【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

Introduction( 1 / 2 )

はじめに


 はじめに
 
 こんにちは。このリプレイを執筆しました加々見 繍です。
 さて、みなさんはTRPGという遊びをご存知でしょうか?
 現在では多くの人に親しまれているコンピュータゲームのRPGの元になったゲームで、電源も機械も使わず、人間同士が集まって一緒にプレイするという特徴的なゲームです。
 参加者はゲームマスターという進行役が表現する世界で、自らが演じるキャラクターとなってストーリーを進めていきます。
 そして、一番の特徴は決まったストーリーがないこと。もちろん、ある程度まで決まったシナリオがありますが、最終的にどうなるかは参加者の行動しだいなのです。
 では、どのようにして行動が決定されるのか? それは、参加するプレイヤー一人ひとりの発言によって決まり、そうした言葉の積み重ねが新しい未来を作っていくのです。
 今回、プレイされたゲーム『ダブル・クロス』もそんなTRPGの一つ。私たちの住むこの世界と、よく似ていながらもどこか違った世界を舞台に繰り広げられる超人たちのドラマを描いた作品で、十年前に始めて登場して以来ずっと、多くのプレイヤーに親しまれてきました。
 是非、ページをめくってみてください。変貌してしまった世界での、ハラハラドキドキ、興奮と感動のドラマが貴方を待っています。
 そして、あわよくば、このリプレイを読み終えてくださった貴方が、TRPGを好きになってくれることを願って。
 
 2011年10月7日 加々見 繍

Introduction( 2 / 2 )

スタッフ

ゲームマスター:加々見繍

『キャラクター紹介』 
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○堂本 道久(ドウモト ミチヒサ) 
 (PL:トリクラ)(CV:トリクラ) 
 :能力を上手くコントロールできず、飛べない鳥“ドードー”と揶揄される少年。17歳。 
  炎を操る能力者だが、その力は「体温を右手に集中させる」程度のものでしかない。 
  しかし、出来損ないと言われても、諦めずに努力を続ける強い心を持つ。 

○道本 椿女(ドウモト ツバメ) 
 (PL:龍之介)(CV:かんな) 
 :熱を自在に操る能力者の中でも、特に冷気の扱いに秀でた少女。15歳。 
  能力覚醒の原因となった事件の心的外傷により、心の一部を凍りつかせてしまっている。 
  現在は、自らを保護してくれた叔父が所属する組織のエージェントとして活動している。 

○鷲見津 剛生(スミツ ゴウショウ) 
 (PL:本塚届)(CV:本塚届) 
 :かつてはUGN支部長として名将と呼ばれた男。40歳。 
  ある理由から現役を退き、現在は教官として新人教育を行なっている。 
  天才的な戦術考察力、指揮能力を持ち、何時も正義を貫こうとする好漢である。 

○ボナ・ドロル 
 (PL:BOW)(CV:天酒) 
 :金次第でなんでも請け負うフリーランスの女傭兵。28歳。 
  うらぶれたスラム街で、孤児として幼少時代を過ごした。 
  実力もわきまえず、現実も見ずに綺麗事だけを言う奴らは大嫌い。 

○神崎 アヤノ(カンザキ アヤノ) 
 (CV:千里あきら) 
 :電車の走る高架下の河川敷で、毎日、ギターと歌の練習に励む女子高生。17歳。 
  若干、自分に自信の無いところがあり悩むことも多い。 
  しかし、それでもひたむきに努力を続ける努力家。 

○榊 ユキ(サカキ ユキ) 
 (CV:はるカイロン) 
 :副官として、メディカルスタッフとして支部を支える女性。 
  肉体だけでなく、心のケアも担当している。 
  包容力があり、芯も強く、母性に溢れた優しい性格。 

○霧谷 雄吾(キリタニ ユウゴ) 
 (CV:真倉なやみ) 
 :UGN日本支部長。 
  穏やかで冷静な物腰の男だが、心に秘めた信念は人一倍固く熱い。 
  外交的手腕と判断能力が高く、数々の難局を切り抜けてきた。 

