【TRPGリプレイ】『ETERNAL BLAZE-超えよ限界、燃えよ魂-』第1話

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◆ Preplay06 ◆ PC間ロイス、そしてセッション開始

◆ Preplay06 ◆  PC間ロイス、そしてセッション開始

   
 
GM:自己紹介も終わったところで今度はPC間ロイスを決めましょう。
道久:PC間のロイスもあるのか?
GM:はい。任意に選ぶこともできますし、ダイスを振って決めることもできますが、どうしましょうか?
道久:ここはダイスで決めてみるぜ、俺が結ぶ相手は……椿女か。(ダイスを振る)純愛/劣等感!? (一同爆笑)
椿女:純愛って。(笑)
道久:最初から純愛ってのもあれなんで、最初は劣等感を表にしておく。相手はエリートなので。
椿女:次は私ですね。今度は私から道久さんに。(ダイスを振る)有為/恐怖です。
道久:有為ってどういう意味?
GM:見所がある、という意味です。この場合は「見所があると思っている」という意味や解釈になりますね。
椿女:では、ここは有為にしておきましょう。出来損ないのようでいて、見るべき所がある、と。
道久:恐怖ってのは?
椿女:私、過去のトラウマで炎や炎を操るエフェクトが苦手なんです。だから、それで恐怖を。
道久:なるほど。
剛生:次は俺だな。相手はボナか。(ダイスを振る)信頼/嫌悪だな。ここは嫌悪を表に出す。
ボナ:随分と即答だね。
剛生:UGNの理念や正義、そういった信念を貫こうとする俺にしてみれば、金で誰の味方にもなる奴は嫌悪の対象だ。
ボナ:はいはい。じゃ、アタシも剛生に対して結ぶよ。(ダイスを振る)信頼/隔意、か。ここは隔意だね。
道久:隔意って?
ボナ:隔たりを感じている、相容れないと思っているっていう意味さね。
道久:おい! 少しは仲良くしろよ、あんたたち!(笑)
ボナ:アタシも正義とか言っちゃってるヤツは肩が凝るんだ。まさにピッタリの感情さね。
GM:ロイスも結び終わったようで。それでは、セッションを始めますよ。
一同:おおッ!

OP( 1 / 5 )

◆ Opening 01 ◆ その力、全てを喰らって

◆ Opening 01 ◆ その力、全てを喰らって    ――Master Scene
 
 都内某所。ビルとビルとの合間にある路地。その場所にUGNの精鋭部隊が集結していた。
 それほど広くない路地を埋め尽くす、高校生くらいの少年少女と屈強な黒服の男達。
 それに対するはたった一組の男女。それも少年と少女と言える年頃の二人だった。


GM:というわけで1シーン目はマスターシーンだ。
道久:おう。
GM:高校生くらいの少年少女たちはUGNのチルドレン。黒服たちはエージェントだ。チルドレンたちは一斉に各々の異能を発動。ある少年は腕を獣化させ、ある少女は光を集めて剣の形に。またある少年は手に電撃を纏わせる。そして、黒服たちは大型拳銃を構える。
剛生:ほう。
GM:それと相対するのが、一人の少年です。年の頃は高校生くらい。
ボナ:それで? ソイツはどんな感じのヤツなんだい?
GM:ザンバラ髪に鋭い眼光。服装はアバラまでの丈の短い黒い上着――袖にはまるで包帯のように何本も飾りベルトが付いていますね。ボトムはダメージジーンズで、裂け目が口、ほつれが乱杭歯のように見える。
椿女:もう一人は?
GM:ウェーブのかかった黒のロングヘアにピンクリップの唇。服装はブラウスにリボン、紺のミニスカと同色のハイソックス、そしてローファという少女だ。
剛生:たった二人でUGNの精鋭に立ち向かうというのか。
GM:はい。黒い上着の少年――マスター・グラトニーは凶暴な笑みを浮かべ、ブラウスの少女――マスター・ミザリィはぽってりとした唇に人差し指をあてて妖艶に微笑む。
道久:そして、戦端が開かれる……と?
GM:ああ。UGN勢が攻撃する前に、グラトニーの背後で彼の影が盛り上がり、身の丈ほどもある巨大な一対の手の形になる。
道久:身の丈ほども!?
GM:そうです。巨大な手は黒一色で、鋭い爪が尖っている形――戯画化された悪魔の手のような形をしています。その手が敵へと襲いかかって、殴り、はたき、掴んで叩きつける。
ボナ:かなりの強敵のようさね。
GM:そして、彼は倒した敵を巨大な手の指を組むようにして、左右から包み込みます。すると、手の中からベキッ! とかバキッ! という音がする。
道久:ちょ、ヤバそうな音がしてる(笑)。
GM:音が鳴り止むと、影の手は握り潰していた敵を摘んで、ゴミのようにポイっと放り捨てます。
剛生:なんと!
GM:放られたチルドレンの一人が立ち上がって反撃しようとするんですが、なんと能力が発動しない。
椿女:これってもしかして……?
GM:お察しの通り、異能を奪われているようだね。そして、気がつけば少年のチルドレンを一人残して全員が倒され、異能を奪われている。一人残ったチルドレンは恐怖のあまり腰を抜かして動けない。グラトニーはそれに一歩一歩近付きながら、凶暴な笑みを浮かべて一言。
マスター・グラトニー(以下=グラトニー):お前が一番強そうだなァ……! 俺は今、たまらなく――お前が喰いてェ!
チルドレン:や、やめ……やめて……うああぁぁっ!
GM:その後、チルドレンは影の手に左右から挟まれ、異音と共に握り潰された後に放り捨てられる。倒れるチルドレンを背にグラトニーは傍らに立つミザリィに声をかけ、その場を去る。
グラトニー:行くぞ、ミザリィ。
マスター・ミザリィ(以下=ミザリィ):ええ。そうね。

