【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

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◆ Middle 01 ◆ 異能者、ここに集う

◆ Middle 01 ◆ 異能者、ここに集う    ――Scene Player:鷲見津 剛生
 
 新たに集った人員たちによって、人のいなくなった支部は僅かずつだが活況を取り戻しはじめていた。
 支部長にかつての名将――剛生を迎え、遂に支部は再始動の時を迎える。
 人員たちがせっせと動く中、支部長室の執務卓は新たな主を受け入れていた。
 
GM:というわけで6シーン目。シーンプレイヤーは剛生。君が新たに支部長として赴任してくるシーンだ。
剛生:了解。(ダイスを振る)侵蝕値を上げたぞ。
GM:君が支部長室のデスクで資料を確認しているとハイヒールの音とノックの音がする。
剛生:椅子に座ってコーヒーを飲んでいる所にその人が来る感じで。どうぞ。開いている。
GM:では、「失礼します」という柔らかい女声が聞こえた後で、一人の女性が入ってくる。彼女の名前は榊ユキ。落ち着いた色の茶髪をポニーテールをシュシュで纏めた、包容力のありそうな美人で、歳の頃は二十代後半といったところ。白衣が似合う人だ。
ユキ:はじめまして。貴方の副官を務めさせていただきます榊ユキです。この支部のメディカルスタッフも兼任しておりますので、何かありましたらお気軽にどうぞ。
剛生:俺は鷲見津剛生。コードネームは“オールドイーグル”だ。
GM:ユキは君に綺麗な手をすっと差し出してくる。
剛生:無骨で豆だらけになった手を出して握手しよう。
ユキ:宜しくお願いします、支部長。
剛生:ああ。宜しく頼む。
ユキ:他にもこの支部に派遣されてきた方が到着したようです。紹介してもよろしいでしょうか?
剛生:ああ。構わんよ。そう言って頷こう。
ユキ:(室外に向かって)二人とも、入ってきて。
ボナ:登場するよ。だるそうに入ってくる。(ダイスを振る)振舞いはだるそうだが、侵蝕値はすごい上がった(笑)。
椿女:わたしも登場します。(ダイスを振る)わたしの方は2しか上がらない(笑)。
剛生:予め貰っていた資料の顔写真と比べながら二人を見る。
椿女:本日より配属されました道本椿女と申します。鷲見津支部長、よろしくお願い致します。
ボナ:アタシはボナ・ドロルだ。よろしくな。
剛生:かのご高名な“アブソリュート・ゼロ”――道本椿女か。それとそちらは“ウェルスペイン”――ボナ・ドロル……なるほど、金に汚いようだね。
椿女:その名前で呼ばないでください。嫌いなんです。
剛生:これは失礼した。非礼を詫びよう。許してくれ、“雪月花”。
ボナ:剛生の言葉に対しては嬉しそうに笑うさね。

剛生:“ウェルスペイン”、君のような手合いは以前にも組んだ事がある――金に細かいが能力はある人間だ。俺もそういう人間は十分使い勝手があると思っている。期待しているよ。
ボナ:ニヤッと笑って言うよ。ま、貰った分の働きはするよ。
剛生:まぁ、金がある間は信頼できる手合いだろう。それと、ユキに一つ聞いておくことがある。
ユキ:何か?
剛生:後一人来る予定のようだが、それについてはどうなっている?
ユキ:彼ですか? 彼は本来この支部の戦力には入っていなくて、(言いにくそうに)その、能力が能力なもので……イリーガルとして登用されることもなく、ただの監視対象という扱いになっていたもので、本日は招聘されなかったものかと。
GM:そう言って、剛生が読み終えた資料を椿女に渡す。
ユキ:椿女さん、転校手続きは済ませてあります。明日学校で彼――堂本道久君と接触し、訓練の呼び出しをかけておいてください。
椿女:資料を受け取って眺めながら呟きます。堂本……道久……。
剛生:資料を読む限りでは、俺はウェルスペインと組んで“マスター・グラトニー”、“ミザリィ”の両名の討伐にあたればいいんだな?
ユキ:はい。本部からはそう通達されています。
剛生:そして、その戦力として使い物になるように“アブソリュート・ゼロ”、そしてこの“ドードー”という少年か……彼等の教官も努めればいい、と?
ユキ:はい。その通りです。
ボナ:いやぁ、八面六臂の活躍だねぇ。結構貰ってるのかい?
剛生:金なんて俺にとってはどうでもいいことだ。ただ俺にとっては仲間が死なず、そしてUGNが掲げる正義が全うされればそれで十分さ。
ボナ:ハッ! 正義――か。便利な言葉だね。
剛生:確かに綺麗事だということは解っているがな。だが、綺麗事で済ませた方が世の中何事も良い、そうは思わないか?
ボナ:済むならねぇ。そう言って呆れたような目で剛生を見る。
剛生:まぁ、いいだろう。“ウェルスペイン”、君に関しては金が繋がっているうちは俺の手駒として動いてくるんだろう?
ボナ:その辺は任せな。ビジネスライクにね。
剛生:なら、互いの主義主張は大して関係ないだろう。言葉を尽くした所で関係が悪化するだけだろうからな。その分、金払いは保障する。
ボナ:それを聞いて笑う。それが聞ければ十分さね。
剛生:では、タバコ(アメリカンスピリッツ)を取り出して吸いながら窓の外を眺める所でシーンを終了しよう。