○マスター・ミザリィ 
 (CV:つくね) 
 :実年齢よりも遥かに大人びた妖艶な魅力を醸し出す女子高生。 
  精神的な攻撃を得意としており、相手の心の隙を巧みに突いて、 
  絶望の淵へと追いやるのが大好きという、とても嗜虐的な性格。 

○マスター・グラトニー 
 (CV:やこん) 
 :高校生ほどの少年だが、世界の闇で暗躍するFHで、最強の一角を担う男。 
  その能力は、他者の能力を喰らって、自らのものとすること。 
  自らの力に絶対の自信を持っており、貪欲に目的を達成しようとする。 
ガヤ(友情出演)
CV:龍之介,BOW,椋鳥
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『スタッフ』
企画・総指揮:本塚 届
GM・リプレイ執筆:加々見 繍
PV制作監督:トリクラ
テキスト資料作成:BOW
効果音協力:黒須太一
編集サポート:Q
挿入歌「バーニング ドードー」作曲:安全太郎from眼鏡不要
表紙・プレイヤーキャライラスト:西瓜割
挿絵:小国拓弥 
キャラクター紹介レイアウト:空上流一

※この作品はフィクションです。登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。
※当リプレイは株式会社F.E.A.R社とは関係のないファン作品です。
(C)2009 Shunsaku Yano/FarEast Amusement Research Co.,ltd (C)2009 FujimiShobo , Printed in Japan

PrePlay( 1 / 11 )

◆ Preplay01 ◆ セッションの始まり1

◆ Preplay01 ◆セッションの始まり

 
 七月某日、夜の九時頃。TRPGを遊ぶべく五人のメンバーが集まっていた。と言っても、私――加々見 繍は部屋に一人でいる状態でPCの前に座っていた。
 それもそのはず、今回は多人数でのボイスチャットを行うツールである『Skype』とダイス機能のついたチャットを併用することで、遠隔地の相手とリアルタイムでTRPGをやってみようという試みだったりするのだ。
 ということもあってか、今回の参加者は一人を除いて実際に会ったことはないという珍しい顔ぶれとなっている。直接集まってプレイするのが当たり前だったTRPGというゲーム。
 そのゲームがこうした状況でどんな風に進んでいくのか、これもまた一つの楽しみだ。
 それでは、今回の参加者を紹介していこう。


 
 加々見 繍(かがみ しゅう)♂
 大学在学中から活動するプロライター。大学在学中からサークルやコンベンション等々でTRPGをプレイしてきた。
 TRPG関連では別名で富士見書房さんの『アサルトエンジン』というゲームの公式シナリオを書いているのでよろしく。
 TRPG暦は本格的に始めて約五年。今回はゲームの進行役であるゲームマスター(GM)を担当する。
 

 

 トリクラ(とりくら)♂
 音声投稿サイト『こえ部』で活動する印刷屋さん。TRPGはたまにやるだけだが、大学時代からやっていたらしい。
 声の演技が上手く、年齢を感じさせない少年声が出せる人。実はGMの大学の先輩だったことが判明した。
 リプレイでは、出来損ないながら、それにもめげないオーヴァード――堂本道久を担当する。
 

 

 龍之介(りゅうのすけ)♂
 トリクラさんと同じく『こえ部』に投稿していたことがきっかけで出会ったTRPGプレイヤー。職業は整体師。
 TRPG暦数年の中堅プレイヤー。現在は『トーキョーN◎VA』というゲームをメインにプレイしている。
 リプレイでは、クールビューティなエリートオーヴァード――道本椿女を担当。
 

 

 本塚届(もとづか とどけ)♂
 GMの高校時代の先輩。当時から付き合いがあり、GMの勧めでTRPGを始めた人で、現職はプログラマ。
 TRPG暦二年の若手。まだ二十代だが、四十代とか五十代とか言われるオッサン声を出す。
 リプレイでは、歴戦の古参兵たる名指揮官にして名教官というオーヴァード――鷲見津剛生を担当している。
 

 

