たどり着いた場所は貴方の胸の中

1章( 3 / 7 )

出逢い

出逢いは、時が熟した頃にわたしの前に忽然と姿を現した。


わたしが管理人を務めるコミュニティーで企画したツーリングに竜が参加してくれたのがきっかけでした。


竜の印象ですか?


そうね、何処にでもいるオジサンでした。


服装もシンプルで、目立った物と言えば手作りのシルバーのネックレスだけ。


太いチェーンの真ん中にドクロが一つ付いているシンプルだけど、
凄みのあるネックレス。


「ネックレス、カッコいいですね?」


「これですか、手作りなんですよ」


「へぇ~~、器用なんですね」


「完成するまでに一カ月かかったんですよ、手が傷だらけになりましたよ」


「そんなにですか?わたしにも作って下さいよ」


「あはは」


人が良さそうで落ち着いた雰囲気の大人の男性。


この何処にでもいるようなオジサンがわたしの大切な人になるとは・・・。
この時には夢にも思わなかったんです。

 

口数も少なく、だからと言って暗い感じではなく、立ち寄った道の駅で物凄く長いロールケーキをお土産に買って帰る、良いお父さん?旦那さん?なんだなと思い、竜をなんの感情もなく眺めていたわたし。


わたしは無事に家に帰ると自分の企画したツーリングの記事を書いたり、次の企画を考えたりと管理人としての自分のあり方などを色々と考えながら、心地よい疲れと満足感と共に深い眠りについていきました。


さて、今度はキャンプの企画でもしようかな・・・

 

 

 


 

1章( 4 / 7 )

戸惑い

ツーリングの企画は何度もしていましたが、キャンプの企画は一度もした事がありませんでした。

 

メンバーの中には、キャンプに詳しい人もいて、その人に力になってもらい、キャンプを企画する事になりました。

キャンプは真冬の2月に行いました。

「寒中キャンプ」と名付けて参加者を募り、竜も参加してくれました。

 

10人のバイカーが各々にテントを張り、協力し合って料理を作り、お酒を飲み、極寒の中楽しく過ごしました。

わたしは管理人として、竜にキャンプへの参加をお願いしたのですが、

彼は違ったとらえ方をしたようで、気がつくとわたしの隣にいました。

周りのメンバーも美英さんの彼?みたいな感じになっていました。
ぜんぜん違うんですけど・・・。

 

夜も遅くなり宴も盛り上がった頃に、わたしはトイレに行きたくなりました。

「ちょっとトイレに行ってくる」

すると、竜も

「俺も・・・」

 

2人でトイレに向かって歩いていると、竜がいきなりわたしの手を握ってきました。

(え~~~っ!?ナニナニ?)

 

わたしは、どうする事も出来ずに大人しく手を繋がれて、

雰囲気もクソもない(クソはあるか)トイレまでの道のりを黙って歩きました。

 

わたしは反省しました、竜は勘違いしてしまったんです、わたしがあやふやな態度をとるものだから。

 

キャンプの朝、1人も凍死せずに朝を迎える事が出来ました。

竜が眠たそうな顔をしてわたしのテントに近づいてきました。

 

「おはよう美英さん、よく眠れた?」

 

「あんまり眠れなかったよ、熟睡したら死ぬかと思ったからさ」

 

「あはは~、俺も。俺さ、これから仕事だから先に帰るよ」

 

「うん、わかった、キャンプ参加してくれてありがとね、お酒の差し入れもありがとね」

 

「また、メールするよ」

 

わたしは、竜を駐車場まで送りに行きました。

2人で肩を並べて歩く。

冬の朝の空気は澄んでいてキラキラとしていた。

 

「それじゃ、またね」

 

「うん、またね」

 

竜が顔を近づけてきたので、わたしはとっさに顔を背けました。

沈黙が流れました。

 

竜はバイクに跨ると、わたしに後ろに乗れよって合図をしました。

わたしはためらわずにバイクの後ろに乗り、竜の腰に手を回しました。

 

