十一、
別れが近いのかもしれないとセンチメンタルに考え、すぐにそれを打ち消そうとする。また会える。また会える。彼女がワタリガラスの姿をとっていたとしても。
「ねえ、カラス、私はいつでもこのニット帽を被ることにしますよ」
「それはまた奇矯な事だ」
「そうすれば、屋上からいなくなっても、私を見つけられるでしょう。ねえ、カラス、私は、あなたと友人でいたいのです」
「会えなくても友人ではいられる」
「いえ、会いたいのです」
「困った娘だ」
嗚呼、困らせてしまった。馬鹿な娘。
十二、
「よろしい。私は君を見つけるよ。ニット帽を被っていなくともね。何しろフギンだかムニンなのだから」
「はい、カラス、ありがとう」
「そして、私はね、残念だが今から北へ行くのだ」
何となく、そのような気はしていた。へちゃむくれのミソッカスでも、女には特殊な勘が備わっているのである。ワタリガラスはカムチャツカへ、その間に女子高生は女子大生になる。セーラー服を捨てて。