 BOW(ばう)♂
 本塚さん繋がりで出会った古参のTRPGプレイヤー。コンピュータ畑にお勤めの方で、ある意味本塚さんの同業者。
 TRPG暦二十年以上のキャリアを持ち、一緒にTRPGをやる度に名脇役としての存在感を見せつけてくれる人。
 リプレイでは、拝金主義でプロフェッショナル、そして姉御肌の傭兵――ボナ・ドロルを担当。

 


 
加々見 繍(以下=GM):こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いします。
本塚届(以下=本塚):よろしく頼む。
龍之介(以下=龍之介):よろしくお願いします。
トリクラ(以下=トリクラ):というわけでよろしくな! 加々見さん!
BOW(以下=BOW):よろしくね。加々見くん。
GM:はい。それでは、早速、セッションを始めたいと思います。
トリクラ:おう! どんとこい!
GM:今回プレイするシステム――即ち、使用するルールは『ダブル・クロス』というゲームです。
トリクラ:『ダブル・クロス』? アクセサリーか何か?(笑)
BOW:確かに、十字架が二つ組み合わさったアクセサリーで『ダブル・クロス』というのがありますね。(笑)
GM:アクセの名前にも同じのがありますが、このゲームの文脈では『裏切り者』という意味で使われています。
トリクラ:裏切り者?
GM:はい。最初から説明しますと、このゲームの舞台は現代。それこそ、私たちが生活しているこの世界と殆ど変わりません。
龍之介:なるほど。でも、『殆ど』ということは、どこか違いがあるんでしょうか?
GM:その通り。この世界には“レネゲイド・ウイルス”というウイルスがとある事件で世界中に蔓延しました。
本塚:ウイルスが!? 大丈夫なのか!?
GM:大丈夫じゃありません。(笑) このウイルスに感染した人間は超常の能力に目覚めるんです。
BOW:超常の能力? 超能力とかそういうのってこと?
GM:そうです。ある者は獣の姿になって怪力を振るい、ある者は電撃を放ち、またある者は高熱を操る――。
本塚:すげえな。
GM:そうした異能者のことをオーヴァードと呼びます。
本塚:でもよ、だったらそうした異能者――オーヴァードだっけか? それにみんななりたがるんじゃ。
GM:確かにそうかもしれませんね。でも、オーヴァードは利点ばかりではないんです。
本塚:というと?
GM:異能を与えるレネゲイドは感染者に強烈な衝動を喚起させます――破壊、殺戮、加虐、飢餓、吸血、等々。
本塚:そうなるとどうなるんだ?
GM:レネゲイドの起こす衝動に耐えられなくなると、衝動の赴くままにインモラルな行為を繰り返す怪物になってしまいます。
BOW:インモラルとは。(笑)また危険な。
GM:そうした怪物のことをジャームと呼び、このゲームの代表的な敵となります。
トリクラ:なるほど。それは分かった。で、何でタイトルが『ダブル・クロス』なんだ?
GM:オーヴァードになってしまった者は人間からは化け物扱いされます。でも、人の心は失っていない。
トリクラ:ほうほう。それで?
GM:だからジャーム等々の起こす事件から、異能の力で人間たちを守ろうとする。
トリクラ:なるほどな。異能の力で暴れる怪物を倒すにはオーヴァードのような異能者が必要なのか。
GM:ええ。でも、それゆえにジャームからは自分たちと同類ながら自分たちと敵対する者――裏切り者とみなされます。
トリクラ:確かに、連中からすればそう見えるのかもな。
GM:人間からも裏切り者、怪物からも裏切り者として見られる異能者が人と怪物の狭間で葛藤するからこそ『ダブル・クロス」。
トリクラ:ありがとう。よく分かったよ。それで、具体的に俺たちはこのゲームで何をすればいいんだ?
GM:それをこれから説明しますので、もう少々、解説にお付き合いください。
トリクラ:分かったよ。よろしく頼む。
GM:この世界にはユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク(UGN)という組織があります。
龍之介:その組織は何の組織なんですか?
GM:レネゲイドによる世界の混乱を防ぐ為に創設された超国家規模の組織です。
龍之介:超国家規模!? またすごい規模の組織が出てきましたね。
GM:レネゲイドのことが公表されれば世界は混乱します。だから、この組織が持つ影響力で世界規模の事実隠蔽を行っています。
龍之介:他には何かやってることはあるんですか?
GM:覚醒したオーヴァードの保護や育成。そして、世界の安定を守ることが究極目的なので、ジャームと戦っていたりします。
龍之介:なるほど。基本的には正義側の組織なんですね。
GM:簡単に言えばそうですね。最初のうちは概ねそう思っててもらっても構いません。
龍之介:了解しました。説明を続けてください。
GM:一方、せっかく超常の異能を手に入れたんだから、自分の欲望の赴くままに使おうぜ! という組織も存在します。
BOW:やっぱり出てくるよね。そういう人たち。(笑)
GM:その組織はファルスハーツ(FH)といい、国際的テロ組織として遥か以前から社会の裏で暗躍してきました。
BOW:ファルスハーツ、ね。メモメモ……覚えたよ。
GM:FHに属する悪のオーヴァードと戦うのもUGNの大事な役目です。
BOW:やっぱり、欲望の赴くままに異能の力を使うってことは、悪のオーヴァードになるってことなのかい?
GM:そうなる可能性が高いというだけで、この組織に属している人間でプレイすることもできますよ。
BOW:なるほど。興味が湧いたんで、今度詳しく話してくれ。
GM:承知しました。一言で言えば、この組織で正義側に立つ者はダークヒーローのような感じになりますね。
本塚:二つの巨大な組織があることは理解した。で、さっきのトリクラさんの質問なんだが、俺たちはどうすれば?
GM:それを今から説明します。
本塚:遮ってすまんかった。
GM:このゲームでは正義側の組織(UGN)か悪の秘密結社(FH)またはどこにも属さないオーヴァードを作ります。
トリクラ:ほうほう。続けてくれ。
GM:そして、作ったオーヴァードのキャラクターとなって、ストーリーを進めていきます。
トリクラ:なるほど。今回はどっちの組織でプレイするんだ?
GM:今回はUGN側でプレイしてもらうことになります。
トリクラ:了解。早速、キャラクター作成か?
GM:今回はシナリオ上で必要な設定があるので、こちらで作成済みのキャラクターを用意しました。
トリクラ:なるほど。その中から選ぶってことだな。
GM:はい。では、これが今回のキャラクターたちです――。


