十五、
「しかし、君、私が白い姿だったのは幸いだろう。突然変異というのかな。白く生まれた私はワタリガラスにしては虚弱だが、その分友人の目にはつき易い」
「私も、ちびで丸っこく育ったから、あなたの目に止まるでしょう」
「勿論だ」
「失礼な」
「お互い様ではないかね」
「失礼な、失礼な」
カラス。私の、カラス。いつかまた会えるだろうと言い残し、白い、世界で最も大きく偉いワタリガラスは飛び去って行った。次の冬に会いましょう。私の叫びは届いたろうか。何せ、彼女は飛ぶのが速い。風を切る音で聞えなかったかもしれない。嗚呼、恥ずかしい。屋上から叫ぶ、平凡な娘。