そして、
ゲームセンターで色んなゲームを遊ぶ。
霧河は、大好きな、「グロリアスライダー」の格闘ゲームばかり
プレイしていた。
〝ガチャガチャガチャガチャ〟
「お前、ホント、それ、好きだな~」
「いや、だって、そりゃ、僕の幼い頃からの憧れのヒーローなんだもん!!仕方ないじゃん!!」
そこで、同僚達は笑った。
「ブッ!!アッハッハッ!!」
「笑うな~!!何がおかしいっ!?」
すると・・・・・・
「いや~、悪りぃ悪りぃ。お前、ゲームが
そこまで上手いの意外過ぎてよ」と皆が言う。
確かに霧河はその時、そのゲームで一番強いはずの敵キャラを
ノーダメージで秒殺していた。
霧河は、少し顔を赤くしながら笑い、
「あ・・・ありがと・・・」と言った。
「しかしよ~、お前、そんなにゲームが上手いんなら、何でいつも俺達と一緒にゲーセン行かねぇんだよ」
「ちょっと皆、耳貸して」
「ん?」
「いや、ここで言うのも、アレなんだけど、僕、騒がしいところやハメを外してどこまでも暴れるような人が多いところ、
苦手なんだ」
「・・・・・・そうか」
たっぷり遊んだ後、本日のメインイベントである呑み会を
するため、居酒屋へ向かった。
しかし、
向かう最中、悩んでいる中年の夫婦を見かけた。
「どうしたんだろ?」
その事に、同僚達は気づいていない。
「どうした?霧河」
「いや、何でもない・・・・・・」
そして、
居酒屋に着き、飲み会が始まった。
「カンパ~~~イ!!!」
しかし、
霧河は相変わらず、酒は飲まず、飲むのは
コーラやメロンソーダやオレンジジュースのような
ソフトドリンクばかりである。
「お前、やっぱ、そこは譲らねぇんだな~」
「ん?あ~、コレ?ごめん!!やっぱ、
どうしても、酒は、僕の口に合わないから飲めないんだよ」
やっぱり、本当の事は言いづらいし、もし、言うと、
同僚達に気を遣わせて、同時に、
かなり空気を重くしてしまうため、
「両親が相手の車の飲酒運転による交通事故で死んだ」という
トラウマがある事は言えない・・・・・・
「でも、霧河、今日は安心したよ」
「ん?何が?」
「いや、お前、俺達の遊びや飲み会の誘いは
断る事がめっちゃ多くて、
〝ひょっとしたら俺達、お前に嫌われてるんじゃないか?〟って
心配してたんだよ。前にお前抜きで呑み会に行った時も、
実は、俺達、そんな話、してたんだけど。だけど、
ゲーセンにしろ、パチンコにしろ、誘いに乗らない理由が
〝俺達が嫌われてるから〟じゃなくて良かったよ。ちゃんとした
理由があったんだな!!まぁ、さっき言ってたあの話を聞くと、
多分、居酒屋が苦手なのも、同じような理由だろうけど・・・」
「ん~・・・まぁ・・・そうだけど・・・」
「やっぱりな。でも、悪かったな。苦手なのに、何度も
付き合わせようとして・・・実際、今日はもう、
無理やり連れてきちまったし」
「あ~、いや~、僕の方こそ、いつも誘いを断ってばかりで
ごめんね!!それに、いつもは断ってるけど、今日は皆と遊んで
みて、凄く楽しかったし、今日の事は全部、良い思い出に
なったよ!!それに、ゲーセンも居酒屋も、確かに騒がしいけど、皆と一緒に楽しめば、意外と気にならなかったし!!!」
「そっか!!なら良かった!!!」
「うん!!!」
「あ~、そういえば・・・」
「何?」
「話、変わるけど、この会社の〝Excitement Story〟って、
どういう意味か知ってるか?」
「え~っと、〝Excitement〟は〝興奮〟、あるいは、〝感動〟あるいは、〝刺激的な〟とか、たくさん意味があるから・・・
〝そういう物語〟って事かな?」
「そうだよ。俺達も、これから、俺達自身の人生の中で、
〝興奮〟〝感動〟〝刺激〟それら全てがある最高の物語
〝Excitement Story〟を
創っていこうぜ!!!」
「何だよそれ!(笑)てか、欲張り過ぎ!!
(笑)てか、クサ過ぎ!!そのセリフ!!(笑)」
「あ~、そういや、そうだな!!(笑)」
皆、一斉に笑い・・・・・・
「アッハッハッハッハッ!!!」
話しながら、霧河は思った。
(そうか~。友情って、こんな良いモンだったんだな・・・もし、今もまだ、父さんと母さんがいたら、コイツらに会わせてやりたいし、自慢してやりたい・・・でも、それは、どうやっても、
叶わない願いなんだよな・・・)
霧河は、寂しそうな顔をした。
「ん?どうした?霧河」
「ん~ん~!!何でもない!!!」
「そっか」
(ほ~ら!!また心配してくれた!!本当に良いヤツらだよ!!!コイツらは!!!)
「よし、じゃあ、いっぱい遊んだし、いっぱい食ったし、いっぱい飲んだし、いっぱい喋ったし、今日は、そろそろ帰りますか!!!」
「うん!!!今日はめっちゃ楽しかったな!!!」と一同、
声を揃える。
「じゃあ、解散!!!それでは、良いお年を!!!」
「良いお年を!!!」
その後、家に帰る最中、霧河は、
また考え事をしていた。
「にしても、俺は、自分でも気づかないうちに、こんな良いモン
手に入れてたなんてな~」と、いつも、どこか影のある霧河が、
いつになく明るく笑っている。
「〝興奮〟〝感動〟〝刺激〟それら全てがある最高の物語か~
俺がクリスマスにいつもやってる事は、
俺からプレゼントをもらった子供達にとって、
そんな〝Excitement Story〟になってるのかな?もし、
本当にそうだったら凄く嬉しいんだけど。
そんな都合の良い事があるかな?(笑)」
帰ろうとする最中、また、さっき見た、悩んでいる中年の夫婦を
見た。
(ア、アレ?また?)
気になるので、二人の跡をつけて、二人が
帰って、その二人の自宅の庭で、座って缶コーヒーを飲みながら
話し合っているところを物陰から覗いて、聞いた。
すると、
二人の話を聞くと、どうやら二人は、
同じ会社で知り合い、結婚し、
同じ会社で働いていたそうだが、半年前に
リストラさせられたという。
それに、
二人とも、特別な才能もなく、色々と冴えないのだそうだ。
そして、二人は現在、
〝中卒〟という低学歴や不景気などのせいもあって再就職も
出来ず、今までに得た財産ももうすぐ尽きてしまうらしい。
「一体、どうすれば?」と泣きながら
言っている。だが、それを見て、霧河は、
「あ、そうだ!」と、閃いた。