 そう言ってテキストデータを全員に転送するGM。

BOW:これは……ハンドアウトだね。
本塚:ハンドアウト?
GM:今回登場する中で、皆さんが担当するキャラクターであるプレイヤーキャラクター(PC)は四人です。
本塚:なるほど。で、これは?
GM:PCはそれぞれ違った物語上での立ち位置と設定があるので、自分のやりたい役を選んでください。
本塚:了解した。この四つの中から選べばいいんだな。

PrePlay( 2 / 11 )

◆ Preplay01 ◆セッションの始まり 2

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タッグハンドアウト1:出来損ない/エリート―Useless/Giant―
タッグ目的:マスター・グラトニーを倒す

 FH最強の一角と目されるマスタークラスのエージェントが一人――マスター・グラトニー。
 数々の強力なオーヴァードを倒し、その力を喰うことで取り込み、自らを強化し続ける大敵。その敵によってUGNは壊滅的な打撃を被り、更に他のFHセルもこの機に乗じてUGNへと大攻勢を仕掛けてきた。
 かつてないこの危機にUGNは組織随一の傑物を投入するが、戦力不足はいかんともしがたく、相棒として組むことになったのは、史上稀に見る出来損ないのオーヴァード。
 果たして二人はFH最強の一角と目されるほどの大敵に打ち勝つことができるのだろうか?
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本塚:タッグハンドアウト? これは普通のハンドアウトとどう違うんだ?
GM:普通のハンドアウトは一人のキャラクターに対して立ち位置や設定がつくんですが。
本塚:つくんですが?
GM:このタッグハンドアウトはタッグ(二人組)に対して共通の立ち位置と設定をつける為のものなんです。
本塚:ほうほう。要は個人じゃなくて集団につけるハンドアウトってことだな。
GM:その通り。ちなみに、これは私が開発したシステムです。
本塚:なるほど。即ち、加々見くんのオリジナルってことか。これは楽しみだ。
GM:ありがとうございます。で、改めて説明に入ります。
本塚:よろしく頼む。
GM:この二人組は『出来損ない』と『エリート』のタッグです。
トリクラ:出来損ない? というと?
GM:一人は殆ど一般人と変わらない程度の弱い異能しか使えない能力者、そしてもう一人は――。
龍之介:強力な異能を持ったエリートというわけですね。
GM:まさにその通り。そして、二人の共通目的はマスター・グラトニーという最強クラスのオーヴァードを倒すことです。
BOW:出来損ないとエリートが組んでどうなるか――二人の絡みが見ものだねえ。
GM:では、次にこのタッグを構成する一人一人を説明していきましょう。

