カフェオレ・ライターのforkN出張エッセイ

その3( 12 / 16 )

【5月27日】

イケメンとの同棲生活が、そろそろ本格的に犯罪の香りを帯びてきた


いやー、すみません。長らくお待たせしておりました。イケメンバンク、タキCとの同棲生活レポを再開します。たくさんのご要望メールをいただいておりまして、なんというか、みんなタキCが大好きなんだな、と。

さて、ずいぶん間が空いてしまったので前回までのお話を忘れてしまった方がほとんどかと思うのですが、さすがにいい加減長くなってきたのでこれまでの流れをまとめました。今後おさらいにはこちらのページをお使いください。

男だけど、イケメンと同棲することになった【まとめ】

ではさっそく続きを見ていきましょう。今回は2回分です。

朝をしらせるようにトリのさえずりがきこえる。

…かさかさ…かさっ!

…ん? なんだかへんなオトがするよ?

「タキC!?」

そこには、自分のニモツをちらかしているタキCの姿があった。

……これが荷物を散らかしているのではなく、荷物をまとめているだったなら、ストーリーの中でもタキCが家出するフラグなのかなと思うのですが、どうやらそうではなさそうです。

しかしこの「…かさかさ…かさっ!」だけ見るとタキCが虫みたいですね。……まあ、ある意味寄生虫みたいなものと言えなくもないですけど。


「ナニしてるのよー!?」

「おこしたか、すまないな」

「そうじゃなくて、なに、このニモツ!?」

「今晩でかけないといけない用事があったのを失念していたんだ。だが、着るシャツがなくてさがしていた」

「シャツっていうけど…あれはダメなの?」

なぜか、ゴミ袋にほうりこまれたシャツの山。

「あれは、クリーニングに出さないと着れたものじゃない。しかたない、今から買いに行ってくる」


主人公が出かけようとすると目を皿のようにして制止してくるくせに、自らは堂々と出かけるタキC。その傍若無人っぷりがいつの間にか当たり前のように受け入れられていることに驚きを禁じ得ません。そうか、これがDVの予兆ってやつか……。


「ちょ、ちょっと待って! わざわざ買いに行かなくってもセンタクすればすむことだよね!?」

「…そのギジュツをワタシに求めるな」

「ようは、できないのね?」

「ニンゲン誰にでもあるニガテ分野だと言っておこう」

「ややこしいな。…はっきりいって!」

「…できない…んだ…!」

「あたしがおセンタクするよ。むしろ、今まで気がつかなくてゴメンね」

「いや…。悪いのはワタシだろう」

「今日はいいお天気だし、早く乾くよ。パソコン関係は、タキCにかなわないけど家事なら任せてね♪」

あたしはさっそく、センタクキをフル稼働させた。


タキC……洗濯もできないのか……。

これはつまりあれですかね、完璧に見えるイケメンがちょっとだけ見せる抜けた部分に、女性はついうっかり母性本能をくすぐられるってやつですかね。

まあ家事については僕も人のこと言えたもんじゃないので、十分タキCとタメ張れるんじゃないかと思うんですけど、やっかいなことに母性本能ってやつはイケメンにしか発動しないイベントなんですよね……!


たくさんのシャツを、お日様の下で乾かす。

あとはアイロンをかけてパリッとさせるだけ!

「これなら、出かけるまでに間に合うな」

「ネクタイも洗えるものは手洗いしておいたからね」

「ネクタイまで洗えるのか」

「洗えないものもあるけど洗えるものはあるんだよ」

「なるほどな…」


……何だこの会話

まるで小学生がお母さんに家事を教えてもらっているかのごときレベルの低さですが……ここまでひどくても、女性的にはさらにギャップが強まって「タキC最高!」ってなるものなのでしょうか。主人公は僕の分身のはずなのに、僕とはやはり根本的に何かが違うみたいです。


どうやらタキCは、今までずっとセンタクものをクリーニングに出してたみたい。

「礼をしないといけないな」

「それほどのことじゃないよ」

「…いろいろなことが片付いたら、このお礼にリョコウにでもつれていこう」

「え……リョコウ? あたしとタキCで?」

「ああ、そうだ。考えておいてくれ」

前にくらべてヒトあたりがよくなってきたタキC。

でもそれに比例して、あたしがみょうにドキドキしちゃうことが多くなった気がする。

なんだか、変な感じになっちゃったよぉ!


