他人よりも、自分を大切にしなければならない。多くの日本人は、あまりこういった言葉に良い印象を受けないと思う。
自己犠牲を伴うボランティア精神やある一定のコミュニティの一員として、自分よりも他を重んじなければならない時がある。ましてや、東日本大震災からようやく1年経過した時期だ。他人よりも、自分を大切にしなければならないと言われても、矛盾を感じることも多いだろう。
「絆」という言葉が日本では広く使われている。日本漢字能力検定協会(京都市下京区)は12日、2011年を表す漢字は「絆」と発表した[i]。また、ユーキャン新語流行語大賞に「絆」は選出されており[ii]、多くの人たちが絆を大切にしたいと感じている。
大辞泉によると、絆とは、経つことのできない人と人との結びつきのことをいう[iii]。あなたがいなければ、あなたと誰かは結びつくことができない。だからこそ、他人よりも自分自身を大切にしなければならない。絆を守るためにも。
あなたは、誰かの代わりに死ぬことはできない。誰かの代わりに傷つくこともできない。誰かの代わりに津波で家を失うこともできないし、福島第一原発事故の影響で誰かの代わりにあなたが避難生活を送ることもできない。
例え、あなたが今避難している誰かと代わったとする。あなたは、避難生活を送ることになるが、果たしてそれで何になるのだろう。もしくは、誰かがあなたの代わりにあなたの仕事を明日からしろと言っても無理がある。
例え、あなたが自己犠牲の精神に則り、仕事を捨て、被災地でボランティア活動をする。それがあなたの新しい仕事であり、あなたはそのボランティア活動がうまくいくようにしなければならない。
ここまで話をしてご理解いただけた読者の方もいると思う。人間は、自分自身である限り、他人にはなれないのだ。
あなたが私になるのも無理。私があなたになるのも無理。だからこそ、人間一人一人に価値がある。そして、自分自身を他人より大切にしなければ、他人を大切にすることはできない。
あなたは価値のある一人の人間として、自分自身を大切にするべきである。そう、あなたの代わりになる人はいないのだから。
ここまでの流れの中で、私はかなり「言い切り」の言葉を使ってきた。「でなければならない」とか「すべきである」といった具合だ。しかし、これらの言い切り言葉は、他人に価値を押し付ける言葉である。
価値組とは、それぞれ自分自身の価値観を大切にしなければならないはずである。しかし、私は、「言い切り言葉」で価値を押し付けようとしている。
矛盾。
そう言われても仕方がない。そう言われるように書いてきたつもりだ。この価値組の16の法則の中で、1では、価値測定器といって自分自身で価値を判断する尺度というか判断基準というかそういった価値の測定には、おカネというツールは使うものの、その「おカネ使う意味」自体は、価値に大きく左右されると説明をした。
そして、2~5では、あなた自身の置かれた状況を生命や時間、出会いといった分野で全ての人に当てはまるような状況を想定して書き進めてきた。ここまで書いた全ての言い切りの言葉に、あなた自身の価値観を当てはめて欲しい。
価値観を押し付けると押し付けられた方は、どことなく嫌な感じがするものである。しかし、一方で価値観は他人の影響を受け易いものでもある。例えば、兄弟がいる場合、年上の兄、姉が好きだった音楽のジャンルやマンガなどは影響を受け易いと思う。
日頃から価値観を鍛えなくてはならない。本当に正しいのか正しくないのを判断する価値測定器を養うためだ。
もちろん、筆者の言っていることはワケのわからない話だとあなたが思えば、私の話は価値がないだろうし、「そういう考え方もあるなぁ」とか「言われてみれば確かに」とか少しでも価値組に興味を示して頂けたら、私としては至福の極みである。
但し、価値は必ず自分で最終的に判断をする訓練をしなければ、価値組にはなれない。そして、価値を押し付けてしまうと、それは他人の自由を侵害するので、あまり望ましくはない。
矛盾が生まれるときに、人間は価値観を最大限に発揮するようにできている。ここで価値観を最大限に高めていただき、次なる章へと進んでいきたい。
ワーキングプアという言葉が社会的用語として認知されてきた。どんなにどんなに働いても、一向に報われないというお話。2012年3月27日現在のわが国の最低賃金は、岩手、高知、沖縄の645円が最も低い金額だ[i]。
これで実際に週5日、実労働毎日8時間で計算をしてみる(1年は、52週とする)。最低賃金で、上記条件で働いた場合、年収は134万円となる。年収200万円を超えるには、時給は962円。年収300万円を超すには、1,443円。全国の平均年収は、412万円[ii]なので、これを時給換算すれば1,981円になる。
もちろん、残業代やボーナスは含まないので、前述のとおり、1日8時間、週5で働くという前提での数字だ。年収200万円以下の給与所得者は、平成22年度民間給与実態統計調査結果によると5年連続で1,000万人以上になり、働いている人の約5人に一人は年収が200万円以下になる。
では、ここで質問だ。「ワーキングプアとはどのような状態か?」
日本では、「ワーキングプアということ自体の確立した定義がないので、どこがワーキングプアとは統計的にはなかなか言えないものです」と厚生労働省の前田勤労者生活課長が発言している[iii]とおり、確立した定義はない。
上記の最低賃金で計算をした年収134万円は、果たして多いのか、少ないのか。