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プレイヤーキャラクター1:史上稀に見る出来損ない―Useless Overd―
ロイス:神崎アヤノ 感情:友情/劣等感
カヴァー/ワークス:高校生/高校生 Dロイス:????

 史上稀に見る出来損ないのオーヴァード。それが君だ。
 戦闘能力は勿論、単純なレネゲイドコントロールに関しても低レベルなせいで対・ジャームの任務に用いることもできず、
 しかし中途半端に異能を持つせいで一般人としての生活もできない君は、どこからも爪弾きにされていた。
 そんな君は必死の鍛錬の最中に出会った少女――アヤノと友人となり自らの居場所を見つけたが、
 その矢先、強大なFHエージェントが出現したという。そして、君に降る迎撃命令。
 たとえ出来損ないと言えども、君はやっと手に入れた居場所を守る為に戦わなくてはならないようだ。
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GM:突然ですが、このゲームでは異能の種類は「シンドローム」という言葉で表します。
トリクラ:突然だな。(笑)で、それが?
GM:このキャラクターは熱を操る「サラマンダー」というシンドロームの使い手です。
トリクラ:で、その「サラマンダー」ってのの異能者は具体的にどんなことができるんだ?
GM:熱を操って高温、即ち炎を発生されたり、一方で低温で氷を操ることもできます。
BOW:炎と氷の両方を操る能力なんだな。メモメモ……覚えたよ。
GM:ただし、このキャラクターの場合は高熱に特化した能力で、炎の「エフェクト」が専門です。
BOW:エフェクト?
GM:異能の種類が「シンドローム」なら、それに属する個々の能力は「エフェクト」と呼ばれます。
BOW:個々の種類――ね。たとえば?
GM:このキャラクターだったら、小さな炎を出すという能力があるんですが、それがエフェクトです。
トリクラ:この「カヴァー/ワークス」ってのは何なんだ?
GM:カヴァーは表の立場や職業、ワークスというのは本来の職業やそのキャラクターの本質や能力を表す要素ですね。
トリクラ:???
GM:たとえば、カヴァーが学生でワークスが傭兵というものであれば――。
トリクラ:ふむふむ。
GM:表の顔は学生、しかしその正体は凄腕の傭兵なのだ! というキャラクターができます。
トリクラ:なるほど。で、本質や能力ってのだとどうなる?
GM:たとえば、喧嘩番長のようなキャラクターは本来の職業は学生ですけれど、その本質からワークスが格闘家になったりします。

