【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

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◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束

◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束    ――Scene Player:堂本 道久

GM:次のシーン。シーンプレイヤーは道久だ。
道久:おうよ!
GM:夜遅くも近い頃、椿女との訓練を終えた君は河川敷の高架下に向かっている。
道久:アヤノを待たせないように急ぐ。待ってるかな……アヤノ。
GM:道久が待ち合わせの場所に着くと、まだアヤノはギターを弾いているね。
道久:わり、わりぃ、遅れちまった。
アヤノ:大丈夫っすよ。全然……待ってなんかいないっす。
GM:そう言うアヤノの顔は無理して作り笑いをしているようにも見える。
道久:作り笑いをするアヤノのほっぺをつまむぜ。
アヤノ:いはいれすー、やめひぇくりゃはい。
GM:アヤノは君の手を掴もうとした時、顔を痛みに歪めて声を上げる。
アヤノ:痛ッ……!
道久:どうした!? 見せてみろ――って言ってアヤノの手をそっと取る。
GM:アヤノの左手の指の皮がめくれて、肉が切れている。その傷からは今も血が滲み出しているよ。
道久:こんなになるまで我慢して練習してたのか!
アヤノ:うん……。さっき練習してたら、何かを掴みかけたっす……それで――。
道久:それでこんなムチャしたってのか?
GM:道久が聞くと、申し訳なさそうにアヤノは小さく頷く。責められてると思ってるのかもね。
道久:責めてなんかいないのに。なら、ニッコリ笑って言うぜ。なぁ、アヤノ。俺にもその“掴みかけた”って演奏を聞かせてくれよ。
アヤノ:うん! もちろんっす!
GM:そう言って破顔すると、アヤノはギターを調弦してから深呼吸すると、しっかりとピックを掴む。そして演奏が始まる。
道久:しっかりと聴くぜ。
GM:その演奏は素人の耳にも凄いということが解る。何段階もレベルが上がっているのが感じられる。
道久:夢中で聴き入っている。……なんだ、これ……すげぇ……。
GM:演奏が終わった途端。気がつけば道久は無意識のうちに自然と拍手をしている。
道久:これ、スゲーよ……一体、何があったんだ?
アヤノ:ここで道久くんを待ちながら練習してたら、急にキたっていうか……なんというか……。
道久:急にキたって……スゲーよ。お前、ホントにスゲーよ!
アヤノ:そ、そんなことないっす! あたしなんてまだまだで……。
道久:いや、これで確信した。アヤノには才能がある。
アヤノ:道久くんが聴いてくれるから……一生懸命、練習したっす。そういう道久くんの方はどうなんすか?
道久:俺の方は進展なし。でも、いまにこれ以上ないくらいスゲーのを見せてやっからよ!
アヤノ:楽しみに待ってるっす。
道久:あーあ……これじゃあ、俺、すぐにでも置いてかれちまうな。
アヤノ:ありがとうっす……もう時間も遅いし、道久くんにも聴いてもらえたから、そろそろ帰るっす。
GM:と、アヤノは時計も見ずに言う。  
道久:時間、わかるのか?
アヤノ:ずっとここで練習してたから、通る電車の数とか間隔でわかるようになったっす。
道久:そんなに練習してたんだな……そうか。じゃ、送ってくよ。
アヤノ:道久くん、またここに来てくれるっすか?
道久:あ、それなんだけど……また今日みたいにバイトが入るかもしれないから、遅くなるかもしれない。
アヤノ:待ってるっす……遅くまででも。
GM:そう言ってアヤノは照れくさそうに笑う。そして、ギターをツギハギだらけのボロいソフトケースへと大事そうにしまうよ。
道久:それを見て新しいソフトケースを作ってあげようと決めるぜ。俺、裁縫得意なんで。
GM:了解。では、道久とアヤノが二人仲良く帰っていく背後で電車が通る音が鳴ってシーン終了だ。

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◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感

◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感    ――Scene Player:鷲見津 剛生

GM:剛生をボナが訪ねる会話シーンだ。シーンプレイヤーは剛生。
剛生:了解した。夜頃、俺は執務室で報告をまとめていよう。
ボナ:あいよ。じゃ、アタシは酒でも持っていこうかねぇ。
剛生:事務仕事もちょうど終わった所だ。机を片付けて、ウイスキーグラスを持ってこよう。
ボナ:そのグラスに酒を注ぐとするよ。あのボウヤ、落ちこぼれって聞いてたけど、なかなかどうして、結構やるじゃないか?
剛生:ああ。能力が使えないが、それゆえに筋がいい。が、心配なのはむしろ、椿女の方だ。
ボナ:確かに危なっかしい感じはしたねぇ。
剛生:確かに能力は強い……が、精神面が心配だな。俺はそれを心配してるよ。

 