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◆ Middle 02 ◆ 訪れた出会い、エリートと出来損ない

◆ Middle 02 ◆ 訪れた出会い、エリートと出来損ない    ――Scene Player:堂本 道久
 
 世界の裏側とは違い、平和な日常の時が流れていく学校の教室。
 しかし、その平凡な教室はいつもと違う活気に包まれていた。
 曰く――転校生が来る。道久の周囲はその報せに沸き立っていた。


GM:翌日のシーン。シーンプレイヤーは道久。椿女は転校してくるので自動登場です。
道久:おう!(ダイスを振る)
椿女:了解です。(ダイスを振る)
GM:道久とアヤノは同じクラスだ。朝、登校すると教室でアヤノが道久の席の近くを通りかかって、目配せで挨拶してくる。
道久:俺も目配せだけで挨拶を返そう。なんたって、秘密の友達だからな(笑)。
GM:そうしていると、男子生徒達が道久に話しかけてくる。
男子生徒A:なぁ、堂本。知ってるか……今日、転校生が来るらしいぜ!
男子生徒B:しかも――超カワイイらしいってよ! さっき、職員室に偵察に行った奴が報告してきたんだ!
GM:そう言って男子生徒は携帯電話のメールを見せる。
道久:なら、それを覗きこんで一緒に盛り上がろう。でも、アヤノの視線が少しだけ気になる(笑)。
GM:すると、教室に副官のユキさんが入って来る。
剛生:そうか。UGNの息がかかった学校だから、彼女の表の職業は教師なのか。
GM:ええ。その通りです。
ボナ:で、ユキ先生は何の科目を担当してるんだい?
GM:保健の先生。つまりは養護教諭です。
一同:なんで担任持ってんの!(一同爆笑)
GM:大人の事情です。(再び一同爆笑)
ユキ:はーい、みんな静かにして。今日は転校生を紹介します。
GM:椿女はここで登場です。
椿女:ユキ先生と一緒に教室に入ってきます。
ツッパリA:ヤベェ、あのコ……超マブくねぇ?
ボナ:ハクいスケじゃのう!(←ツッパリB)
剛生:同人誌描きたくなってきたお(←オタクA)
道久:ツッパリとオタクが共存してる(笑)。凄い学校だし、凄いクラスだ(笑)。
椿女:教卓の前に立って自己紹介します。皆さんはじめまして。道本椿女といいます。これからよろしくお願いします。
GM:自己紹介が終わると、男子生徒たちの間から歓声が上がる。
ユキ:はいはい。みんな落ち着いて。席は……そうね、堂本くんの隣がちょうど空いているわね。
道久:俺の隣!? マジ!?
GM:マジです。あと、男子生徒たちからのブーイングもあります。
男子生徒A:くぅ~羨ましいぜ! オイシイ所持ってきやがってぇ~!
男子生徒B:リア充氏ね!
椿女:先輩の隣に座ります。あ、ちなみに、実際の学年は堂本さんの一つ下なんですけど、UGNの根回しで二年生としてこのクラスに編入してます。だから、ここでは堂本さんって呼びますね。
剛生:飛び級だな。
ボナ:エリートだね。
椿女:よろしくお願いしますね。堂本さん。
道久:よろしくな! 俺たち名前も一緒みたいだし!
椿女:嬉しい偶然です。分からないことがあったら教えてくださいね。
道久:あぁ、俺でいいなら。
椿女:優しいんですね。わたし……転校が多かったから、友達がいないんです。
道久:そうなんだ……なら、俺が友達になるよ!
GM:そうこうしていると授業が始まる。そして、休み時間だ。
椿女:先輩に話しかけます。あの、堂本さん……今日、放課後、空いてます?
道久:え? なに、これ? 放課後?
椿女:付き合って欲しいところがあるんです……。
道久:あ、これ、モテ期? ……行くよ!
椿女:そう言って去ります。ということでシーン退場です。
GM:では、入れ替わりにアヤノが話しかけてくる。
アヤノ:今日も……いつもの良いっすか?
道久:き、今日は、予定があるから、その……。
アヤノ:今日も遅い時間まで練習して待ってるから……大丈夫っすよ。
道久:わかった。じゃあ、用事が終わったら行くよ!
GM:するとアヤノは嬉しそうに笑うと、上機嫌で小走りに去っていくんだけど、机の足につまづいて転びかける。
アヤノ:やっちゃったっす。
GM:で、そう言うと、ぺろっと舌を出して笑う。