「変な感じになっちゃったよぉ!」じゃないよ!

いいか、冷静に考えるんだ……おかしな点はたくさんあるぞ。


1.「…いろいろなことが片付いたら、このお礼にリョコウにでもつれていこう」とあるが、「いろいろなこと」が何なのかもまったくわからなくて不気味だし、そもそもなぜタキCが主人公の家に住みついているのかもよく考えてみれば謎のまま

2.「前にくらべてヒトあたりがよくなってきたタキC。」とあるが、別にそうでもない。たんに主人公の感覚がマヒしてきている可能性大。

3.「でもそれに比例して、あたしがみょうにドキドキしちゃうことが多くなった気がする。」とあるが、このドキドキはどちらかといえばストックホルム症候群に近いそれではないかと思われる。

※ストックホルム症候群とは、誘拐・監禁などの状況で被害者が犯人に対しなぜか同情や好意を抱いてしまう現象のこと


……ということで、メーデー! メーデー!

本格的に重大な犯罪の香りがしてきました!

次回は、いよいよタキCが主人公の家を乗っ取って完全犯罪成立か?


……続きます。

その3( 13 / 16 )

【6月3日】

イケメンと同じセリフをネットでつぶやいてみたら、それは地雷だった


たまに佳境に入ったかのような気配を放ちつつも、一向に終わりを迎えないイケメンバンク、タキCとの同棲生活、さすがにそろそろタキCの過去とかそこらへんに触れてほしいところです。

ということで今回は前回の続きから。


センタクものが乾くのを待つ間、

すこし遅くなっちゃったお昼ゴハンの時間。

「タキCのスキなお赤飯を炊くね」

「覚えてたのか?」

「覚えてるよ♪」

「だって、好きなものを作ってもらったら、うれしいでしょ。喜んでもらえるなら、あたしも作っていて楽しいもん」

「ありがとう、昼ゴハンが楽しみだ」

「う、うんっ」

なんだか、照れちゃってまともにタキCの顔が見れないよ。

「じゃあ、すぐに作るから待っててね!」

あたしは慌ててキッチンへと逃げこんだ。

もう完全にノロケです。

……何が「照れちゃってまともにタキCの顔が見れないよ」だ! よく考えるんだ、タキCが本当はどういうやつなのかを。パソコンを教えるとかいう詐欺くさい理由をつけて見ず知らずの主人公の自宅へ不法侵入し、そのまま不法占拠、おまけに半強制的に主人公を監禁し、自分はビタ一文生活費を払うことなく、あまつさえ漫画を買う小銭すらたかる始末! 罪状いくつあるんだよ!

さらにはこいつ、たまに500円入れると調子に乗って、「なあ、新しいパソコンが欲しいよ」とか言い出すんですよ!? そのまま3分放置するとキレるので仕方なく500円入れてやると、「ありがとう、おかげで新しいパソコンが買えたよ」とかぬかしやがる。500円でパソコンが買えますか!? EeePCだってその100倍のお金がかかるわ!


――すみません、あまりの事態にちょっと取り乱してしまいましたが、なんとこの回はこのノロケだけで終わりです。

あまりにも進展がなさすぎですし、なんかちょっと勝手に貯金箱の中でいちゃついているのを見せられるのが腹立たしいので、もう一話見ていきましょう。一話進めるのにだいたい1500円ぐらいかかるのが何ともアレな感じですけども。

炊きたてのお赤飯をタキCは嬉しそうにほおばった。

「おいしいな」

あ、はじめてゴハンの感想を言ってくれた。

「じつは、お赤飯は得意なんだよ。お母さんがよく作ってくれてたから覚えてるの」

「家庭の味…か…」

「そうだね♪」

「この赤飯には、お前の心がこもってるんだな。相手のことを考えてるお前の心が…。いままで、そんなことをかんがえて、カイシャを経営してきたことはなかった…。チチから引き継いだカイシャを、数字だけしか見ていなかった。カイシャも、リョウリも同じだ。キモチのこもっていないものは誰の心もゆさぶらない…だから、なのか…?

ヒトリごとをもらすタキC。

なにか、悩んでることがあるみたいだけど…

お赤飯をまえに、考えこんでしまった、タキCを、あたしはそっと見守るしかなかった。

タキC……なんで急に熱く語り出したの……?

