この夏自室のエアコンを新しくすることにしました。
ひとつの理由は近年の異常気象が心配になってきて、暑くなるにしろ寒くなるにしろ強力なエアコンが欲しくなったということ。もうひとつはもちろんより省エネタイプへの買い替えという意味です。
ちょうど7年ぶりのエアコンの買い替えはもちろん2012年型のかなり強力な、しかも超省エネタイプのものを選びました。
全財産を使えば自分のカネで買うことも出来たのですが、父に打診したところ工事費込みで15万円までなら出してくれると言うので、はじめはなるべく近所の電気店で工事費込みのものにしようと思っていたのですが、そうすると狙いの5.6kwタイプでそれなりとなると20万円近くするので、方針を変更しました。つまり本体はインターネット通販で激安を買い、工事は昔頼んだところに別発注にすることにしたのです。
結局、T社のものを10万円弱で買い、工事費は4万円弱だった。
この工事屋さんが年配の男性なのだが(それでも7年ぶりに来た彼に訊いたら60代半ばということ)、私は7年前の時の彼の仕事ぶりと垣間見えた人間性が気に入っていた。一見のろくてぐずぐずしているように見えるのだが、終わってみると確実に完璧にほぼ時間どおりにピタリと決めて見せるところが実にベテランらしく、かと言ってもちろん最新型の機種についての知識も万全で、一方人間的にも一風変わっていて、実に飄々(ひょうひょう)と自分の仕事を楽しんでいるように見えた。私はそういう彼の人間性が気に入っていたので、実は工事会社は私の家から結構遠いのですが、わざわざ出張料を払ってまで彼に頼むことにしたのです。
そういうわけで今回も彼の仕事は完璧で相変わらず飄々としたものでした。「この機種は超省エネだよ」と言いながら、仕事を終えた彼は疲れた様子も見せずに「じゃあまた7年後!」という台詞を残し、そして私は「がんばってください!」と返して、飄々と帰って行きました。
しかし私の自室(5畳ほどの洋間)には18畳用の5.6KWのエアコンは、彼が帰ってからいろいろとやっているのですが、今度は試されているのは私の使い方というか新しい機械の調子を伺いながらの腕の方で、少し慣れるまでかかりそうな気配であるのです。
私は、まるであのベテラン工事人が「あんちゃん、ちゃんと使いこなせるかい?」と笑っているような気がしているのでした。
ある尊敬する人が、私がひきこもりで貧乏であることを知りながら「こういう催しがあるから来てください。来れば分ります。生きづらさを分かち合いましょう」というような無理難題を呼び掛けていた。私は以前にその人が書いた読めもしない本を買ったことがある。私はその人の立派さを知っていて買っていたが、さすがに体調から言っても懐具合から言ってもその催しには行けないと思っている。それってまるでカルト宗教みたいだ。彼はそうやってひとを踏み台にし生き残っているというのか。要するに私は、「人生は所詮ゼロサムゲーム、サバイバルゲームなのか?」というような青臭い哲学的な疑問にぶち当たっていた。私は妄想の中で思った。「そう言えば今までに友人を何人も自殺で亡くして来たよなあ。私も彼らを踏み台にして生き残ってきたのか?」。そんな疑問に答えなどあるはずもないが、私はその人の呼びかけをやはり無視するしかないと思ったが、一方で体調がいい時に、おカネがある時にそのうち行ってみようか。などとも考える。人生はサバイバル、しかもゼロサムゲーム。私はその妄想にしばらくとりつかれていた。