シャボン玉ムーン

第1章 あの頃( 5 / 16 )

「電話番号」 TelephoneNumber

 自宅の電話が鳴ると言えば、セールスが多いというのが、近年の傾向だ。

携帯電話では、ワン切れという、呼び出し音1回で着信番号だけを残して、出会いサイトのコマーシャルメールが多い。
そこで、安易に携帯電話の会社を変えると、自分の電話番号が変わってしまう為に、ついつい、同会社でのグレードアップ機種を選択してしまう。

何故なら、久しく会っていない友人でも、昔の携帯番号に、ふと、掛けて来る事があるからだ。特に、盆と正月辺りになると、その傾向は強く、自分の携帯に登録されていないが、知っている友人から、メールが届いたり、電話が掛かって来たりする。

 何とも、難儀な事であるが、今や、携帯電話は“第2の心臓”という役割を担っているのだから仕方無い事なのである。

第1章 あの頃( 6 / 16 )

「士」と「師」

 最近、先生と呼ばれて浮かれる人達の多い事に驚く。

大辞林によると「士」とは、男子。特に学問・道徳を修めた男子についていう。
また、「師」とは、学問や芸能などを教える人。先生。師匠。或いは、技術・技芸などを表す語に付けて、その道の専門家であることを表す。と記してある。

 昔は、医者や学校の先生を先生と呼び、それ以外の人達を先生とは、余り呼びはしなかったものである。それが、今は代議士から弁護士、会計士、インストラクター、コーディネイター、コンサルタントetc・・・と横文字の人達までが、先生と呼ばれる事に喜びを感じている様がある。呼ぶ方も特別な接待条件であるかの様に、やたら「先生」「先生」と呼び、相手のご機嫌伺いの形容詞になってしまっている。呼ばれる方も呼ばれる方で、大学を出ても学士であり、「師」では無く、「士」である筈なのに、まるで自分が2階級特進したかのような錯覚に陥っているとしか思えない様な現状がある。

 ある時期に、代議士になった某元アナウンサーが「先生」と呼ぶ人達に罰金をかけていたが、やはり「先生」と呼ばれるからには、専門知識を持ち、且つ人々に教え導く能力のある人が相当するに相応しいと思われるのである。

その道のプロと呼ばれる人達が少なくなった昨今、本当の専門家が姿を消し、
「俄か士(サムライ)」の多い事と言ったらキリが無いほどである。
 全国の「先生」方達に申し上げたい。胸に手を当てて、世の中の人々を指導し、次の世界への手ほどきをして行けるという自信をお持ちでいらっしゃるでしょうか。“青は藍より出でて藍より青し”と言う師匠からの師事により、教え伝える後輩を、創出される事が続ける事を出来るかどうかなのである。

 さて、あなたは街でふと、「先生」と呼ばれた時、自信を持って振り返る事が出来るでしょうか?

日夜、研究に勤しんでいる方には申し訳無いことであるが、これからの時代に一番多くを求めている庶民達の叫びを是非、受け止めて戴きたいと願って止まないのである。

第1章 あの頃( 7 / 16 )

「懐かしの名前」

 南の島へのバカンスが決まった時、その土地のガイド本を、何冊か書店で目を通した。昔、行った所とは言え、既に22年という歳月が流れている。
時の移り変わりは速いもので、もう、無くなっているお店も何軒かある。

そこに、ふと、見覚えのある名前のバーを発見した。
バカンス当日、南の島で、合流した友人と 私が初めて、この土地を訪れた時に食事をした店へと行く。
その後で、何処へ行こうかと、お互いに買ってきたガイド本をパラパラ捲りながら、あの、見覚えのある名前のバーに行きたいという事になり、早速、その店へ電話をした。
その店の名は、昔、1年に5度この地を訪れた時代に、親しかった友人の名前だ。オーナーか店長かと尋ねてみると、何と私の知る友人の弟さんが、店長だそうだ。
当時は中学生だったその弟さんも今や38歳。
店に行くと、スタッフが店長である弟さんの写真を見せてくれたり、私の昔の友人に電話をして くれたりと、超高級バーの割には、リーズナブルな料金であった。

 お互いに、流れて行った月日はあるものの、談話の声は、昔と変わらない22年前の、あの日のままであった。

第1章 あの頃( 8 / 16 )

「スローモーション」

 ゆっくりと、時が過ぎてゆく。

電話も鳴らずに、ただ静かに、時が過ぎてゆく。

いつもより、時計の針がスローモーションの様に動いて行く。

青い空を映す様に青いプール、雲の流れが早い様で遅く感じる。

夏の海辺は心に安らぎを与えてくれる。

蝉の声もないこの島で、BGMと水の音と、子供達の歓声が聞こえる。

夕方だというのに、日がまだ高い。サンサンと輝く太陽に、

瞬きする回数が自然と増えてしまう。ちょっとハイレグで、胸と背中の大きく開いた水着に、周りの視線が刺さって来る。少し快感かな?!

 このままずっと、時の経つのを忘れて過ごしていたい。

 そんな気分に浸っている。
あかね しづか
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