ひとつ例を挙げよう。30歳の独身男性がこの最低賃金で1日8時間、週5勤務で働き、且つ、協会けんぽ(社会保険)に加入、雇用保険、厚生年金を収めて、更に所得税、住民税を収めたとして、月収108,360円、もろもろ差し引かれ、月の手取りは、90,730円[iv]となる。
アパートの家賃相場をgoo住宅・不動産サイトで調べてみた。上記、岩手、高知、沖縄では、岩手県盛岡市4.6万円、高知市3.5万円、沖縄県2.9万円[v]だった。
仮に岩手県盛岡市に住んでいた場合、この男性の給与の約半分は家賃として支払われ、残りの4万円弱で生活をしなければならない。
これは、果たしてワーキングプアと呼べるのか。AllAboutの「一人暮らしのお財布事情 男性編」[vi]で、月々の水道光熱費は6,200円という男性がいた。すると、食費等生活に回せる費用は3万8千円。携帯電話代を5,000円程度にすると、残り3万3千円。のり弁(290円)を毎日3食食べると30日で26,100円、残りが、5千円ちょっと。決して「経済的に豊かではない」と言える。テレビがあれば、NHKの受信料、1,345円も払わなければならない。たとえ、NHKをまったく見ないとしても。
ここで価値組の本質である「価値観」で測定し直してみよう。
あなたがもしこの状態の時、「生活が苦しい」と感じたなら、どのような行動に出るだろうか。もちろん、同じ岩手県盛岡市内の安い物件を探すというのも一つの賢明な手段だ。同市内で1番安い物件だと1万9千円という物件がある[vii]。引越しをすれば、これで、2万7千円も生活費が浮く。そして、自炊をすれば、食費が抑えることができる。何も26,100円ものり弁を買う必要はない。
また、仕事を変えるという選択もある。大手アルバイト求人情報誌、タウンワークのネット版(http://townwork.net/)で岩手県盛岡市、時給700円未満の求人情報を、2012年3月18日に検索をしてみた。
検索結果は0件だった。
次に、もっと上の時給で探してみると、700円の仕事が47件あった。
更に、ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.go.jp/)で、同市の月収11万円以上の仕事を、同じく2012年3月18日に検索をしてみたところ、1,932件、同月収15万円以上で1,603件、同月収20万円以上でも1,063件ヒットした。
今度は逆のパターンで、「この生活が苦しくない」と感じたら、恐らく何もしないだろう。
更に追求すると、もしあなたが、上記ハローワークの求人で月収20万円の仕事を見つけて就職したとする。あなたには毎月20万円の安定した収入があり、年収は240万円。もしかしたらボーナスが出て年収が300万円台に乗るかもしれない。
そしたら、そこで「どんな生活を送るか」によって、まだまだ稼ぎが足りないと思うかもしれないし、それで十分だと思うかもしれない。年収200万円以下の人たちが1,000万人を超える中、あなたは「そうでない分野の人間になった」と感じるかもしれない。
しかし、価値組は「金銭の多寡で勝負しない」のである。
すなわち、厚生労働省の前田勤労者生活課長が言ったとおり、「ワーキングプアということ自体の確立した定義がない」ので、ワーキングプアだと思うのは、あなた次第であり、その金額の決定もあなたが最終的に下さなければならない。
ここで2つの点でこのワーキングプアの問題を捉えて欲しい。
l その仕事は、あなたにとってどんな価値があるのか。
l その生活は、あなたにとってどんな価値があるのか。
どうしてもその仕事をしたくてしているのであれば、それはとても価値のある仕事だし、そして、その仕事で得られる収入でとても素晴らしい生活が送れているのであれば、それはとても価値のある生活だと言える。
価値のある仕事、生活を送るために、価値組は全力を注ぐ。そうすれば、自ずと仕事も生活も変わるはずである。
ゆえに、価値組に、ワーキングプアは存在しないのだ。
[i] 厚生労働省 平成23年度地域別最低賃金改定状況 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html
[ii] 平成22年度 民間給与実態統計調査結果http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2010/pdf/001.pdf
[iii] 平成19年度第3回目安に関する小委員会議事録 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/txt/s0731-3.txt
[iv] 645円で、21日出勤、実労働168時間。健康保険税5,575円、厚生年金9,683円、雇用保険650円、所得税330円、前年度の住民税16,700円を12均等割で計算。
[v] goo 住宅・不動産 家賃相場 http://house.goo.ne.jp/chiiki/souba/
[vi] AllAboutの「一人暮らしのお財布事情 男性編」http://allabout.co.jp/gm/gc/72074/#1
[vii] お部屋探しならHOME'S賃貸 http://rent.homes.co.jp/iwate/city/morioka-city/result-30-0-fee_combo.html
あなたが一度きりしかない人生の中で、本当にやりたいことはなんだろうか?
