【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

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◆ Middle 03 ◆ 放課後×埠頭×デート中?

Middle 03 放課後×埠頭×デート中? ――Scene Player:道本 椿女


 人気の無い埠頭の倉庫街。
 椿女は一緒に下校する道久を連れてこの場所にやってきていた。
 

椿女:こっちです。堂本さん。
道久:こっちって? どこに行って、何を……? それに、こんな人気の無いところで何の用? もしかして……
椿女:まぁ、人がいるとマズいじゃないですか。
道久:マズいって、何を?
椿女:倉庫街を歩いて行った先で、奥まった所にある倉庫の一つを指さします。ここです、堂本さん。
剛生:では、ここで登場しよう。倉庫のスライドドアを開けると俺が立っている。
ボナ:アタシも登場だ。剛生の近くにでも立っていようかねえ。
椿女:道本椿女、戻りました。
剛生:うむ、この少年がドードーか。
ボナ:おや? この子が例の出来損ないかい? 随分カワイイ顔してるじゃないか。 
道久:……あれ? 道本さん……? オレは今日、何でここに呼ばれたんでしょうか?
椿女:え? 訓練の為ですよ? UGNエージェントとしての。
道久:訓練ってなんの?
椿女:貴方の能力の。
道久:いきなり彼女できるかも? とか、すげぇ浮かれてたのにぃ~!!
椿女:どうしたんですか?
道久:ついにモテ期到来で……いきなり彼女ができて、あわよくば更にその先も――って展開はなしかよ……そう言って血の涙を流す。
ボナ:それを見て大笑いしてるよ。
剛生:俺は鷲見津 剛生。コードネームはオールドイーグル。君の教官を担当する。
道久:俺、今日は用事があるんだけど、早く帰れる?
剛生:なら、笑ってこう言おう。すべては君次第だ。
道久:お、俺……今日、本当に帰れるのぉ……
GM:では、訓練開始するよ。剛生、君はとある物を操作するリモコンを持っていると思ってくれ。
剛生:リモコン? 何に対応しているんだ?
GM:訓練用の移動式砲台だ。これを仮想敵として戦闘訓練を行う――というわけ。砲台のダイスはGMが振るよ。
剛生:了解した。では、演出上では俺が操作しているということにしよう。
GM:それでいい。さあ、戦闘開始だ。

第一ラウンド

戦闘配置図01.png

 

GM:敵は移動式砲台が二台。参加するのは道久と椿女だ。
道久:……おうっ!
椿女:了解しました。
GM:(全員のイニシアチブを確認する)砲台×2からの行動だね。標的は道久だ。(ダイスを振る)
道久:いきなりかよっ!?(ダイスを振る)あっぶねぇ……ギリで回避判定は成功だぜ。
GM:道久に向けて砲塔から訓練用のゴム弾が発射される。


 凄まじい速度――実弾さながらの弾速で発射される訓練用のゴム弾。
 だが、道久は咄嗟に飛び退いてそれを寸前でかわすことに成功。
 そして、彼の背後に置かれていたドラム缶にゴム弾が当たると、鉄製のドラム缶は音を立てて大きく変形する。


道久:こ、これ、当たったらタダじゃ済まないんじゃ!?
剛生:いい動きだ。
道久:ちょ、ホントに訓練用のゴム弾だよな!?
剛生:軽く殺傷力は上げてある。それくらいの方が緊張感があっていいだろう?
GM:では、二台目の攻撃だ。今度の標的は椿女。(ダイスを振る)
椿女:了解。回避を試みます。(ダイスを振る)――失敗。そちらの攻撃が命中しました。
GM:よし。ダメージダイスを振るよ。(ダイスを振る)
椿女:ここでエフェクト《氷雪の守護》を使用し、わたしに適用される予定のダメージを軽減します。


 椿女の左目が輝き、彼女の周囲に極寒の冷気が発生する。
 辺りの何もかもが動きを止めていくほどの冷気は椿女の前方に収束して氷雪となる。
 そして、高速で飛来するゴム弾は氷雪に阻まれ、全てが椿女に届くことなく動きを止めた。