個人的に、“相手を無視して自分の話を熱く語る男は100%女性に嫌われる”という持論を有する僕ですが、これまでクール、というかもはやネクラの域に達していると思われたタキCが突然人が変わったようにぶつぶつ言いだしたのにはびっくりです。いや、あくまで独り言だから、ネクラという性格自体は何も変わっていないのか。

それにしてもこいつのつぶやきの内容が酷い。

ここだけもう一度引用すると、

「この赤飯には、お前の心がこもってるんだな。相手のことを考えてるお前の心が…。いままで、そんなことをかんがえて、カイシャを経営してきたことはなかった…。チチから引き継いだカイシャを、数字だけしか見ていなかった。カイシャも、リョウリも同じだ。キモチのこもっていないものは誰の心もゆさぶらない…だから、なのか…?

まず会社を経営するにあたって相手のことを考えたことがない、というのはいくらボンクラ2代目としてもアウトですし、それに気づいたならそろそろお前会社に戻れよ、と思いますし、むしろ今までそれでよく人生渡ってこられたな、とも思います。

ちなみにこの発言を僕がするとどうなるのかちょっと興味があったので、140文字制限で自分の気持ちをリアルタイムにつぶやけるウェブツール「Twitter」(よかったらフォローしてね!)を使って、この記事を書く前にまったく同じ文章を投稿してみたんですけど、数時間放置していたにも関わらず誰からもリアクションはありませんでした

たぶん、「何このめんどくさいやつ……」と思われたに違いありません。なんかほんと、ごめんなさい……。


ということで、これまでにないほどの長文で急にキャラを変えてきたタキC、さすがにそろそろ佳境か!? と淡い期待を抱きつつ、次回へ続きます。

その3( 14 / 16 )

【6月23日】

骨肉の争いで急にドロドロしてきたイケメンとの同棲生活



さて、なんか「もう終わるもう終わる」と言いながらさっぱり終わらないイケメンとの同棲生活ですが、

そろそろ主人公とタキCのノロケを見るのも苦痛になってきたな……と思っていたところで、どうやら急展開を迎えたようです。

←そろそろ皆さんタキCの顔を忘れた頃じゃないかと思うので参考までに。

洗ったシャツを着て、タキCが出かけていってから、数時間。あたしは、トモダチからもらった犬のユキチを留守番相手に、タキCの帰りを待つ。

――ダン、ダン…ダンッ!

あれ…タキCの足音?

なんだかいらいらした足音が表から聞こえる。

ピンポーン♪

「タキC?」

「ああ、ワタシだ」

――カチャ!

ドアを開けるとそこには眉間にしわをよせたタキCが立っていた。

「おかえり、タキC」

「…ただいま」

機嫌の悪そうな様子で、タキCが部屋に入ってくる。

どうしよう。そっとしておいた方がいいのかな?

「タキC、どうかしたの?」

「…なんでも…ない。…べつに、キミが心配することじゃない」

最後の「…なんでも…ない」でなぜかちょっとキバヤシを思い出してニヤニヤしてしまったのですが、それはともかく何だか面白そうな展開になってきましたよ! これまでさんざんタキCの傍若無人な振る舞いにいい加減腹が立っていた僕としてはそろそろやつにきついお灸を据えてやらなければと思っていたところですのでこの鬱展開は望むところ! さあ、何があったんだ? ん? 言ってみな?


「そんな様子のタキCを見てるのに、心配するなっていう方がムリだよ!」

そしてタキCは重い口を開いて、自分のことを話してくれた。

タキCは、あたしでも知ってるくらい有名なIT企業のシャチョウだった。

それは亡くなったお父さんから継いだもので業績もよく、何も問題なく、経営をしていた。

それなのに、社員の引き抜きが始まり、株の買い占めなんかもされちゃったらしい。

その相手はタキCのおニイさん。

要約:ダメな二代目が女性の家に入り浸って会社のことを放置した結果、社員が愛想を尽かし始めた。

……という解釈で合ってますよね?