 

 それは戦闘というにはあまりにも圧倒的で一方的過ぎた。
 こうして、UGNが対マスター・グラトニー作戦の為に編成した精鋭部隊はものの数分のうちに返り討ちに遭い、その異能を奪って喰われたのだった。
 

OP( 2 / 5 )

◆ Opening 02 ◆ 傑物、UGNを発す

◆ Opening 02 ◆ 傑物、UGNを発す   ――Scene Player:道本 椿女
GM:では次のシーン。シーンプレイヤーは椿女だ。
椿女:はい。(ダイスを振る)侵蝕値を上昇させました。

 

 侵蝕値とはPCがどれだけレネゲイドに侵蝕されているかという値である。
 この値はシーンに出たり、異能を使う度に上がっていき、高まればその分強い力を発揮できるようになる反面、理性を失い易くなる=『キャラクターとしての死』に近付くことになる。
 強力な力か、理性の安定か――オーヴァードは常にそのせめぎ合いの中で葛藤することになるのだ。
 

GM:椿女、君がUGN日本支部、即ち日本におけるUGNの本拠地に呼び出された所からシーン開始だ。君が都心にある超高層ビルの前に立っていると中から、スーツ姿の迎えの人が出てくる。
椿女:では、その人に挨拶してビルに入ります。
GM:了解。君が迎えの人に案内されながら中に進むと、エレベーターに乗るよう促されるね。
椿女:お礼を言ってエレベーターに乗りましょう。
GM:君はここでとあることに気付く。このエレベーターは幹部、それも一部の上級幹部のみが入室することを許される特定のフロアに直行する特別なエレベーターだ。
椿女:なるほど。ということは?
GM:この先に待っている相手、つまり君を招聘した相手は相当な地位にいる人であることが予想される。
道久:流石はUGNの誇る傑物。俺とは大違いだ(笑)。
ボナ:まぁ、そう言いなさんな(笑)。
GM:ほどなくしてエレベーターが停まると、その先はもう幹部用フロアだ。エレベーターのドアが開くと、そこには日本支部のトップ――霧谷雄吾が待っている。
椿女:“雪月花”道本椿女、只今到着しました。
霧谷:お呼び立てしてすみません。さあ、こちらへ。
GM:霧谷に案内されるまま君が廊下を進むと、重厚なドアが鎮座しているところに行き着く。霧谷がそのドアを開くと中には円卓。そして、それを囲んで会議している上級幹部たちの姿が見える。幹部の一人――高級そうな白スーツにサングラスという格好の男が君に気付き、軽く手を挙げて声をかけてくる。ちなみに彼はUGN本部所属の上級幹部であるアッシュ・レドリックという人物だ。
アッシュ:You’re hurry(早かったな).
椿女:ありがとうございます。それで、わたしをここに呼んだご用件とは?
アッシュ:気が早いな。だが、無駄の無い姿勢――チルドレンとしては上出来だ。
GM:そう言ってアッシュは卓上のリモコンを操作してプロジェクタの映像を切り替える。
椿女:この画像の人物は?
アッシュ:これが今回、お前がターゲットとするFHのチルドレン――マスター・グラトニー。名前からも判る通り、マスタークラスのチルドレンだ。

