堕ちこぼれウィズと魔法の成績表

ぼくってカッコいい?( 3 / 10 )

やっぱ最後なのね?

 彼女の家柄は忍者と魔女の血を受け継いでいて名家ではないんだけど、成績は飛び切り良いんだよね。これはファイブスターの七不思議に例えられるくらい珍しいことなんだ。

 「最後は予想通りウインザード・ドラクル」とパット先生は仰った。

 僕はホーリーの微笑みを思い返すという素敵な夢想から現実に引き戻され、慌てて立ち上がったら教室中が僕を馬鹿にした目で見ている事に気がついた。唯一ホーリーだけはそうではなかったと思う。そうであって欲しいな。

 まあ、諦めとも妥協ともつかない思いを抱いて、僕は他の生徒の冷やかしの声を聞きながらパット先生の元へ成績表を受け取りに行くと、先生はにこやかに、しかし青筋を立てて僕を見、そして仰ったのだった。

 「ウィズ君、今回も見事な成績でした。ご両親もさぞやお喜びだと思います。努力の跡が全く見られませんでした。この学校は義務教育ですので次の五学年には進級できますが、魔術の階級試験ではそうは行きませんよ。」

 僕はその時、情けない顔をしていたと思う。成績が血で決まるというのは本当なんだけど、努力で変わることもあるんだ。それは魔法の使用回数なんだよね。

 人それぞれ一回の休息で蓄えられる魔法の回数が違っていて、それは努力次第で増やせるって事なんだ。魔法の威力は血で決まるんだけど、回数を増やす努力をしなかった事に先生は怒っていらっしゃるのだ。

ぼくってカッコいい?( 4 / 10 )

がっかりまっさかり!

 今までの所で矛盾が少しあるよね?そう、僕の家は名家で優れていると言われているんだ。マットの家柄と同じ位にね。名前からも察しがつく人もいるかな?僕のお父さんの血筋は吸血鬼と恐れられたドラクル伯爵を産み出した血筋で、魔法もかなり使えるはずなんだ。お母さんの血筋は歴史上最悪の疫病、花粉症(垂れ下がった鼻水が地面スレスレまで行って地面にこんにちはって言う病)の治療法を発見した神官スターライトを産み出した血筋なんだよね。どちらも僕よりはちょっと有名だよね?

 お父さんの血筋を受け継いだなら変身術や攻撃系の魔法が優れていたはずなんだよね。僕はお母さんの血を受け継いだのかな?攻撃系の魔法はほとんど使えないんだ。僕は勇者と共に悪を倒す正義の魔術師になりたかったんだけどね。ほんとカッコ悪いでしょ?でもこの気持ちはお母さんには内緒だよ。お母さんの悲しむ顔は、ホーリーの怒った顔より見たくないからね。

 だから僕は自分に諦めているんだ。今のところはね。

 「先生がっかりしないでくださいね。先生の教え方が悪い訳じゃないですから。」と僕が言うと、先生は怒ったドラゴンより怖い顔で、

 「がっかりしなきゃいけないのはあなたです、ウィズ!少しは反省しているのですか!」と口角泡を飛ばしながら仰るので、

 「はい、先程トランタンの足を引っ掛けそこなった事は反省しております。もう少し引き付けておくべきでした。」

 パット先生は呆れてものが言えないらしく、口をパクパクさせただけで、身振りで蚊を追い払うように、僕に席に帰れと合図なさった。

 この状況を見ていた生徒たちには喜ぶ者がいたり、馬鹿にする者がいたり、反応は様々だったが、あまり気にしてもしょうがないので、朝起きて顔を洗いに行くみたいに自分の席に戻った。

ぼくってカッコいい?( 5 / 10 )

ダブルヒロインかよ!

 その時、マットたちが何かを企んでいるとはノミの耳垢ほども知らずにいた。

 先生は不屈の精神力で立ち直ったらしく、今度は全員に向かって話し始めた。

 「さて、これで今学年の終業となり春の休暇に入りますが、各自自主訓練を怠らないようにしてください。特に成績の伸びなかった生徒は更なる努力をして、来学年度に備えてください。また、ギルドでのアルバイトなどをして経験を積むのも良いでしょう。ただし、怪我や病気にはくれぐれも注意してください。それからご父兄の方々にはもう既に成績表の写しが届けられています。成績を誤魔化して伝えても無駄ですよ。ウィズ!」

 僕は笑いの天才か?なんて思いながら教室中の笑いを独り占めにしていた。

 「では皆さんごきげんよう」と言い、先生は教室を出て行かれた。

 僕も鞄を持ち、人の波に習って教室を後にし、校門まで出てきた。

 「ウィズ!」の呼び声と共に、一人の片方の目だけメガネをかけた紅いローブの女の子が僕に近づいてきた。そう、彼女こそはもう一人の幼馴染みアリシア・ベーカーだ。魔法が使えない幼年期まではよくアリシアとマットと僕と三人で昆虫採集をして遊んだりしていたっけ。

 「ウィズ、成績表を見せなよ。これ私の。」と唐突に言ってアリシアは成績表を僕の鞄の中から取り出し、自分のを僕に押し付けた。

 「うひょ~っ、しかし見事な成績だわ。0をコレクションしているみたいだね。」

と言ってアリシアは僕の駄洒落でも聞いたみたいに笑った。そう、僕の駄洒落は面白い?じゃなかったね。

 そう、これが僕の成績表さ。

ぼくってカッコいい?( 6 / 10 )

ぼくの魔法成績表その1

【魔法力】

「攻撃系」  九

「防御系」  十五

「回復系」  八

【魔法使用回数】

「攻撃系」

ファイアボール   0

ファイアアロー   0

アイスカッター   0

アイスシャワー   0

サンダーボルト   一

サンダーレイン   0

ウインドランス   0

ウインドブレード  0

ポイズンショット 0

ポイズンダスト  0

星兎心
作家:星兎心
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