十二、 「よろしい。私は君を見つけるよ。ニット帽を被っていなくともね。何しろフギンだかムニンなのだから」 「はい、カラス、ありがとう」 「そして、私はね、残念だが今から北へ行くのだ」 何となく、そのような気はしていた。へちゃむくれのミソッカスでも、女には特殊な勘が備わっているのである。ワタリガラスはカムチャツカへ、その間に女子高生は女子大生になる。セーラー服を捨てて。
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十五、 「しかし、君、私が白い姿だったのは幸いだろう。突然変異というのかな。白く生まれた私はワタリガラスにしては虚弱だが、その分友人の目にはつき易い」 「私も、ちびで丸っこく育ったから、あなたの目に止まるでしょう」 「勿論だ」 「失礼な」 「お互い様ではないかね」 「失礼な、失礼な」 カラス。私の、カラス。いつかまた会えるだろうと言い残し、白い、世界で最も大きく偉いワタリガラスは飛び去って行った。次の冬に会いましょう。私の叫びは届いたろうか。何せ、彼女は飛ぶのが速い。風を切る音で聞えなかったかもしれない。嗚呼、恥ずかしい。屋上から叫ぶ、平凡な娘。
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