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◆ Middle 03 ◆ 放課後×埠頭×デート中?

Middle 03 放課後×埠頭×デート中? ――Scene Player:道本 椿女


 人気の無い埠頭の倉庫街。
 椿女は一緒に下校する道久を連れてこの場所にやってきていた。
 

椿女:こっちです。堂本さん。
道久:こっちって? どこに行って、何を……? それに、こんな人気の無いところで何の用? もしかして……
椿女:まぁ、人がいるとマズいじゃないですか。
道久:マズいって、何を?
椿女:倉庫街を歩いて行った先で、奥まった所にある倉庫の一つを指さします。ここです、堂本さん。
剛生:では、ここで登場しよう。倉庫のスライドドアを開けると俺が立っている。
ボナ:アタシも登場だ。剛生の近くにでも立っていようかねえ。
椿女:道本椿女、戻りました。
剛生:うむ、この少年がドードーか。
ボナ:おや? この子が例の出来損ないかい? 随分カワイイ顔してるじゃないか。 
道久:……あれ? 道本さん……? オレは今日、何でここに呼ばれたんでしょうか?
椿女:え? 訓練の為ですよ? UGNエージェントとしての。
道久:訓練ってなんの?
椿女:貴方の能力の。
道久:いきなり彼女できるかも? とか、すげぇ浮かれてたのにぃ~!!
椿女:どうしたんですか?
道久:ついにモテ期到来で……いきなり彼女ができて、あわよくば更にその先も――って展開はなしかよ……そう言って血の涙を流す。
ボナ:それを見て大笑いしてるよ。
剛生:俺は鷲見津 剛生。コードネームはオールドイーグル。君の教官を担当する。
道久:俺、今日は用事があるんだけど、早く帰れる?
剛生:なら、笑ってこう言おう。すべては君次第だ。
道久:お、俺……今日、本当に帰れるのぉ……
GM:では、訓練開始するよ。剛生、君はとある物を操作するリモコンを持っていると思ってくれ。
剛生:リモコン? 何に対応しているんだ?
GM:訓練用の移動式砲台だ。これを仮想敵として戦闘訓練を行う――というわけ。砲台のダイスはGMが振るよ。
剛生:了解した。では、演出上では俺が操作しているということにしよう。
GM:それでいい。さあ、戦闘開始だ。

第一ラウンド

戦闘配置図01.png

 

GM:敵は移動式砲台が二台。参加するのは道久と椿女だ。
道久:……おうっ!
椿女:了解しました。
GM:(全員のイニシアチブを確認する)砲台×2からの行動だね。標的は道久だ。(ダイスを振る)
道久:いきなりかよっ!?(ダイスを振る)あっぶねぇ……ギリで回避判定は成功だぜ。
GM:道久に向けて砲塔から訓練用のゴム弾が発射される。


