【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

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◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感

◆ Middle 05 ◆ 酒と握手と信頼感    ――Scene Player:鷲見津 剛生

GM:剛生をボナが訪ねる会話シーンだ。シーンプレイヤーは剛生。
剛生:了解した。夜頃、俺は執務室で報告をまとめていよう。
ボナ:あいよ。じゃ、アタシは酒でも持っていこうかねぇ。
剛生:事務仕事もちょうど終わった所だ。机を片付けて、ウイスキーグラスを持ってこよう。
ボナ:そのグラスに酒を注ぐとするよ。あのボウヤ、落ちこぼれって聞いてたけど、なかなかどうして、結構やるじゃないか?
剛生:ああ。能力が使えないが、それゆえに筋がいい。が、心配なのはむしろ、椿女の方だ。
ボナ:確かに危なっかしい感じはしたねぇ。
剛生:確かに能力は強い……が、精神面が心配だな。俺はそれを心配してるよ。

 

 ボナが持ってきたウィスキーをロックで煽りながら、遠い目をする剛生。
 そして、グラスを傾け終えると、剛生は決意を込めた瞳で告げる。


剛生:俺は生徒を殺したくない。ウェルスペイン、お前にもサポートして欲しい。
ボナ:ま、報酬分はね。
剛生:ボナにグラトニーとミザリィの資料を渡しておこう。
ボナ:へぇ、随分、敵さんは分かり易いじゃないか。
剛生:マスター・ミザリィ……かつて、奴のせいで俺の生徒が一人死んだ――。
ボナ:それがアンタのトラウマ、ってヤツかい?
剛生:そんなものではない……ただ、死んだその生徒が、もしあの時、俺の言うことを聞いていてくれれば……とは思うことはある。  
ボナ:空になったグラスを卓上に置いてから剛生に言うよ。ま、信頼してくれて良いよ? 金がある間はね。
剛生:そこで握手しようと手を差し出す。
ボナ:アタシもそれに応じるよ。手を掴んで握手をする。
剛生:俺とボナの間に不思議な信頼感が芽生えたところでシーンを終了してくれ。
GM:了解。シーン終了だ。

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◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る

◆ Middle 06 ◆ 意外なお隣さん、現る    ――Scene Player:堂本 道久


GM:打って変わって道久のシーン。アヤノを送った道久が自宅に帰るシーンだ。
道久:うし! 時間も遅いみたいだしとっとと帰るぜ。
GM:道久が自宅のアパートに近付くと、運送屋のトラックが来ている。どうやら引越しのようだ。
道久:なんだ? こんな時間に……? とりあえずアパートに戻るけど。
GM:では、ここで椿女が自動登場だ。というわけで椿女は登場をお願いします。
椿女:了解しました。登場します。
GM:道久が自宅のドアの前まで来ると、隣の部屋のドアの前に椿女がぽつんと立っている。
道久:椿女が? 俺ん家の隣に?
GM:そして、トラックから荷物が椿女が前に立っている部屋へと運び込まれていく。
道久:お前、こんな所で何やってるんだ?
椿女:いえ、お家がここだから……。
道久:オレんちの……隣?
椿女:そうなりますね。
GM:どうやら連絡の手違いがあったようで、運送屋が時間帯の指定を間違えたようだ。だからこんな時間に来てるってわけ。
道久:とりあえず、運送屋の作業が終わるまではウチに来れば? 風邪を引くような季節じゃないけど……。
椿女:わたし、風邪は引きません。だって……もう、ずっと凍ってますもん……。

 道久の言葉に、凍りついたような笑みと共に応える椿女。
 それを目の当たりにした道久は、心の中に言いようのないざわめきを感じる。  


道久:なんだよ、その態度。せっかく人が優しくしてやってるのにさ!
椿女:すみません。怒らせるつもりはないんですが……わたし、よく分からないので……。
道久:分からないって……俺たち、さっきまで普通に話せてたじゃないか。
椿女:あれは、習ってたことですから……。
道久:なんだよ、それ……それじゃ、まるで――。
椿女:いいんですよ、先輩。自分でも分かってますから。
道久:冷蔵庫から麦茶を出してから椿女に言う。テーブルに置いとくぞ、喉が渇いたら、勝手に上がれよ。
椿女:先輩と麦茶を黙って見てます。
道久:不機嫌そうにドアをバタンと閉めて帰る。
椿女:閉まるドアを見ながら言います。いいな、何かに怒れる人って……。
  
 音を立てて閉じられたドアを見つめながら、どこか物悲しげに呟く椿女。
 そして、ドアの向こうでは道久が苛立ち混じりに呟いていた。

道久:なんだよ……あれじゃまるで人形じゃないか……

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◆ Middle 07 ◆ ロケットの中の戦友

◆ Middle 07 ◆ ロケットの中の戦友    ――Scene Player:ボナ・ドロル


GM:次のシーンプレイヤーはボナ。時系列は剛生と酒を飲んだ後。ボナがホテルで過去を回想し、モノローグを語るシーンだ。
ボナ:あいよ。ベッドに寝っ転がって胸元のロケットを開く。するとかつて喪った戦友たちと一緒の写真が入っているってわけさね。
GM:了解した。写真を見ながら物思いにふけるわけだね。
ボナ:――なぁ、お前ら……聞いてくれよ。アタシに子供が死なないようにサポートしろってさ……。そう写真に語りかける。
GM:ボナの心にかつての戦友たちの顔がありありと思い出される。
ボナ:傭兵ってのは守る仕事じゃないってのに……笑っちまうだろ? 過去を回想しながら、なおも写真にそう語りかけるよ。