パソコンに疎い主人公が知っているレベルのIT会社というと、たとえばマイクロソフトとかYahoo! Japanとかでしょうか。あるいは楽天とかmixiとか。……いずれにせよタキCが社長という時点で会社の先行きは見えたような気がしますけど。

沈む運命にある泥舟から逃げ出すのは当然のことなので、引き抜きに応じた社員はまったくもって正しい判断をしているとしか言いようがないのですが、タキCにはそれが理解できない様子。

「アニは、自分がカイシャを譲られなかったことを恨んでいるんだろう」

「そうなんだ…」

「業績も伸びているんだ、カイシャに不満があるはずもない。それなのに…どうして社員たちはアニのカイシャに引き抜かれるんだ! あげくに、恋人までもアニに奪われてしまった。いったい、ワタシのどこが悪いんだ! どうしてなんだっ! そこまで、ワタシはダメなやつなのかっ!

……ええと、いちいちツッコむのも面倒なので、太字にしたところについては各自自由にツッコんでいただければと思うのですが、それにしても話が進めば進むほどタキCのダメっぷりが浮き彫りになる一方ですね。

今のところこいつの長所が「金持ちである」というその一点しかないわけですが、それってつまり有名な恋愛カウンセラーがこの物語を「女性の理想の恋愛」に認定していることから考えて、「恋愛=金」と結論づけられるということでしょうか。そんな厳しい現実を突きつけられるために僕はこの数ヶ月間イケメンと生活してきたというのでしょうか……。


「タキC!」

あたしは、とっさにタキCの背中に抱きついた。

「タキC、そんなふうに焦っちゃダメだよっ! 大丈夫、タキCは少しヒトづきあいがヘタなだけなんだから。そのままのタキCでも、大丈夫だからね」

あたしはタキCの大きな背中にしがみつくようにして、強く強く抱きしめた。

最初は真人間だった主人公ですが、タキCと生活するようになってから確実に人としてのランクが下がってきているようです。不法侵入された上、監禁状態にされたことをもう忘れたのでしょうか。

もしあれがタキCにとっての“恋愛のかけひき”なのだとしたら、それって“少し人付き合いがヘタなだけ”というレベルの問題ではないと思うのですけど。どう考えても“そのままのタキC”では兄貴に会社を乗っ取られて終わりです。

……ただ、むしろその方がタキCにとっても会社の従業員にとってもハッピーエンドであるという可能性は否定できませんが。


ということで次回はタキCがどんな醜態をさらしてくれるのか今から楽しみですね!


そうそう、読者の方からこんなメールをいただいていたのでご紹介。

イケメンバンクにはアラーム機能が付いていますけど、使ってないんですか?

えっ……?


アラーム機能……?



次回へ続く。

その3( 15 / 16 )

【2009年8月8日】

イケメンとの同棲生活が、思わぬ形でラスボス戦へと突入した!



はい、どーも!

かなりご無沙汰しておりましたイケメンバンクレビュー、人格破綻イケメンことタキCとの同棲生活は、まだまだ続いております。


最近「佳境に入った」みたいなことを何度も書きつつ、一向に終わる気配がないのが気になったので、ちょっと調べてみました。

……すると、今回の更新で合計77枚の500円玉を貯金していることが判明しましたので、つまりゴールとなる5万円(100枚分)が貯まるまでにはあと23枚の500円玉が必要であり、一話あたりだいたい500円玉3枚を消費することを考えると、残り4話ぐらいでタキCとの同棲生活も終了するのかな……という感じです。

いい加減この連載にも飽きたわ……という方も多いかと思うのですが、もうちょっとなので良かったらお付き合いくださいませ。


―― さて、だいぶ間が空いてしまいましたので、これまでのあらすじはまとめページで思い出していただくとして、今回はタキCが経営している会社を実の兄に乗っ取られそうになっているという告白をしたところから続きを見ていこうと思います。


背中を抱きしめていると、タキCがぽつりと漏らした。

「いや…本当は、どうして見捨てられていったのか、もうわかっているんだ」

「え?」

タキCあたしの手にそっと触れる。

今度はタキCから、あたしを抱きしめてきた

「タキC?」

「それがわかったのは、お前のおかげだ」

「あたし? あたしは何もしてないよ?」

「ワタシが一方的に押しかけても、お前は追い払うどころか、ワタシを思いやってさえくれた

「あたしじゃなくても、誰でもそれくらいのことは、してくれるんじゃないの?」

「いいや。お前がとても優しいオンナだからだ。ワタシはヒトを思いやる心を持ってなかった。お前との生活で、それに気づかされた。受け継いだカイシャを、ただ数字でしか見ていなかった。カイシャを支えてくれた社員や顧客をないがしろにしたことが、今回の原因だ」