 ――マスタークラス。FHの中でも、極めて強大な力を持つごく一部の構成員にのみ与えられるコードネーム。
『マスター』という言葉が頭に付くコードネームを持つ者は例外なく、最強クラスの強力なオーヴァードである。

アッシュ:ヤツの能力は折り紙つきだ。歴代のマスタークラスを冠する構成員の中でも、相当の手練であることは判明している。
椿女:この彼をわたしはどうすればよろしいのでしょうか?
アッシュ:ヤツは今まで我々UGNに相当の打撃を与えていてね。既に危険性を察知したUGN日本支部は精鋭部隊を向かわせた。だが、ものの数分のうちに全て返り討ちに遭ったのだよ。しかも、ヤツには恐るべき能力があることが判明している。
椿女:恐るべき……能力……?
アッシュ:最近発見された「ウロボロス」シンドローム――知っているな?
椿女:ええ。噂くらいは。
アッシュ:ヤツはその能力者だ。そして、ヤツは倒した敵の能力を喰らって……その分だけ――強くなる。
椿女:ということは、その精鋭部隊を『喰った』ということですね。
アッシュ:そうだ。そして、今のヤツを止められるとしたら――率直に言えば、少なくともこの日本においてはヤツに比肩しうる戦力はエリートと目される“雪月花”、だったか……いや、“アブソリュート・ゼロ”と呼んだ方がいいかな?
椿女:いえ、わたしなどまだまだです。
アッシュ:謙遜はいい。早速、ヤツの対処に向かってくれ。先刻、目撃情報が入った。
椿女:了解しました。“雪月花”道本椿女、出撃致します。
アッシュ:それと、一つ付け加えておく。ヤツには同じくマスタークラスのエージェント――マスター・ミザリィが同行している。その点にも気をつけたまえ。
椿女:マスタークラスが二人……ですか? これは随分と強敵ですね。
アッシュ:しかも、だ。我々にとって更に都合が悪い事に、ヤツの台頭に合わせて他のFHエージェント、ならびにチルドレン等の有力な連中が我々に対し、一斉に攻勢へと討って出たのだよ。ゆえに、現状では我々はそちらの対処に手一杯だ。
椿女:だから、わたし一人に彼の対処を任せる……と?
アッシュ:間違ってはいない。だが、少なくとも数人の精鋭は随行させるつもりだ。もっとも、UGNの誇る傑物たる君にしてみれば、それで十分だろうが。
椿女:問題ありません。“雪月花”――任務、遂行します。

 

 UGN日本支部より椿女は数人の精鋭チルドレンと共にバンに乗り込み、作戦ポイントへと向かう。
 グラトニーが目撃されたとされる地点へと近付いた時、車内に緊張が走った。
 バンの進路を塞ぐように車道に立つ一人の少年。凶暴な笑みを浮かべるその少年こそ、マスター・グラトニー。
 