椿女:(ダイスを振る)ダイス目が走りました。おかげでノーダメージです。
道久:おおっ! すげぇ!
ボナ:流石はエリート――ってトコロかい。
椿女:鷲見津教官、これ、当たったら痛いです。
剛生:そのくらいなら、さばけると思っている。
ボナ:アタシは相変わらず遠巻きにその様子を見ながら、腹を抱えて笑っているさね。
椿女:次はわたしの攻撃のターンです。標的は砲台A。使用するエフェクトはマイナーアクションで《氷の加護》。メジャーアクションで、《コンセントレイト:サラマンダー》、《ブリザードブレス》。(ダイスを振る)
GM:砲台は回避を試みる。(ダイスを振る)回避成功だ。
椿女:避けられましたか。
道久:よし! 次は俺のターンだな! 使えるエフェクトは……え? 無い?
GM:その通り。君は《炎の理》というエフェクトを持ってるんだけど、それは戦闘には使用できない演出専用のエフェクトなんだ。
剛生:イージーエフェクトというやつだな。
ボナ:ハハッ、流石は出来損ない”――ってトコロかい。
道久:ってことは……エフェクトも何もないけど、とりあえず砲台Aを素手で殴るぜ……うぉらぁっ!(ダイスを振る)
GM:回避を試みる。(ダイスを振る)道久の攻撃が命中だ。
道久:おっし! ダメージダイスだ!(ダイスを振る)
GM:今の攻撃で砲台AのHPはゼロになった。おめでとう。撃破成功だ。
道久:やったぜ! おっさん!
剛生:……おっさんと言うな。

第二ラウンド

戦闘配置図02.png

GM:砲台の攻撃だ。標的は道久。(ダイスを振る)
道久:(ダイスを振る)……やべ、避けられねぇ!?
椿女:《氷雪の守護》を先輩に対して使用します。(ダイスを振る)ダメージを半分まで減らしました。
道久:つ、椿女ちゃん? もしかしてやっぱりオレのことを……
椿女:(無視して)……堂本さん。……トドメをお願いします。
道久:お、おうっ! 相変わらず素手だけで攻撃だ!(笑)(ダイスを振る)
GM:(ダイスを振る)命中だ。道久の攻撃で砲台Bも倒された。
剛生:ほう……
ボナ:おやおや、二台とも全部素手で、しかも一撃で倒しちまうとはねぇ。
剛生:手を叩きつつ話しかけよう。上出来だな。これだけ成果を出せば良いだろう。
道久:へへっ!
剛生:そうだ、GM。道久の為に防具を調達しておきたいんだが?
道久:おっさ……いや、鷲見津教官。防具の方もありがたいんスけど……能力の開発はやって貰えないんですか?
剛生:ドードー……お前のポテンシャルは低くはない。能力開発のほうは日を改めて行なう。
道久:そうなんすか? ま、いいか。
剛生:というわけで<調達>判定だ。(ダイスを振る)……成功だ。
GM:では、剛生。君は<UGNボディアーマー>を入手したよ。
剛生:これを持っておけ、ドードー。
道久:教官からそれを受け取りつつ、遠巻きに椿女の方を見るぜ……能力が使えて羨ましいよなぁ……とか思ってる。
椿女:わたしの方はわたしの方で、道久の方をちらりと見ながら言います。能力を使わずに訓練を終わらせたほどの人材――使える、と。

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◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束

◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束    ――Scene Player:堂本 道久

GM:次のシーン。シーンプレイヤーは道久だ。
道久:おうよ!
GM:夜遅くも近い頃、椿女との訓練を終えた君は河川敷の高架下に向かっている。
道久:アヤノを待たせないように急ぐ。待ってるかな……アヤノ。
GM:道久が待ち合わせの場所に着くと、まだアヤノはギターを弾いているね。
道久:わり、わりぃ、遅れちまった。
アヤノ:大丈夫っすよ。全然……待ってなんかいないっす。
GM:そう言うアヤノの顔は無理して作り笑いをしているようにも見える。
道久:作り笑いをするアヤノのほっぺをつまむぜ。
アヤノ:いはいれすー、やめひぇくりゃはい。
GM:アヤノは君の手を掴もうとした時、顔を痛みに歪めて声を上げる。
アヤノ:痛ッ……!
道久:どうした!? 見せてみろ――って言ってアヤノの手をそっと取る。
GM:アヤノの左手の指の皮がめくれて、肉が切れている。その傷からは今も血が滲み出しているよ。
道久:こんなになるまで我慢して練習してたのか!
アヤノ:うん……。さっき練習してたら、何かを掴みかけたっす……それで――。
道久:それでこんなムチャしたってのか?
GM:道久が聞くと、申し訳なさそうにアヤノは小さく頷く。責められてると思ってるのかもね。
道久:責めてなんかいないのに。なら、ニッコリ笑って言うぜ。なぁ、アヤノ。俺にもその“掴みかけた”って演奏を聞かせてくれよ。
アヤノ:うん! もちろんっす!
GM:そう言って破顔すると、アヤノはギターを調弦してから深呼吸すると、しっかりとピックを掴む。そして演奏が始まる。
道久:しっかりと聴くぜ。
GM:その演奏は素人の耳にも凄いということが解る。何段階もレベルが上がっているのが感じられる。
道久:夢中で聴き入っている。……なんだ、これ……すげぇ……。
GM:演奏が終わった途端。気がつけば道久は無意識のうちに自然と拍手をしている。
道久:これ、スゲーよ……一体、何があったんだ?
アヤノ:ここで道久くんを待ちながら練習してたら、急にキたっていうか……なんというか……。
道久:急にキたって……スゲーよ。お前、ホントにスゲーよ!
アヤノ:そ、そんなことないっす! あたしなんてまだまだで……。
道久:いや、これで確信した。アヤノには才能がある。
アヤノ:道久くんが聴いてくれるから……一生懸命、練習したっす。そういう道久くんの方はどうなんすか?
道久:俺の方は進展なし。でも、いまにこれ以上ないくらいスゲーのを見せてやっからよ!
アヤノ:楽しみに待ってるっす。
道久:あーあ……これじゃあ、俺、すぐにでも置いてかれちまうな。
アヤノ:ありがとうっす……もう時間も遅いし、道久くんにも聴いてもらえたから、そろそろ帰るっす。
GM:と、アヤノは時計も見ずに言う。  
道久:時間、わかるのか?
アヤノ:ずっとここで練習してたから、通る電車の数とか間隔でわかるようになったっす。
道久:そんなに練習してたんだな……そうか。じゃ、送ってくよ。
アヤノ:道久くん、またここに来てくれるっすか?
道久:あ、それなんだけど……また今日みたいにバイトが入るかもしれないから、遅くなるかもしれない。
アヤノ:待ってるっす……遅くまででも。
GM:そう言ってアヤノは照れくさそうに笑う。そして、ギターをツギハギだらけのボロいソフトケースへと大事そうにしまうよ。
道久:それを見て新しいソフトケースを作ってあげようと決めるぜ。俺、裁縫得意なんで。
GM:了解。では、道久とアヤノが二人仲良く帰っていく背後で電車が通る音が鳴ってシーン終了だ。

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◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感

◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感    ――Scene Player:鷲見津 剛生

GM:剛生をボナが訪ねる会話シーンだ。シーンプレイヤーは剛生。
剛生:了解した。夜頃、俺は執務室で報告をまとめていよう。
ボナ:あいよ。じゃ、アタシは酒でも持っていこうかねぇ。
剛生:事務仕事もちょうど終わった所だ。机を片付けて、ウイスキーグラスを持ってこよう。
ボナ:そのグラスに酒を注ぐとするよ。あのボウヤ、落ちこぼれって聞いてたけど、なかなかどうして、結構やるじゃないか?
剛生:ああ。能力が使えないが、それゆえに筋がいい。が、心配なのはむしろ、椿女の方だ。
ボナ:確かに危なっかしい感じはしたねぇ。
剛生:確かに能力は強い……が、精神面が心配だな。俺はそれを心配してるよ。