竜はバイクをゆっくりと走らせました。

少しずつ、少しずつ、竜がわたしの心の中に入ってくる。

竜の一途な愛が入ってくる。

後戻りできなくなっていく。

運命の歯車が回り出した。

ゆっくり、ゆっくりと。

 

 

 

 

1章( 5 / 7 )

告白

キャンプの企画を達成することが出来て、管理人になって良かったと満足しながら無事に帰宅しました。


子供達から

「おかえり~、このクソ寒い中、無事に帰ってきたなぁ~」って、
冷やかされながらも、わたしが自由に飛びまわれるのは、
この家庭があるからなんだって事が、この時にはわかりませんでした。

あまりにも当たり前だったので・・・


夕食の後片付けも終わり、ゆっくりと寛いでいるところに竜からメールが来ました。


「キャンプお疲れさまでした。

今日中に話さなければならないと思い、メールしました。
昨夜は一睡も出来ませんでした。
寒かったのもありますが、貴女の事をずっと、考えてました。
そして、気がついたのです。
私は、貴女の事が好きなんだと言う事が。
良かったら、私と付き合ってくれませんか?
貴女の事が好きです。」


わたしは竜からのメールを何度も何度も読み返しました。


どうしよう・・・


付き合ってくれって言ったって2人共既婚者同士。


しかも全然タイプじゃないし・・・


でも良い人なのはわかってる。
でも良い人が不倫するんだろうか?


いいや~~。


悩むくらいなら付き合ってみよう。
自由な時間もあるし、子育ても終わってるし。
わたしの事が好きで必要としてくれるのだったら。
わたしで良かったら・・・


竜には、


「友達からでお願いします」って返事を書きました。

(中学生じゃあるまいし)


それから3ヶ月後に2人は結ばれました。


そう、禁断の恋の始まりでした。






1章( 6 / 7 )

覚悟

あの日は、竜がわたしの家の近くまで来てくれました。

わたしはスクーターに乗り、駅に竜を迎えに行きました。


ランチした後に

竜「お腹もいっぱいになったし、天気も良いからスクーターでドライブしようか?」

私「うん、いいね」


お天気も良くて、わたしのスクーターで2ケツしました。
竜のお腹に手を回し、背中に頬を近づける。
風に乗って竜のつけている香水のいい香りがしてきました。


1時間ほど海岸線を走ったあと、竜が周りをキョロキョロしだしました。

(あ、ラブホ探してるんだな、覚悟は出来てるから)

わたしは後ろから腕を前に出して、ラブホがある方向を指さしました。

私「アッチにあるよ」

竜「うん」


ラブホに到着すると、
胸がドキドキしてきました。
とうとうこの時が来てしまった。

部屋は凄く広くて綺麗でした。

竜は浴室に行き、浴槽にお湯を溜め出しました。


竜「お湯、溜まったよ、一緒に入ろう」

私「うん」


オバサンのわたし。

恥ずかしくて、堂々と服を脱げるはずもなく、モジモジ、ソワソワ・・・


竜「何してるの?早くおいでよ」

私「う、うん」


浴用タオルで前を隠して、浴室に入る。


竜「なにモジモジ恥ずかしがってるんだよ、ここまで来たのに?」

私「だって、恥ずかしいんだよ・・・」


竜が入っている浴槽にわたしも一緒に入った。
タオルを外して胸をさらけ出す


竜「綺麗な胸してるね?」

私「そ、そう?」

竜「こっちにおいで」


座っている竜の上に向かい合って静かに座った。

黙って抱きしめられる

心地よい安心感・・・


わたし達、これから結ばれるんだね?

後戻りできない恋だとしても

ゴールが見えない恋だとしても

運命に身を任せてみようと思った。


そして、わたしは現実と非現実の世界を行ったり来たりすることになる。

どっちが現実なの?

どっちが非現実なの?

そして、心がバラバラになって行く。


竜の事が好きになればなるほど、わたしは現実が見えなくなった。




yukinko
作家:yukinko
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