サンタクロースパイ

53.また、あの夫婦が!!!

その後、家に帰る最中、霧河は、

また考え事をしていた。



「にしても、俺は、自分でも気づかないうちに、こんな良いモン

手に入れてたなんてな~」と、いつも、どこか影のある霧河が、

いつになく明るく笑っている。



「〝興奮〟〝感動〟〝刺激〟それら全てがある最高の物語か~

俺がクリスマスにいつもやってる事は、

俺からプレゼントをもらった子供達にとって、

そんな〝Excitement Story〟になってるのかな?もし、

本当にそうだったら凄く嬉しいんだけど。

そんな都合の良い事があるかな?(笑)」



帰ろうとする最中、また、さっき見た、悩んでいる中年の夫婦を

見た。



(ア、アレ?また?)



気になるので、二人の跡をつけて、二人が

帰って、その二人の自宅の庭で、座って缶コーヒーを飲みながら

話し合っているところを物陰から覗いて、聞いた。



すると、

二人の話を聞くと、どうやら二人は、

同じ会社で知り合い、結婚し、

同じ会社で働いていたそうだが、半年前に

リストラさせられたという。



それに、

二人とも、特別な才能もなく、色々と冴えないのだそうだ。



そして、二人は現在、

〝中卒〟という低学歴や不景気などのせいもあって再就職も

出来ず、今までに得た財産ももうすぐ尽きてしまうらしい。



「一体、どうすれば?」と泣きながら

言っている。だが、それを見て、霧河は、

「あ、そうだ!」と、閃いた。

54.人生を救うプレゼント

霧河にとって、休日という事になっている

元日に、クリスマスが終わって数日経った後だが、クリスマスに

着ているサンタクロースの服を着て、その家に、いつもの

〝ピッキング〟で侵入する事にした。



それから、時間が経ち・・・・・・



2011年1月1日(土)。年が明けたその日の深夜、霧河は、

その家にやって来た。



「う~ん・・・深夜とはいえ、元日だし、

相手は大の大人だ。起きてなきゃ良いけど」



〝ガチャ〟



入ってみると・・・・・・



「おっ!良かった!!大丈夫だな!!」



リビングには誰もおらず、至って静かだった。なので、そこで、

その夫婦が寝ている事が分かった。寝室へ向かい、枕元に、

あるプレゼントを置いた。そして、帰った。今回も、

ちゃんとヘマをせず、相手を起こさず、プレゼントを置き、

その家を出た。



「フ~ッ!!コレで、あの夫婦、幸せになれると良いな!!」と

言って去った。



翌朝、その夫婦の二人が枕元を見てみると、

とても大きな箱があった。



「ん?何だコレ?」



箱を開けてみると、その中には、

「読者の才能を発掘するための本」が3冊、

「社会心理学マニュアル」が4冊

「事業をする起業マニュアル」が5冊、

「接客の心理学マニュアル」が3冊、

計15冊の本、そして、「1000万円のお金が入っているケース」と、

「手のひらサイズほどの招き猫の置き物」と、

「手紙」が入っている。



手紙を読んでみると、

「〝拝啓、名前も知らないあなた〟、

おはようございます。そして、あけましておめでとうございます。私は、普段、イタリアに住んでいますが、何度も日本に

やって来た事があり、日本が大好きになり、日本の文化や日本語を勉強し、日本語を自由に話せるようになったサンタクロースです。イタリアのサンタクロースは、毎年、冬、

年末から1月6日まで活動しています。今、

これらのプレゼントを手に取り、この手紙を読んでいるあなたは、きっと、仕事やお金の事で、さぞ悩んでいるでしょう。ですが、

この1000万円と、色々なマニュアルと、招き猫があれば大丈夫。招き猫は神社にいる猫であり、キリスト教の猫ではありませんが、

私は、どの宗教も否定しないし、招き猫は、とても可愛いと

思っています。このとても可愛い招き猫をリビングかどこかに

置いて、色々なマニュアルを読んで、1000万円を利用して、

何か自分に合う仕事を始めて、

毎日、招き猫に生活を支えてもらいながら、癒されながら、

励まされながら、人生を頑張ってください。

これらは、私からのクリスマスプレゼントであり、お年玉です。

〝サンタクロースより〟」と、書いてある。

パソコンで書いてあるが。



すると、その夫婦の夫が

「何だこりゃ?めちゃくちゃ変な話だな。サンタクロースがもし、本当にいたとしても、普通、サンタクロースがこんな事、

するか・・・?しかも、この手紙、どう見ても、

パソコンで書いてあるだろ?けど、イタズラだとしたら、

こんなに色々置いてあるのはおかしいな~。お札も、

ちゃんと透かしがあるから、ニセ札じゃなさそうだし」と言った。



だが、隣にいた妻は、

「そうね~・・・でも、良いじゃない!!