 凄まじい速度――実弾さながらの弾速で発射される訓練用のゴム弾。
 だが、道久は咄嗟に飛び退いてそれを寸前でかわすことに成功。
 そして、彼の背後に置かれていたドラム缶にゴム弾が当たると、鉄製のドラム缶は音を立てて大きく変形する。


道久:こ、これ、当たったらタダじゃ済まないんじゃ!?
剛生:いい動きだ。
道久:ちょ、ホントに訓練用のゴム弾だよな!?
剛生:軽く殺傷力は上げてある。それくらいの方が緊張感があっていいだろう?
GM:では、二台目の攻撃だ。今度の標的は椿女。(ダイスを振る)
椿女:了解。回避を試みます。(ダイスを振る)――失敗。そちらの攻撃が命中しました。
GM:よし。ダメージダイスを振るよ。(ダイスを振る)
椿女:ここでエフェクト《氷雪の守護》を使用し、わたしに適用される予定のダメージを軽減します。


 椿女の左目が輝き、彼女の周囲に極寒の冷気が発生する。
 辺りの何もかもが動きを止めていくほどの冷気は椿女の前方に収束して氷雪となる。
 そして、高速で飛来するゴム弾は氷雪に阻まれ、全てが椿女に届くことなく動きを止めた。


椿女:(ダイスを振る)ダイス目が走りました。おかげでノーダメージです。
道久:おおっ! すげぇ!
ボナ:流石はエリート――ってトコロかい。
椿女:鷲見津教官、これ、当たったら痛いです。
剛生:そのくらいなら、さばけると思っている。
ボナ:アタシは相変わらず遠巻きにその様子を見ながら、腹を抱えて笑っているさね。
椿女:次はわたしの攻撃のターンです。標的は砲台A。使用するエフェクトはマイナーアクションで《氷の加護》。メジャーアクションで、《コンセントレイト:サラマンダー》、《ブリザードブレス》。(ダイスを振る)
GM:砲台は回避を試みる。(ダイスを振る)回避成功だ。
椿女:避けられましたか。
道久:よし! 次は俺のターンだな! 使えるエフェクトは……え? 無い?
GM:その通り。君は《炎の理》というエフェクトを持ってるんだけど、それは戦闘には使用できない演出専用のエフェクトなんだ。
剛生:イージーエフェクトというやつだな。
ボナ:ハハッ、流石は出来損ない”――ってトコロかい。
道久:ってことは……エフェクトも何もないけど、とりあえず砲台Aを素手で殴るぜ……うぉらぁっ!(ダイスを振る)
GM:回避を試みる。(ダイスを振る)道久の攻撃が命中だ。
道久:おっし! ダメージダイスだ!(ダイスを振る)
GM:今の攻撃で砲台AのHPはゼロになった。おめでとう。撃破成功だ。
道久:やったぜ! おっさん!
剛生:……おっさんと言うな。

第二ラウンド

戦闘配置図02.png

GM:砲台の攻撃だ。標的は道久。(ダイスを振る)
道久:(ダイスを振る)……やべ、避けられねぇ!?
椿女:《氷雪の守護》を先輩に対して使用します。(ダイスを振る)ダメージを半分まで減らしました。
道久:つ、椿女ちゃん? もしかしてやっぱりオレのことを……
椿女:(無視して)……堂本さん。……トドメをお願いします。
道久:お、おうっ! 相変わらず素手だけで攻撃だ!(笑)(ダイスを振る)
GM:(ダイスを振る)命中だ。道久の攻撃で砲台Bも倒された。
剛生:ほう……
ボナ:おやおや、二台とも全部素手で、しかも一撃で倒しちまうとはねぇ。
剛生:手を叩きつつ話しかけよう。上出来だな。これだけ成果を出せば良いだろう。
道久:へへっ!
剛生:そうだ、GM。道久の為に防具を調達しておきたいんだが?
道久:おっさ……いや、鷲見津教官。防具の方もありがたいんスけど……能力の開発はやって貰えないんですか?
剛生:ドードー……お前のポテンシャルは低くはない。能力開発のほうは日を改めて行なう。
道久:そうなんすか? ま、いいか。
剛生:というわけで<調達>判定だ。(ダイスを振る)……成功だ。
GM:では、剛生。君は<UGNボディアーマー>を入手したよ。
剛生:これを持っておけ、ドードー。
道久:教官からそれを受け取りつつ、遠巻きに椿女の方を見るぜ……能力が使えて羨ましいよなぁ……とか思ってる。
椿女:わたしの方はわたしの方で、道久の方をちらりと見ながら言います。能力を使わずに訓練を終わらせたほどの人材――使える、と。