 

 ボナが持ってきたウィスキーをロックで煽りながら、遠い目をする剛生。
 そして、グラスを傾け終えると、剛生は決意を込めた瞳で告げる。


剛生:俺は生徒を殺したくない。ウェルスペイン、お前にもサポートして欲しい。
ボナ:ま、報酬分はね。
剛生:ボナにグラトニーとミザリィの資料を渡しておこう。
ボナ:へぇ、随分、敵さんは分かり易いじゃないか。
剛生:マスター・ミザリィ……かつて、奴のせいで俺の生徒が一人死んだ――。
ボナ:それがアンタのトラウマ、ってヤツかい?
剛生:そんなものではない……ただ、死んだその生徒が、もしあの時、俺の言うことを聞いていてくれれば……とは思うことはある。  
ボナ:空になったグラスを卓上に置いてから剛生に言うよ。ま、信頼してくれて良いよ? 金がある間はね。
剛生:そこで握手しようと手を差し出す。
ボナ:アタシもそれに応じるよ。手を掴んで握手をする。
剛生:俺とボナの間に不思議な信頼感が芽生えたところでシーンを終了してくれ。
GM:了解。シーン終了だ。

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◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る

◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る    ――Scene Player:堂本 道久


GM:打って変わって道久のシーン。アヤノを送った道久が自宅に帰るシーンだ。
道久:うし! 時間も遅いみたいだしとっとと帰るぜ。
GM:道久が自宅のアパートに近付くと、運送屋のトラックが来ている。どうやら引越しのようだ。
道久:なんだ? こんな時間に……? とりあえずアパートに戻るけど。
GM:では、ここで椿女が自動登場だ。というわけで椿女は登場をお願いします。
椿女:了解しました。登場します。
GM:道久が自宅のドアの前まで来ると、隣の部屋のドアの前に椿女がぽつんと立っている。
道久:椿女が? 俺ん家の隣に?
GM:そして、トラックから荷物が椿女が前に立っている部屋へと運び込まれていく。
道久:お前、こんな所で何やってるんだ?
椿女:いえ、お家がここだから……。
道久:オレんちの……隣?
椿女:そうなりますね。
GM:どうやら連絡の手違いがあったようで、運送屋が時間帯の指定を間違えたようだ。だからこんな時間に来てるってわけ。
道久:とりあえず、運送屋の作業が終わるまではウチに来れば? 風邪を引くような季節じゃないけど……。
椿女:わたし、風邪は引きません。だって……もう、ずっと凍ってますもん……。

 道久の言葉に、凍りついたような笑みと共に応える椿女。
 それを目の当たりにした道久は、心の中に言いようのないざわめきを感じる。  


道久:なんだよ、その態度。せっかく人が優しくしてやってるのにさ!
椿女:すみません。怒らせるつもりはないんですが……わたし、よく分からないので……。
道久:分からないって……俺たち、さっきまで普通に話せてたじゃないか。
椿女:あれは、習ってたことですから……。
道久:なんだよ、それ……それじゃ、まるで――。
椿女:いいんですよ、先輩。自分でも分かってますから。
道久:冷蔵庫から麦茶を出してから椿女に言う。テーブルに置いとくぞ、喉が渇いたら、勝手に上がれよ。
椿女:先輩と麦茶を黙って見てます。
道久:不機嫌そうにドアをバタンと閉めて帰る。
椿女:閉まるドアを見ながら言います。いいな、何かに怒れる人って……。
  
 音を立てて閉じられたドアを見つめながら、どこか物悲しげに呟く椿女。
 そして、ドアの向こうでは道久が苛立ち混じりに呟いていた。

道久:なんだよ……あれじゃまるで人形じゃないか……

本塚届
作家:加々見繍
【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話
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