トリクラ:なるほど。よく分かったよ。
GM:それを踏まえて見ると、このキャラクターは表の顔も真の顔もどちらも高校生ということになります。
トリクラ:ちょっと待て、UGNってのは超国家的な秘密組織だろ? そこに普通の高校生がいるものなのか?
GM:オーヴァードは貴重な存在なので、覚醒した者であれば、事件解決の為に無所属の異能者に協力を依頼することがあります。
トリクラ:なるほど。つまり、このキャラクターは高校生だけど、UGNに頼まれて協力するってわけだ。
GM:ええ。他にもUGNが在野のオーヴァードを把握しておくという意味もあります。
BOW:確かに、世界の安定を保とうとする組織なら、把握してたいものだしな。
GM:しかも、このキャラクターの場合は少々、事情がありまして。
トリクラ:事情?
GM:このキャラクターは弱い異能しか持たない出来損ないなんですが、それと同時に能力の制御技術も出来損ないなので。
トリクラ:分かったぞ! つまり、監視対象になってるってことだな。
GM:はい。イメージ的には保護観察ですね。うっかりと暴走したりしないように、ということで。
龍之介:ロイスというのは?
GM:このキャラクターにとって特別な感情を抱いている存在を表す要素です。
龍之介:特別な感情を抱いている存在がいるとどうなるんだ?
GM:人と人との繋がり――絆があれば、たとえ強力な力に溺れそうになっても理性を保てます。
龍之介:ジャームになっちゃうって話と関係がありそうですね。
GM:はい。力に溺れても、ロイスがあれば日常に帰ってくることができます。そうすれば、ジャームにならずに済みます。
龍之介:基本的には家族とか友達とか、或いは恋人とかってことなのかな?
GM:ええ。絆と言っていますが、実は強い感情を抱いている相手なら誰でも良いので、ライバルや仇敵などでも可です。
龍之介:なるほど。で、このキャラクターが特別な感情を抱いているのが「神崎アヤノ」って人なんですね。
トリクラ:その「神崎アヤノ」ってどんな人なんだ?
GM:独学でギターを練習して、プロのミュージシャンを目指す努力家の少女です。
トリクラ:おお。それはいいな。
GM:このキャラクターも出来損ないを返上するべく努力しているんですが、秘密の特訓をしている時に出会ったという設定です。
トリクラ:なるほど。努力する者同士、友情を感じてるってわけか。
GM:はい。言わば『努力友達』って感じですね。
トリクラ:ちなみに、感情の意味は分かったんだが、友情の隣に書いてある劣等感っていうのは何だ?
GM:ロイスというのはポジティブとネガティブ感情があります。
トリクラ:二面性ってやつか。で、それは何を表現する為のものなんだ?
GM:どちらかが表に出ていて、表に出ている方の感情が態度を決定すると思ってください。
トリクラ:ふむふむ。この場合だと、友情が表に出ているのか?
GM:その場合だとアヤノに対して友情を感じてはいるが、心の底では劣等感を感じているということになります。
トリクラ:努力友達ということで友情を感じているけど、実は心の底で自分よりも努力できる彼女に劣等感を感じているのか。
GM:そういうことです。で、ポジティブとネガティブのどちらを表にするかは自由に決めてもらって結構です。
本塚:それと、このDロイスというのは?
GM:それは他者との関係を表すロイスではなく、特殊な設定をキャラクターにつける為の要素です。
本塚:なるほど。でこのキャラクターは『????』となっているが?
GM:現時点では秘密ということで、プレイ中に明かされます。
本塚:なるほど。それは面白いギミックだ。
GM:他に質問が無ければ、次に進みます。

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プレイヤーキャラクター2:UGNが誇る傑物―Giant Overd―
Lois:マスター・グラトニー   Emotion:尊敬/脅威
Cover/Works:高校生/UGNチルドレン Dロイス:究極のゼロ           

