたしは、どうする事も出来ずに大人しく手を繋がれて、
雰囲気もクソもない(クソはあるか)トイレまでの道のりを黙って歩きました。
わたしは反省しました、竜は勘違いしてしまったんです、わたしがあやふやな態度をとるものだから。
キャンプの朝、1人も凍死せずに朝を迎える事が出来ました。
竜が眠たそうな顔をしてわたしのテントに近づいてきました。
「おはよう美英さん、よく眠れた?」
「あんまり眠れなかったよ、熟睡したら死ぬかと思ったからさ」
「あはは~、俺も。俺さ、これから仕事だから先に帰るよ」
「うん、わかった、キャンプ参加してくれてありがとね、お酒の差し入れもありがとね」
「また、メールするよ」
わたしは、竜を駐車場まで送りに行きました。
2人で肩を並べて歩く。
冬の朝の空気は澄んでいてキラキラとしていた。
「それじゃ、またね」
「うん、またね」
竜が顔を近づけてきたので、わたしはとっさに顔を背けました。
沈黙が流れました。
竜はバイクに跨ると、わたしに後ろに乗れよって合図をしました。
わたしはためらわずにバイクの後ろに乗り、竜の腰に手を回しました。
竜はバイクをゆっくりと走らせました。
少しずつ、少しずつ、竜がわたしの心の中に入ってくる。
竜の一途な愛が入ってくる。
後戻りできなくなっていく。
運命の歯車が回り出した。
ゆっくり、ゆっくりと。