■成果を決める3つの力とは
経営における「成果」は、何によって決まるのか。成果は主に以下の3つの力で決まるのではないかと考えている。
①何を行うか
②どう行うか
③どうレベルアップするか
すなわち、
成果=①何をするか(戦略力)×②どうやるか(実行力)×③どうレベルアップするか(マネジメント力)
である。
「①何をするか」とは、マーケティング戦略が成果に大きく影響するということである。どのような事業エリアを選択するのか、どのような顧客市場を選択するのかということである。企業の経営資源は有限であるから、最も成果の上がる可能性の高い事業エリアを選択し、そこに経営資源を重点投入することが成果を出すために重要である。そして、その市場でどのような経営活動を行うかの事業戦略(仮説)の構築が成果に大きく影響する。
次に「②どうやるか」とは、成果は実行しないと出ないという当たり前のことである。いかに早く実行するか、いかにうまく実行するか である。戦略と言っても、特別なウルトラCがあるわけではない。やるべきことはだいたい社内で分かっているのだが、「実行できていない」、だから「成果が出ない」というケースは多いのではないか。実行できない理由は、部門ごとのセクショナリズムや人間関係に起因するケースが多い。もったいない話である。また、実行する人材、能力が不足するケースもある。実行しながら能力をつけて行くしかない。
最後に「③どうレベルアップするか」である。戦略を立て、実行しても、ます最初からうまく成果が出るケースはない。「なんでも最初はうまく行かない」ことを肝に銘じる必要がある。いかに戦略や実行力があっても最初はうまくいかないと思って、常に改善していくこと、PDCAのマネジメント力が不可欠なのである。マネジメントは「管理」ではない。成果を出すための「事業活動そのもの」である。
組織による経営戦略の実行体制の問題は、本質的に非常に根深いものであり、どんな企業でも「常に」存在する問題である。世の中のすべての企業は、自社の「経営環境の変化」へ対応した事業戦略の策定と実行によりはじめて存続、成長が図られるものである。
一方、「企業は人なり」と言われるように、事業を行うのは「組織」「人」である。実は「組織」「人」は、本質的には慣れ親しんだ環境を好む。すなわち「安定」を求め「変化」を嫌う傾向があるのである。その「経営環境変化のための経営戦略」と実行者である「安定を求め変化を嫌う組織」「人」との構造的な「ギャップ」、「ジレンマ」は多くの企業で、どんな時も見られる重要かつ深刻な「経営課題」であることが多い。
また、機能別組織によく見られるが、いわゆる「セクショナリズム」の問題もある。組織の指揮命令系統は、上下へ「タテ」に流れるが、実際の会社の業務は、開発⇒製造⇒販売などのように部門を「ヨコ」に流れる。各部門長は、自分の担当部門への責任感があればあるほど、自部門の利益をどうしても優先してしまう傾向がある。ある意味まじめな責任感のある部門長ほど、この傾向があるかもしれない。
全社的な利益が大切で、全部門が協力して業績向上に努力しなければならないと頭では分かっていても、まず自分のやるべきことをしっかりやろうと考えれば、人間はどうしても自部門の都合を優先してしまうことになるのである。これが、製造と販売との部門最適優先の問題、セクショナリズムの問題となってしまう傾向があるのである。これも、どこの組織にも見られる、本質的に非常に根深い、構造的な問題であると考える。
こういったある意味避けられない構造的な組織マネジメント上の問題については、一気に解決する万能薬はなく、やはり効率重視の機能別の組織を避け、変化対応重視の事業部制とすることが大切であろう。しかし、事業部制の中でもセクショナリズムが発生する余地はある。したがって、そのようになりやすいということを強く意識して、常にそうならないように修正をかけていくしかないのではと考える。
私自身の職歴は、都市銀行勤務(3年半)の後に会計士試験受験(受験2年間)し監査法人に勤務(4年半)、その後1年間の経営コンサルタント構成講座を受講し、経営コンサルタントとなり約15年である。現在、経営コンサルタントとして、中堅中小企業を対象に事業戦略、営業強化、組織改革、人事制度、幹部研修などさまざまな業務に従事している。過去の職歴も影響しているが、財務的な視点を切り口に全体の経営を考えるアプローチが多い。
「経営」を会計的に表わすと、もっとも重要な考え方は
経営=リターン÷投資 リターン=利益=収益‐コスト
となると言える。
「経営=リターン÷投資」というのが、もっとも総括的な経営を表わす会計概念である。「いかに少ない投資でいかに大きな投資を得るのか」が経営であると言える。そして、リターンの中心概念は、「利益」であり、損益計算書で表わされることになる。リターンが同じであればより少ない投資(貸借対照表の資産の部の合計)である会社の方がよい経営をしている。投資が同じであればより多くのリターン(利益)を上げている方がよい会社であると言える。資金力がありいくらでも投資できるのであれば一定の利益を上げることはできる。経営を見る場合には損益計算書だけでなく、貸借対照表も見ないとその良し悪しが判断できないのである。
上記を言いかえれば、「経営とは、いかに1円を効果的に使うことができるか」ということに凝縮されるのである。そして、これをブレイクダウンしていけば、ここの企業においての実態に合わせた検討が必要であるが、経営を会計の数字などで公式的に表現することは可能である。したがって、会計的に最重要視すべきことは、ROA(総資本経常利益率)やCFの状況(キャッシュフロー計算書)などとなる。