「タキC…」

「ワタシがチチから受け継いだのはカイシャというハコではなく、社員や顧客という中身だったんだ。みながワタシを見限ってアニに流れたわけがようやくわかったよ」


今さら何を言う! とツッコミたくてしょうがない台詞のオンパレードですが、それでもずいぶん成長したなタキC……と思うぐらいに初期のコイツは酷かったので、なんかちょっと感慨深いものがあります。いや、それでもまだまだ人としてはやっとスタートラインに立ったレベルなんですけどね……。

世界名作劇場の悪役ばりの改心っぷりを見せたところで、タキCはようやく自分を奮い立たせ、兄貴と戦う決意を固めます。

「…だ、大丈夫だよ、タキC!」

悲しそうなタキCをあたしは必死になって励ます。

「悪いところがわかったならこれから直せばいいの。それから挽回して、おニイさんのもとにいっちゃったヒトたちを引き戻すように努力しよう!」

「ありがとう…これもキミがパソコンを間違えて持っていってくれたおかげだな。最初はアニが仕向けたスパイかと心配したがさすがに、あんなにうまい赤飯を炊いてくれるスパイはいないだろうな。パソコンのカバンを取り間違えるなんて物語の中だけのハナシかと思っていたがな」

「そのことは、もう忘れてよー!」

「ああ、わかった。ありがとう」

タキCの手があたしの髪をくしゃっとしながら、アタマを撫でていった。


はい、もうこの部分は単なるノロケなのでさっさと飛ばして次に行きたいところなのですが、いちおう誰も覚えていないと思われる「スパイ」の伏線を拾っているのは注目したいところ。とはいえ、ぜんぜんたいした伏線ではなかったので拍子抜けですけど。

なお、最後の「髪をくしゃっ」というのは、女性がされると嬉しいスキンシップ第1位(僕調べ)である鉄板の愛情表現なわけですが、当然誰がやってもいいわけではないので注意が必要です。

ヒトとのつながりの大事さを知ったタキCは、それからよく出かけるようになった。社員との交流を大事にし始めたみたい。

「じゃあ、出かけてくる」

「うん、行ってらっしゃい!」

「わんっ!」

「ユキチもタキCに、がんばれ! だって!」

「ああ、がんばるよ」

タキCは一生懸命がんばったけど、やっぱりおニイさんの方へと流れるヒトはまだ多いみたい。

「…ふう…」

「タキC、疲れてるの?」

「もうすぐケッカが出てしまうからな」

「どういう…こと?」


こんな頑張るタキCはタキCじゃない! と言いたいところですが、逆に考えれば今まで知り合ったばかりの女性の部屋に転がり込み、出社もせずにすべての業務をPCで済ませていたことが社長としてありえないわけで、決して現在のタキCが立派なわけではありません。そこを勘違いしてはいけないのです。

そして気になるのはタキCの「結果」という言葉ですが……。


「五日後に、株主総会があるんだ。ワタシのカイシャの株は、もうかなりの割合をアニに所有されてしまっている。アニが大株主となってしまえばワタシを退陣させられる

「ええっ!」

「ワタシの味方をしてくれる株主もいるが…」

「タキC…」

「心配しなくても、大丈夫だ。最後まであがいてみせる」

「大丈夫だよ、タキCはこんなにがんばってるもの! みんながタキCを助けてくれるって信じるから!」

「ああ、ワタシもそう願うことにする」

生まれ変わったタキCに、みんな、力を貸してあげて…。

あたしは心の底から、そう祈った。


何だかRPGのラスボス戦みたいな空気が漂ってきましたが、どうやら話の流れ的にもこの株主総会が最後のエピソードとなりそうな予感がします。

そしてもう主人公とタキCの二人はこの時点で完全に出来上がってしまっているので、二人の仲については今後崩れるようなことはなさそうですね。とてもつまんないです。

もっとこう、株主総会で退陣させられたタキCを見限った主人公がタキCの兄貴に乗り換えるとかしたら、これまでの歯がゆい展開をすべて吹き飛ばす神シナリオになるんじゃないかと思うのですけど。


そんなこんなで何度も同じこと書いてますけど、今度こそ本当の本当に佳境です。

マルコ
カフェオレ・ライターのforkN出張エッセイ
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