良く分かんないし、怪しいお金とプレゼントだけど、もう、

私達には、全然余裕がないんだから!!!」と言う。



「う~ん・・・それもそうだな。藁にもすがる思いで、乗っかってみるか」

「うん!!ていうか、こんなの、藁どころじゃないぐらい頼もしいわよ!!!」

「そうかもな!!!」



「ねぇ、私達、つい昨日まで、明日からどう生きていけば良いかすら分かんなかったけど、元日の今日、こんなに良い事があったから、とっても良い1年になりそうね!!!」

「・・・そ・・・それは・・・どうか分からないけど・・・・・・」



そう、霧河は、実は、株や他の会社達に関する知識も豊富で、

株取引が上手く、普段は、全く使わないだけで、株取引で、

何千万円もの大金をしょっちゅう儲けている。



しかし、あまり、

自分が大金持ちだという事や、株取引が得意だという事を

たくさんの人達に知られてしまったら、大変な事になるので、

それは、全く他人に話さない。



しかし、そうやって、

株によって稼いだ、とても大きな財産を、あの夫婦に渡したのだ。霧河があの手紙に書いた、「差出人が元々は、イタリアにいて、

日本の文化や日本語を勉強した」というのは、もちろん嘘だが、

〝イタリアのサンタクロースが毎年、1月6日まで活動している〟というのは、実際に、イタリアで伝えられている説だ。



霧河は、少しでも、〝プレゼントはサンタクロースが渡している〟と、信じてもらうために、その説を利用したのだ。

もし、ネットで検索されても、

(これは本当にサンタさんがやってるんだ)と思ってもらうために。

55.父との思い出

翌朝、霧河は、起きた。



そして、朝から

「窓際族」へ向かった。店長に言われた通り、昔、両親から

もらった、大切なアコースティックギターを持って・・・・・・



外から見ても分かるが、今日は、色々と

オシャレな飾りつけをしてある。



〝カランコロン〟



「いらっしゃい。おっ!今日は、パーティだとは言ったけど、

まさか、朝から来てくれるなんて!!!」

「はい!!!今日のパーティ、楽しみ過ぎて、もう、

ワクワクしちゃって!!!あ、それと、

あけましておめでとうございます!!!」

「お、そうだった!!!あけましておめでとう!!!危うく

言い忘れるとこだったよ!!」



「そうですね!!今日から2011年ですね!!!」

「そうだな!!!」

「パ~ッ!!とやりましょう!!!あ、そういえば、まだ、ここで、モーニング注文した事ないんで、モーニングをください!!!」「はいよ!!!」



〝コト〟



「わ~!!美味しそう!!!いただきます!!!あ、美味しい!!!」

「ありがとうな!!!」

「最高に美味しいです!!!」



そう言って、霧河は突然、泣いた。



「え?おい!?どうした!?霧河さん!!」

「あ、いえ!!何でもありません!!!」

「そっか・・・・・・」



実は、店長・窓河さんが作った、そのトーストやゆで卵の味が、

霧河の母以上に料理が得意な霧河の父が、休日に良く作ってくれていた、トーストやゆで卵の味に、とても良く似ていたのである。



「でも、そんなに喜んでくれて嬉しいよ!!ここの店長、

やってて良かったよ!!!」

「いえ!!こちらこそ、こんな美味しい料理達を、このお値段で

食べさせてくださってありがとうございます!!!」



霧河は、ムシャムシャと食べた。

56.年明けパーティ当日

「しかし、俺は、〝会社で働く〟って事が

合わなかったからこの仕事を始めたけど、前に、

霧河さんの話を聞いた時、本当に幸せにやってるんだな~」と

思ったよ。

「そうですか?」

「ああ!!色々と、良い仕事仲間を持てたみたいで、

凄く羨ましかった!!!」

「そうですか!!!」



「あ、そうだ!!今度、その色んな友達をここへ連れきなよ!!」

「良いですね!!それ!!!でも、僕、このお店が

凄く気に入ったから、仕事仲間達には悪いけど、

ここを隠れ家にしたいんですよ。いつか、仕事仲間達が

自分でここを見つけるまでは」

「そうか・・・・・・まぁ、それも、良いんじゃねぇのかな?!」

「はい!!!」



そして、時間が経ち、13時00分、お客さんが集まり、

〝年明けパーティ〟が始まった。



霧河は、弾き語りで演奏を始める。まず、1曲目は、

「気取ろうぜ」だった。コレは、霧河が、

大切な両親が死に、孤独になってしまった霧河が

自分を慰めたり、応援したりするために作った曲だ。



「辛い 苦しい 悲しい そんな事もあるさ

逃げ出したくて・・・

この世界で自分って人間はたった一人だから・・・

いっそ気取ろうぜ

寂しいけど 今日は星空の下で

哀愁漂う一匹狼を演じよう♪?」という曲だ。



演奏した後、

周りにいたお客さん達は、拍手しながら

「カッコ良くて渋い!!!」と言ってくれた。



両親へのあの哀悼の曲「いつか僕の心は・・・」は、

少し切ない曲でもあるため、2曲目に歌った。



「あの日から ずっと絶望していた

心に穴が開いてしまった 大きな大きな穴

考えれば苦しい 忘れようとすれば寂しい

どうすれば良いの? でも思った

ねぇ いつかきっと 変わってみせるよ

強くなってみせるよ あなたは大切な僕の一部だから♪?」

だが、その曲を演奏した後も、周りのお客さん達が、

拍手しながら、皆、

「へ~!素敵な曲!!」と言ってくれた。

「ありがとうございます!!!」と霧河は答えた。



(父さん、母さん、このギターを使って、ちゃんと皆を喜ばせる

事が出来たよ!!!)



だが、その曲が、死んだ両親への感謝の気持ちを込めて作った曲だとは、あえて言わなかった。そして、たくさん演奏したり、色々食べたり、色々喋った後、

パーティが終わった。



「フ~ッ!!楽しかったな~!!!」と、

その後、15時頃に店を出た。

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