 君はUGNが誇る傑物にして、“究極のゼロ”を保有するエリートオーヴァードだ。
 数々のオーヴァードを破った大敵――マスター・グラトニーと唯一引き分けた者として、君に奴の追跡および撃破命令が下る。
 奴が新たに行動を開始したとされる街についた君だったが、深刻な戦力不足ゆえに、相棒として組まされることになったのはとんでもない出来損ないのオーヴァード。
 友軍戦力に期待はできない状況の中、それでも君はかつてない大敵を倒さねばならない。
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GM:一転して、今度はエリートのオーヴァードです。
龍之介:エリート!
GM:このキャラクターは先程のキャラクターとは対照的にエリートなんですが、更に能力までも対照的です。
本塚:シンドロームは何なんだ?
GM:「サラマンダー」です。ただし、低温に専門で氷のエフェクト使い。
本塚:なるほど。確かに対照的だ。
BOW:で、ロイスは最強クラスの敵であるマスター・グラトニーって奴なんだね。
トリクラ:その強大な力に脅威を感じてはいるが、心のどこかで尊敬してるってわけか。
龍之介:GM、この「究極のゼロ」っていうのは?
GM:「サラマンダー」の異能者だけが取得できるDロイスです。超低温に特化した能力者で、強力無比な冷気を操ります。
龍之介:ふむふむ。ちなみに、超高温の方に特化した炎使いのDロイスというのは無いんですか?
GM:いい質問ですね。「永遠の炎」というDロイスが存在します。ただし、今回はそれらに対して独自の解釈をつけています。
龍之介:独自の解釈。
GM:今回のプレイ限定での設定と解釈ですが。
龍之介:説明をお願いします。
GM:「究極のゼロ」を持つ異能者は世界でも一例しか確認されておらず、それがこのキャラクターという設定です。
龍之介:では、「永遠の炎」の持つ異能者は?
GM:まだ確認されてはいません。超低温に特化した者がいるのだから、理論上は超高温に特化した者もいるだろう、と。
龍之介:つまり、いても不思議ではないし、世界のどこかにはいるのだろう、そんなレベルですね。
GM:その通りです。ゆえにこのキャラクターは希少な能力者として重宝されています。
龍之介:だからこそエリートなんですね。それで、最強クラスの敵とも引き分けられた。
GM:このキャラクターが彼と再戦の指令を受けて、出来損ないの人がいる町にやってくるところから物語が始まります。
龍之介:そして、その出来損ないと組まされる、と?(笑)
BOW:UGNチルドレンってのは?
GM:幼少時から異能を発現させたり、UGNで育った生え抜きのオーヴァードを表す言葉です。
BOW:なるほど。生粋のオーヴァードってわけだね。

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タッグハンドアウト2:古参兵/傭兵―Old Army/Mercenary―
Purpose of Tag:若者たちに道を示しつつ、大敵を倒す。

 FHの大攻勢によりかつてない打撃を受け、深刻な戦力不足にあえぐUGN。
 組織はその事態に対処すべく、歴戦のベテランを呼び戻し、あるいは新たに呼び出した。
 ――呼び戻された者は、UGN戦闘部隊員として戦線を支え続け、今は教鞭を執る古参兵。
 ――呼び出された者は、金次第で善にも悪にもつくというプロの傭兵。
 ――そして、組織からの依頼は、若輩者を鍛え、大敵に立ち向かうこと。
 かつてない困窮した状況の中、彼等はこの依頼を完遂できるのだろうか?
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GM:さっきの二人が少年少女だったのに対し、今度は大人の二人組です。

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プレイヤーキャラクター3:歴戦の古参兵―Old Army―
Lois:マスター・ミザリィ Emotion:執着/憤懣
Cover/Works:UGN教官→UGN支部長/防衛隊員 Dロイス:指導者