 

 気付けばボナは自らの過去に思いを馳せていた。やがてそれは子供として過ごした時へと至る。
 浮浪児だった幼少期。とある国の路地でパンを盗み、泥水をすすって同じ浮浪児たちと肩を寄せ合って必死に生きていた頃――。
 弟分の浮浪児が病で死の淵をさまようのを、ただ見ていることしかできなかった幼少のボナ。


ボナ:さっき剛生がしてたのと同じような遠い目をしながら更に思い出していくよ。

 

 ――卵が食べたい。死の淵をさまよう弟分のささやかな頼みを聞いたボナは店へと走り出した。
 卵を盗むことに成功するも、やがて追いつかれ、何度も殴られるボナ。そして、割れる卵――。
 割れた卵を必死ですくい、ボロボロになりながら、ボナはほんの僅かに残った卵を持って戻る。
 だが、弟分はボナが戻る少し前に事切れていた。


ボナ:一度ため息をついてから、我に返ってロケットをパチンと閉める。シーン終了で頼むよ。

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◆ Middle 08 ◆ これも任務の一環

◆ Middle 08 ◆ これも任務の一環    ――Scene Player:堂本 道久

 

 翌日、道久は学校の保健室でユキによるメディカルチェックを受けていた。
 “出来損ない”である道久は能力制御も“出来損ない”であるゆえ、定期的なチェックが必要なのだ。


GM:シーンプレイヤーは道久。メディカルチェックをかねて、昨日の訓練でした怪我を治療しにきたというわけだ。
道久:おう。袖をまくってゴム弾が当たった部分や擦り剥いた所をユキ先生に見せるぜ。
GM:ちなみに彼女は「モルフェウス」と「ノイマン」のクロスブリードだ。

 ユキが手をかざすと、まるで映像の逆再生のように道久の怪我が治っていく。彼女の異能の名前とコードネームは“キュレーター”。
 サイコメトリー能力により患者の肉体の記憶を読み取り、それを超頭脳で精密に分析。そして、寸分違わぬ精度で再構築する。
 たとえ腕が切れているような欠損でも、ユキならば筋肉や骨格、更には神経組織すら完璧に再生可能なのだ。
 ――その精度は、限りなく100パーセントに近い。

道久:いつ見てもスゲーなぁ。ユキ先生の能力って。そういや、キュレーターってどういう意味?
GM:“学芸員”という意味。美術品の分析や復元を仕事とする学芸員という職業になぞらえてコードネームがついたんだ。
道久:なるほど。確かにそんな感じの能力だよな。
GM:イメージ的には“人体練成のCAD”みたいなものと思ってくれ。というわけで、道久の怪我は跡形もなく治った。
ユキ:怪我のほうはこれでいいわね。
道久:痛ててて……あのおっさん、いきなり手加減なしだもんな。
ユキ:そんなこと言わないの。鷲見津支部長なりに真剣な証拠なんだから。
道久:それは……わかってるけどさぁ。
ユキ:あら? ストレスの値が高いみたいね。これをあげるから、誰か誘って行ってきなさい。
道久:遊園地のペアチケット?
ユキ:レネゲイドの制御には健全な精神状態が不可欠よ。だから、ストレスはちゃんと解消しなさい。
道久:分かったよ。ありがと、ユキ先生。
ユキ:いい? これも任務の一環だからね。ふふっ。
GM:そう言ってユキ先生は慈母のような微笑を浮かべる。
道久:いつもありがとね。先生。
ユキ:まぁ、これが私の仕事だからね。
道久:そうや、アヤノが俺のオーヴァード能力を知ってること、ユキ先生は知ってるのか?
GM:知っててもいいだろう。オーヴァードは日常の象徴――ロイスとなる人物を持つことが推奨されているからね。
道久:そうだ。聞いてよ先生。アヤノちゃんが突然ギターが上手くなってさ。
ユキ:神崎さんが?
道久:人って、突然、あんなに上手くなるんだね。
ユキ:それは良かったじゃない。
道久:もう、すぐにも路上ライブができそうだよ。
ユキ:良かったじゃない。ちゃんと見に行ってあげなさいな。
道久:で、ユキ先生にちょっとお願いが……アヤノのことだから大丈夫だと思うけど……もし、人があまり来なかった時の為に――。
ユキ:ふふ。わかったわ。私はサクラとして行けばいいのね?
道久:ありがと先生! 良かったぁ……受けてもらえて。
GM:では、ここでシーン終了だ。
道久:おう! ペアチケットか……誰を誘うか迷うぜ。

本塚届
作家:加々見繍
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