GM:椿女、君と精鋭チルドレンたちが乗ったバンのフロントガラスの向こうでグラトニーが笑うと、彼の背後から巨大な影の手が盛り上がり、走ってくるバンに真正面から襲いかかる。
椿女:いきなり仕掛けてきましたね。
GM:運転しているチルドレンは相手がグラトニーだと分かるや否や、更にアクセルを踏み込む。だがしかし、影の手は平手でバンの車体を受け止め、押さえこむと、凄まじい力で張り倒す! 勢いが削がれきらず、横倒しのまま道路を滑っていくバンが爆破炎上。だが、爆炎の中からチルドレンたちが一斉に飛び出す。
椿女:早速、手痛い一撃というわけですか。では、わたしは爆炎を凍らせながら、ゆっくりと歩み出ましょう。
GM:了解。君が歩み出るのと同時、先んじて飛び出したチルドレンたちがグラトニーに同時攻撃をかけるが、その全てが影の手によって殴られ、叩き落とされ、掴まれ、そして叩きつけられるなどの攻撃で次々と倒されていく。
椿女:やはり彼等でも無理でしたか。どうやら……マスタークラスの称号は伊達ではないようですね。
GM:しかも、チルドレンたちも物質を変化させて作った武器で攻撃したり、重力弾を放ったりしているが、そのことごとくが、影の手に触れた瞬間に霧散するように消えたり、元の物質に戻ってしまったりする。
椿女:なるほど――異能によって生み出された攻撃を『喰って』いるのですね。まさに『グラトニー』のコードネームを冠する存在であるだけのことはあります。
GM:瞬く間に精鋭チルドレンたちを片付けた彼は、残る一人となった君に目を向け、再び凶暴な笑みを浮かべると共に口を開く。
椿女:なるほど。では、それを冷静に見返しましょう。
グラトニー:そこの嬢ちゃん。お前が一番、喰い甲斐がありそうだなァッ!
椿女:クスッと笑って返事をします。わたしのようなやせっぽちのチビっ子を食べてもしょうがないですよ?
グラトニー:俺の鼻はごまかせねェ。俺は今、お前が喰いたくて、喰いたくて仕方がねェんだよ……!
椿女:あくまで冷静に返します。それはどうも。
GM:すると彼の傍らに立っていたミザリィがぽってりとした唇に人差し指の先端をあてながら艶然と微笑み、彼に言うよ。
ミザリィ:あらぁ、グラトニーがそんなこと言うなんて珍しいわねぇ。妬けちゃうわぁ。
グラトニー:(凶暴な笑みを浮かべ)心配すんな。お前はいっち番最後に、ゆっくりと味わった上で喰ってやるからよォ。
ミザリィ:(嫣然と微笑み)約束よ。
椿女:なるほど。では、それに気付いて彼女の方を見つつ問いかけます。終わりましたか? 
グラトニー:悪ィなァ! 待たせちまってよォ!
椿女:いえ。あなた達がマスター・グラトニーとマスター・ミザリィで間違いないですね?
グラトニー:ああ、そうだぜ――当然、俺の能力も嫌ってほど知ってんだろ? だから、とっとと俺に喰われちまいなァッ!
GM:そう言ってグラトニーは凶暴な笑みと共に巨大な影の手を椿女に向けて飛ばす。
椿女:即座に能力を発動。超低温の冷気を操り、巨大な氷壁を作りだして影の手をガードします。
GM:了解。君の作った氷壁に激突した影の手は力づくで氷壁を突破しようと試みるも、なかなか突破できない。
椿女:私の冷気、あなたの能力で『喰え』ますか?
グラトニー:上等ッ! それでこそ喰い甲斐があるってもんだろうがよォッ!

 

 ぶつかりあう氷壁と影の手。だが、次第に影の手が氷壁に触れていたところから凍り始めた。
 半分ほどが凍りついた所でグラトニーは影の手を握り拳にすると、荒っぽく氷壁に叩きつける。
 それにより氷壁は砕かれたものの、半ば凍りついた影の手もただでは済まず、微塵に砕けた後に霧散する。


椿女:次の攻撃に備えて、いつでも再び氷壁を作り出せるように冷気を収束し、構えておきます。
GM:だが、グラトニーは君に背を向けると傍らのミザリィに向き直る。ウェーブのかかった彼女の髪をかきあげ、露わになったうなじに触れながら、彼は彼女に語りかけるよ。
グラトニー:俺は思うんだよ、ミザリィ。あの嬢ちゃんは、このままほっとけば――もっと美味くなる。
椿女:彼の背中に向けて問いかけます。マスター・グラトニー、あなたの目的は一体何なのです?
GM:その問いに対してグラトニーは今まで以上に凶暴な笑みを浮かべて答える。
グラトニー:この『世界』すべてを喰うことだ。
椿女:世界すべてを……喰う……?
GM:彼はそれだけ言うと、ミザリィと共に去っていく。
椿女:緊張が解けたので、ほっと息を吐きます。
GM:君が一息ついていると、救援要請を受けたUGNの部隊が緊急車両で駆けつけてくる。それには霧谷も乗っていて、君へと話しかけてくるよ。
椿女:血の流れる脇腹を押さえながら倒れ込みます。さっき能力をぶつけあった時に怪我したという演出で。
GM:了解。では、それに気付いた霧谷が慌てて君を抱きとめてくれる。
椿女:そのまま霧谷さんの腕の中で気絶します。
GM:了解。霧谷は椿女を車のシートに寝かせ、自分の上着をかけてくれる。それからしばらくして椿女が気付くと、いつもの温和な調子で語りかけてくるね。
霧谷:大丈夫ですか? ともかく、あなただけでも無事で良かった。
椿女:ありがとうございます。問題ありません。
霧谷:それは良かった。それでは、早速で悪いのですが、先程日本支部はマスター・グラトニーへの対応策として、かつて彼に壊滅させられた支部に新たな人員を配置し、対・マスター・グラトニーの前線基地とすることを決定しました。
椿女:わたしが次に行くべき所はその支部だということですか?
霧谷:その通りです。あなたは、あのマスター・グラトニーと交戦し、唯一引き分けた存在。間違いなく、あなたの力は必要になるでしょう。
椿女:了解しました。“雪月花”道本椿女、新たな支部へと向かいます。
GM:では、椿女がこの任務を了承した所でシーン終了だ。
 

本塚届
作家:加々見繍
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