 君はUGN戦闘部隊員として長年戦線を支え続けた歴戦の古参兵で、今は一線を退き若いオーヴァードたち相手に教官を務めている。 大攻勢をかけてきた敵の中にはかつて君に辛酸を強いた仇敵――マスター・ミザリィの関与があることと、大攻勢により戦力不足に陥ったという理由からUGNは君を第一線に呼び戻し、UGNの正義を信念とする君はそれを承諾した。
 復帰した君の最初の仕事は大敵に対抗するべく、出来損ないのオーヴァードを短期間のうちに使えるレベルまで鍛えることだった。 そして、君はとある理由からこの戦場を最後の戦場にしようと考えていた。 
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GM:このキャラクターはカヴァーが教官から支部長に変わります。
本塚:支部長?
GM:UGNは各地に支部があって、それぞれの支部を支部長が統括しています。
BOW:指導者ってのは?
GM:支部長のワークスを持つ者だけが取得できるDロイスです。部下たちに指令を出す達人という能力を表します。
トリクラ:マスター・ミザリィってどんな奴?
GM:かつてこのキャラクターと戦い、痛手を負わせたFHのエージェント。
トリクラ:ふむふむ。それで?
GM:マスター・グラトニーと同じく強力な異能者で、現在はグラトニーと組んで行動しています。
本塚:大体のことは分かった。つまり、このキャラクターはさっきの出来損ないを鍛えればいいんだな?
GM:そうです。
本塚:あと、この『とある理由』っていうのは何なんだ?
GM:それは、このキャラクターを選んだ人だけにお教えします。それ以外の人には物語中盤までは秘密ということで。
龍之介:シンドロームは?
GM:超高速や音を操る「ハヌマーン」と、超高速かつ超精密な思考ができる「ノイマン」の二つです。
龍之介:二つ!? さっきの二人みたいに単一じゃないんですか?
GM:最大三つまで組み合わせることができます。種類が多ければ、その分多種多様な異能を使えます。
龍之介:逆に単一だと?
GM:一つの能力に特化する分、強力な異能を行使することができるようになります。
龍之介:なるほど。一つを極めるか、できることを増やすか……その二択ですね。
トリクラ:で、このキャラクターはどんなエフェクト(異能)を持ってるんだ?
GM:超頭脳を使って完璧な戦術を構築し、部下、即ち味方に最適な指示を出して援護するというエフェクトです。
トリクラ:了解した。ありがとう。

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プレイヤーキャラクター4:プロの傭兵―Mercenary―
Lois:UGN幹部 Emotion:連帯感/無関心
Cover/Works:傭兵/傭兵 Dロイス:秘密兵器

 金次第で善にも悪にもつくプロの傭兵。それが君だ。
 今回、深刻な戦力不足にあえいだUGNは戦力増強として君を雇う。
 現場で君が組むことになった相手はUGNの正義や信念を貫こうとする古参兵。君とは全く正反対の思想を持つ人間と組まされることになった君は面倒なものを感じていたが、金の為と思い直した君は任務の遂行を開始した。
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GM:このキャラクターは傭兵のキャラクターです。
本塚:さっきの教官とは対照的な性格だ。この二人の絡みも楽しみだな。
GM:ありがとうございます。
本塚:よし。早速説明してくれ、まず、このキャラクターのシンドロームは何だ?
GM:一つは教官と同じく「ノイマン」です。
本塚:こいつも指令を出すのか?
GM:いえ、「ノイマン」は頭が良くなる能力で、その汎用性たるや万能なんです。
本塚:ほほう。それで?
GM:指示を出すという特技以外にも、機械並みの精密さで武器を振るうという能力もありまして。
本塚:そういうことか。つまり、このキャラクターは超精密な武器攻撃ができるんだな?
GM:はい。そして、もう一つは重力や空間、次元を操る《バロール》というシンドロームです。
トリクラ:この二つを組み合わせると、どんなエフェクトになるんだ?
GM:このキャラクターは大量の武器を持ってまして。
BOW:ホントだ。キャラクターシートに武器の名前が大量に書いてある。
GM:大量の武器弾薬を異次元空間に貯蔵していて、戦闘になると、それを随時召還して装備し、戦うという異能です。
BOW:次元ポッケか。そいつは面白そうだ。ちなみに秘密兵器ってのは?
GM:これは誰でも取得できるDロイスで、特別で強力な武装を持っているというのを表す要素です。
BOW:キャラクターシートを見たんだが、[フォールンライフル]っていうのがそれかい?
GM:はい。器物に感染するというレネゲイドの変種に感染した銃で、強力な武器ですね。

 

 こうして四人のキャラクターが出揃った。
 今回はタッグ同士での絡みという要素も入ってくる為、いつも以上にどのキャラクターを選ぼうか、良い意味で迷ってくれているようだ。やはり、この瞬間もGMにとっては嬉しく、そして楽しい瞬間である。
 話し合いが済んだ後、プレイヤーたちは詳細な設定をつけていく。そして、キャラクターの性別や名前も決まったようだ。
 こうして、四人のオーヴァードたちがこの世界に誕生したのだった。

本塚届
作家:加々見繍
【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話
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