この問いに、今一度あなたの思っている素直な気持ちを当てはめて向き合って欲しい。本当にやりたいことをやって生きているのか。それとも、嫌々今の人生を送っているのか。
ワーキングプアの問題でも取り上げたように、価値組にワーキングプアは存在しない。この言葉に少し違和感がある読者もいらっしゃると思うので、これを更に深く掘り下げる。
あなたの本質がどのようなものなのかをじっくりと検討した時に、あなたは「仕事に価値を見出す」のか、それとも「生活に価値を見出すのか」、それともその両方なのかを検討材料としなければならない。
よく「お笑い芸人」の話がテレビで放映される。厳しい下積み時代、年収が100万円程度の生活を強いられ、もしくは無収入に近い状態の芸人の卵がいる。経済的な尺度から見れば、低収入で、ほんの一部の芸人しか華を咲かせることができない芸能界で、このような低賃金で頑張り続ける芸人の卵たちは、よく耐え忍んでいるなと思う方もいるはずだ。将来に対する「不確実性」が高すぎるのに反し、年収が低い。しかし、彼らのほとんどは、「人を笑わせる仕事」に自らの価値を置き、低所得で生活をしている。
もし、彼らが「人を笑わせる仕事」よりも、快適な生活を求めた場合、当然仕事よりもプライベートが優先されてくる。プライベートでお金がかかるような場合には、それなりの仕事をしなければならない。このような低賃金での下積み時代を過ごしたくなければ、とっくに違う仕事をして暮らしているだろう。
また、お笑い芸人で「人を笑顔にする仕事」がしたいのであれば、何も「お笑い芸人」でなくてもできる。例えば、ディズニーのバイトは、ほぼ時給1,000円以上になり、更に「お客様を笑顔にする」という使命を果たさなければならない。価値を少し移転しただけでも、違いが出てくる。
また、「本当に人を笑わせたい」という価値観があなたの根本にあって、介護の仕事をしたとする。介護の現場で高齢者の方を、あなたの生まれ持った明るい性格でずっと「笑わせ続けることができる」可能性もある。介護を受ける方にとっては、とても幸せなことだ。
つまり、お笑い芸人を目指すのであれば、あなたの本質は、「人を笑わせたい」、「テレビ番組や劇場等のステージの大勢の人の前でお笑いを提供したい」、そして「お笑いで将来売れっ子になりリッチな生活がしたい」などと複数の要素が絡み合っていなければ、あなたの価値観と目指す仕事がミスマッチする。そして、当然ながら、あなたの本質とその仕事があっていなければ、「嫌々お笑い芸人をする」という結果になる。
本当にやりたいことをやれる幸せを感じることができなければ、あなたの価値は最大限発揮されていないことになるのだ。
一般的な生活を送り、プライベートを重視したいので、仕事は正直なんでもいいという方もいらっしゃるはずである。普通に結婚して、普通に子どもができて、生活は決して楽ではないけれども、コツコツ節約して貯めたお金で年に1回は家族旅行をすることが、あなたにとって一番価値があることならば、あなたはそれをすべきであるし、誰もあなたを止める権利はない。
自分の本質を見極めることにより、価値有る時間の配分が、おカネを稼ぐことに回るのか、それとも自分自身のやりたいことをやるために使うのか、それとも家族のために使うのか、それぞれのタイプによって異なってくる。
「あなたが一度きりしかない人生の中で、本当にやりたいことはなんだろうか?」
という質問は、あなた自身の本質を探し出すのに有効な問いである。自問自答して、あなたなりの答えを出して、価値を与え、価値のある時間を過ごして欲しい。そのためには、自分の本質を見極める必要がある。