床屋のおやじがしているのと同じネックレスを、俺は、この街で、何十年間も見続けてきていた。
学校で、病院で、床屋で、コンビニで・・・
川田の首にも、橋本の首にも、同じネックレスがかかっていた。
0
「・・・嘘・・だろ?・・・」
「(この街を出て行こう)」
頭を坊主にしてから、この街の住人たちの顔が、みんな般若に見えている。
あいつも、あいつも、あいつも、あいつも・・・
みんな、般若の顔をしている。
「(明日、街を出て行こう。この街は狂っている。街を出たら、歯医者に行こう。就職もしよう、家も、車も買って、週に3日はジムに通って、身体を鍛えよう)」
雲行きが怪しくなってきた。
「(雨が降り始める前に、家財道具の処分手続きをしてこよう)」
198 / 206