「防御系」
ファイアウォール 0
アイスウォール 0
ウインドウォール 0
ムーブエレメント 三
「回復系」
ヒール 三
ヒールオール 0
キュア 一
キュアオール 0
見事でしょ?なぜだか理由は解らないけど良家の血を受け継がなかったみたいなんだ。
「もう既に弟に越されているんじゃないの?」と言ってアリシアは僕をからかった。
「そうかもね。あいつは良家の父をたま~に飲んでいるからね。」
「そりゃ乳違いのダサい駄洒落のつもり?」とアリシアらしい心地よいツッコミが返って来る。
「血だよ血。親父の血をたまに飲ませてもらっているらしいのさ。ドラキュラの家庭だからね。」と言うとアリシアは恋愛ドラマの男女関係より複雑な顔をした。そして少し悪戯っぽく、
「じゃあ、ウィズは誰かの血を飲みたくなったときはどんな風に処理しているのかな?」と言うので、
「勿論、極上のトマトジュースを飲んでいるよ。だからこの通りさ。」と言って成績表を振って見せた。
その時何かが手をかすめ、僕の成績表をさらって行った。
「そうだろうな。お前の血はトマトジュースだろうさ。でなきゃここまで悪い成績のはずがないからな。そうだろ、ドラクル伯爵さんよ。」と言ってマットが取り巻きと共に現れた。その手には僕の成績表が握られている。
カッとなったアリシアが成績表を取り返そうと杖を取り出し「ムーブエレメント」を使おうとしたが、取り巻きの一人のナディア・キーズが先に叫んでいた。
「ウインドランス!」空気が切り裂き、眼に見えない一陣の疾風がアリシアの杖めがけて飛んで行き、真っ二つにしてしまった。
下校途中の皆が何事かと、ぞろぞろと見に集まってきた。
「ご覧に入れよう、ここにあります成績表は、今日四学年を終了したドラクル伯爵家のウインザードさまのものです。立派過ぎてお話にもなりません。良家の血が笑わせてくれます。ハハハーッ。」と言ってマットは皆に見えるように成績表をかざして見せた。
僕はそれほどカッとしていた訳じゃなかったんだけどアリシアの杖を折られた事が僕の怒りに火をつけた。が、負けるのが解っているので、アリシアを守ることにだけ専念していた。つまり何もしなかったと言うことさ。
「うへ~っ、このお兄ちゃん、僕の成績より低いぞ~。カッコ悪~い。」という声が二年生らしき少年から聞こえてきた。
その後、一応取り返す振りはしたんだけどね。もう一人のマットの取り巻き、グース・ギルワンに「ウインドウォール」で遮断されたんだよね。つまりガラスに押し付けられたカエルみたいになっていた訳さ。情けないよね。ほんと。
その時、第七学年の先生、黄昏の魔術師とも呼ばれるアラスター・アビゲイル一級魔術師が現れ、
「四学年のマット・トランタンだったね。何をしているのかね?」とよく響く声でお尋ねになった。
マットは少しドキッとしたみたいだったが平静を装い、
「級友の成績表が風に飛ばされたので拾ってあげたところです。」と一の次が二であるような見え透いた嘘をつきやがった。
「ほほう、それは親切なことですね。どれどれ、私にも見せておくれ。」と言ってアビゲイル先生はマットの手から僕の見せびらかし専用の成績表を受け取られた。
父親が赤ちゃんの顔を見るような微笑を浮かべながらしげしげと眺めた後、僕以外の生徒に向かって、
「マット、ご苦労様でした。さあ皆さんも気をつけてお家に帰りなさい。」と言われ、その後「ウインザード」と僕をお呼びになった。
マットは「この靴いいだろ?お父様に買ってもらったブランド品だぜ。」という自慢話をグースにしている姿を僕とアリシアの眼に残して帰って行った。他の生徒たちもがやがやと蜘蛛の子を散らしたように帰ってゆき、アリシアは最後まで残っていたが、アビゲイル先生に帰りなさいと言われ、渋々帰って行った。
「ウインザード君だね。君と少し話したいことがあります。私についてきなさい。」と仰るので、一緒に再び学校の中に戻って行った。
そしてその時から僕にも将来に夢が出来たんだよね。