 ボナが持ってきたウィスキーをロックで煽りながら、遠い目をする剛生。
 そして、グラスを傾け終えると、剛生は決意を込めた瞳で告げる。


剛生:俺は生徒を殺したくない。ウェルスペイン、お前にもサポートして欲しい。
ボナ:ま、報酬分はね。
剛生:ボナにグラトニーとミザリィの資料を渡しておこう。
ボナ:へぇ、随分、敵さんは分かり易いじゃないか。
剛生:マスター・ミザリィ……かつて、奴のせいで俺の生徒が一人死んだ――。
ボナ:それがアンタのトラウマ、ってヤツかい?
剛生:そんなものではない……ただ、死んだその生徒が、もしあの時、俺の言うことを聞いていてくれれば……とは思うことはある。  
ボナ:空になったグラスを卓上に置いてから剛生に言うよ。ま、信頼してくれて良いよ? 金がある間はね。
剛生:そこで握手しようと手を差し出す。
ボナ:アタシもそれに応じるよ。手を掴んで握手をする。
剛生:俺とボナの間に不思議な信頼感が芽生えたところでシーンを終了してくれ。
GM:了解。シーン終了だ。

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◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る

◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る    ――Scene Player:堂本 道久


GM:打って変わって道久のシーン。アヤノを送った道久が自宅に帰るシーンだ。
道久:うし! 時間も遅いみたいだしとっとと帰るぜ。
GM:道久が自宅のアパートに近付くと、運送屋のトラックが来ている。どうやら引越しのようだ。
道久:なんだ? こんな時間に……? とりあえずアパートに戻るけど。
GM:では、ここで椿女が自動登場だ。というわけで椿女は登場をお願いします。
椿女:了解しました。登場します。
GM:道久が自宅のドアの前まで来ると、隣の部屋のドアの前に椿女がぽつんと立っている。
道久:椿女が? 俺ん家の隣に?
GM:そして、トラックから荷物が椿女が前に立っている部屋へと運び込まれていく。
道久:お前、こんな所で何やってるんだ?
椿女:いえ、お家がここだから……。
道久:オレんちの……隣?
椿女:そうなりますね。
GM:どうやら連絡の手違いがあったようで、運送屋が時間帯の指定を間違えたようだ。だからこんな時間に来てるってわけ。
道久:とりあえず、運送屋の作業が終わるまではウチに来れば? 風邪を引くような季節じゃないけど……。
椿女:わたし、風邪は引きません。だって……もう、ずっと凍ってますもん……。

 道久の言葉に、凍りついたような笑みと共に応える椿女。
 それを目の当たりにした道久は、心の中に言いようのないざわめきを感じる。  


道久:なんだよ、その態度。せっかく人が優しくしてやってるのにさ!
椿女:すみません。怒らせるつもりはないんですが……わたし、よく分からないので……。
道久:分からないって……俺たち、さっきまで普通に話せてたじゃないか。
椿女:あれは、習ってたことですから……。
道久:なんだよ、それ……それじゃ、まるで――。
椿女:いいんですよ、先輩。自分でも分かってますから。
道久:冷蔵庫から麦茶を出してから椿女に言う。テーブルに置いとくぞ、喉が渇いたら、勝手に上がれよ。
椿女:先輩と麦茶を黙って見てます。
道久:不機嫌そうにドアをバタンと閉めて帰る。
椿女:閉まるドアを見ながら言います。いいな、何かに怒れる人って……。
  
 音を立てて閉じられたドアを見つめながら、どこか物悲しげに呟く椿女。
 そして、ドアの向こうでは道久が苛立ち混じりに呟いていた。

道久:なんだよ……あれじゃまるで人形じゃないか……

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◆ Middle 07 ◆ ロケットの中の戦友

◆ Middle 07 ◆ ロケットの中の戦友    ――Scene Player:ボナ・ドロル


GM:次のシーンプレイヤーはボナ。時系列は剛生と酒を飲んだ後。ボナがホテルで過去を回想し、モノローグを語るシーンだ。
ボナ:あいよ。ベッドに寝っ転がって胸元のロケットを開く。するとかつて喪った戦友たちと一緒の写真が入っているってわけさね。
GM:了解した。写真を見ながら物思いにふけるわけだね。
ボナ:――なぁ、お前ら……聞いてくれよ。アタシに子供が死なないようにサポートしろってさ……。そう写真に語りかける。
GM:ボナの心にかつての戦友たちの顔がありありと思い出される。
ボナ:傭兵ってのは守る仕事じゃないってのに……笑っちまうだろ? 過去を回想しながら、なおも写真にそう語りかけるよ。

 

 気付けばボナは自らの過去に思いを馳せていた。やがてそれは子供として過ごした時へと至る。
 浮浪児だった幼少期。とある国の路地でパンを盗み、泥水をすすって同じ浮浪児たちと肩を寄せ合って必死に生きていた頃――。
 弟分の浮浪児が病で死の淵をさまようのを、ただ見ていることしかできなかった幼少のボナ。


ボナ:さっき剛生がしてたのと同じような遠い目をしながら更に思い出していくよ。

 

 ――卵が食べたい。死の淵をさまよう弟分のささやかな頼みを聞いたボナは店へと走り出した。
 卵を盗むことに成功するも、やがて追いつかれ、何度も殴られるボナ。そして、割れる卵――。
 割れた卵を必死ですくい、ボロボロになりながら、ボナはほんの僅かに残った卵を持って戻る。
 だが、弟分はボナが戻る少し前に事切れていた。


ボナ:一度ため息をついてから、我に返ってロケットをパチンと閉める。シーン終了で頼むよ。

本塚届
作家:加々見繍
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