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◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束

◆ Middle 04 ◆ 高架下の約束    ――Scene Player:堂本 道久

GM:次のシーン。シーンプレイヤーは道久だ。
道久:おうよ!
GM:夜遅くも近い頃、椿女との訓練を終えた君は河川敷の高架下に向かっている。
道久:アヤノを待たせないように急ぐ。待ってるかな……アヤノ。
GM:道久が待ち合わせの場所に着くと、まだアヤノはギターを弾いているね。
道久:わり、わりぃ、遅れちまった。
アヤノ:大丈夫っすよ。全然……待ってなんかいないっす。
GM:そう言うアヤノの顔は無理して作り笑いをしているようにも見える。
道久:作り笑いをするアヤノのほっぺをつまむぜ。
アヤノ:いはいれすー、やめひぇくりゃはい。
GM:アヤノは君の手を掴もうとした時、顔を痛みに歪めて声を上げる。
アヤノ:痛ッ……!
道久:どうした!? 見せてみろ――って言ってアヤノの手をそっと取る。
GM:アヤノの左手の指の皮がめくれて、肉が切れている。その傷からは今も血が滲み出しているよ。
道久:こんなになるまで我慢して練習してたのか!
アヤノ:うん……。さっき練習してたら、何かを掴みかけたっす……それで――。
道久:それでこんなムチャしたってのか?
GM:道久が聞くと、申し訳なさそうにアヤノは小さく頷く。責められてると思ってるのかもね。
道久:責めてなんかいないのに。なら、ニッコリ笑って言うぜ。なぁ、アヤノ。俺にもその“掴みかけた”って演奏を聞かせてくれよ。
アヤノ:うん! もちろんっす!
GM:そう言って破顔すると、アヤノはギターを調弦してから深呼吸すると、しっかりとピックを掴む。そして演奏が始まる。
道久:しっかりと聴くぜ。
GM:その演奏は素人の耳にも凄いということが解る。何段階もレベルが上がっているのが感じられる。
道久:夢中で聴き入っている。……なんだ、これ……すげぇ……。
GM:演奏が終わった途端。気がつけば道久は無意識のうちに自然と拍手をしている。
道久:これ、スゲーよ……一体、何があったんだ?
アヤノ:ここで道久くんを待ちながら練習してたら、急にキたっていうか……なんというか……。
道久:急にキたって……スゲーよ。お前、ホントにスゲーよ!
アヤノ:そ、そんなことないっす! あたしなんてまだまだで……。
道久:いや、これで確信した。アヤノには才能がある。
アヤノ:道久くんが聴いてくれるから……一生懸命、練習したっす。そういう道久くんの方はどうなんすか?
道久:俺の方は進展なし。でも、いまにこれ以上ないくらいスゲーのを見せてやっからよ!
アヤノ:楽しみに待ってるっす。
道久:あーあ……これじゃあ、俺、すぐにでも置いてかれちまうな。
アヤノ:ありがとうっす……もう時間も遅いし、道久くんにも聴いてもらえたから、そろそろ帰るっす。
GM:と、アヤノは時計も見ずに言う。  
道久:時間、わかるのか?
アヤノ:ずっとここで練習してたから、通る電車の数とか間隔でわかるようになったっす。
道久:そんなに練習してたんだな……そうか。じゃ、送ってくよ。
アヤノ:道久くん、またここに来てくれるっすか?
道久:あ、それなんだけど……また今日みたいにバイトが入るかもしれないから、遅くなるかもしれない。
アヤノ:待ってるっす……遅くまででも。
GM:そう言ってアヤノは照れくさそうに笑う。そして、ギターをツギハギだらけのボロいソフトケースへと大事そうにしまうよ。
道久:それを見て新しいソフトケースを作ってあげようと決めるぜ。俺、裁縫得意なんで。
GM:了解。では、道久とアヤノが二人仲良く帰っていく背後で電車が通る音が鳴ってシーン終了だ。

本塚届
作家:加々見繍
【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話
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