霧河にとって、休日という事になっている
元日に、クリスマスが終わって数日経った後だが、クリスマスに
着ているサンタクロースの服を着て、その家に、いつもの
〝ピッキング〟で侵入する事にした。
それから、時間が経ち・・・・・・
2011年1月1日(土)。年が明けたその日の深夜、霧河は、
その家にやって来た。
「う~ん・・・深夜とはいえ、元日だし、
相手は大の大人だ。起きてなきゃ良いけど」
〝ガチャ〟
入ってみると・・・・・・
「おっ!良かった!!大丈夫だな!!」
リビングには誰もおらず、至って静かだった。なので、そこで、
その夫婦が寝ている事が分かった。寝室へ向かい、枕元に、
あるプレゼントを置いた。そして、帰った。今回も、
ちゃんとヘマをせず、相手を起こさず、プレゼントを置き、
その家を出た。
「フ~ッ!!コレで、あの夫婦、幸せになれると良いな!!」と
言って去った。
翌朝、その夫婦の二人が枕元を見てみると、
とても大きな箱があった。
「ん?何だコレ?」
箱を開けてみると、その中には、
「読者の才能を発掘するための本」が3冊、
「社会心理学マニュアル」が4冊
「事業をする起業マニュアル」が5冊、
「接客の心理学マニュアル」が3冊、
計15冊の本、そして、「1000万円のお金が入っているケース」と、
「手のひらサイズほどの招き猫の置き物」と、
「手紙」が入っている。
手紙を読んでみると、
「〝拝啓、名前も知らないあなた〟、
おはようございます。そして、あけましておめでとうございます。私は、普段、イタリアに住んでいますが、何度も日本に
やって来た事があり、日本が大好きになり、日本の文化や日本語を勉強し、日本語を自由に話せるようになったサンタクロースです。イタリアのサンタクロースは、毎年、冬、
年末から1月6日まで活動しています。今、
これらのプレゼントを手に取り、この手紙を読んでいるあなたは、きっと、仕事やお金の事で、さぞ悩んでいるでしょう。ですが、
この1000万円と、色々なマニュアルと、招き猫があれば大丈夫。招き猫は神社にいる猫であり、キリスト教の猫ではありませんが、
私は、どの宗教も否定しないし、招き猫は、とても可愛いと
思っています。このとても可愛い招き猫をリビングかどこかに
置いて、色々なマニュアルを読んで、1000万円を利用して、
何か自分に合う仕事を始めて、
毎日、招き猫に生活を支えてもらいながら、癒されながら、
励まされながら、人生を頑張ってください。
これらは、私からのクリスマスプレゼントであり、お年玉です。
〝サンタクロースより〟」と、書いてある。
パソコンで書いてあるが。
すると、その夫婦の夫が
「何だこりゃ?めちゃくちゃ変な話だな。サンタクロースがもし、本当にいたとしても、普通、サンタクロースがこんな事、
するか・・・?しかも、この手紙、どう見ても、
パソコンで書いてあるだろ?けど、イタズラだとしたら、
こんなに色々置いてあるのはおかしいな~。お札も、
ちゃんと透かしがあるから、ニセ札じゃなさそうだし」と言った。
だが、隣にいた妻は、
「そうね~・・・でも、良いじゃない!!
良く分かんないし、怪しいお金とプレゼントだけど、もう、
私達には、全然余裕がないんだから!!!」と言う。
「う~ん・・・それもそうだな。藁にもすがる思いで、乗っかってみるか」
「うん!!ていうか、こんなの、藁どころじゃないぐらい頼もしいわよ!!!」
「そうかもな!!!」
「ねぇ、私達、つい昨日まで、明日からどう生きていけば良いかすら分かんなかったけど、元日の今日、こんなに良い事があったから、とっても良い1年になりそうね!!!」
「・・・そ・・・それは・・・どうか分からないけど・・・・・・」
そう、霧河は、実は、株や他の会社達に関する知識も豊富で、
株取引が上手く、普段は、全く使わないだけで、株取引で、
何千万円もの大金をしょっちゅう儲けている。
しかし、あまり、
自分が大金持ちだという事や、株取引が得意だという事を
たくさんの人達に知られてしまったら、大変な事になるので、
それは、全く他人に話さない。
しかし、そうやって、
株によって稼いだ、とても大きな財産を、あの夫婦に渡したのだ。霧河があの手紙に書いた、「差出人が元々は、イタリアにいて、
日本の文化や日本語を勉強した」というのは、もちろん嘘だが、
〝イタリアのサンタクロースが毎年、1月6日まで活動している〟というのは、実際に、イタリアで伝えられている説だ。
霧河は、少しでも、〝プレゼントはサンタクロースが渡している〟と、信じてもらうために、その説を利用したのだ。
もし、ネットで検索されても、
(これは本当にサンタさんがやってるんだ)と思ってもらうために。
翌朝、霧河は、起きた。
そして、朝から
「窓際族」へ向かった。店長に言われた通り、昔、両親から
もらった、大切なアコースティックギターを持って・・・・・・
外から見ても分かるが、今日は、色々と
オシャレな飾りつけをしてある。
〝カランコロン〟
「いらっしゃい。おっ!今日は、パーティだとは言ったけど、
まさか、朝から来てくれるなんて!!!」
「はい!!!今日のパーティ、楽しみ過ぎて、もう、
ワクワクしちゃって!!!あ、それと、
あけましておめでとうございます!!!」
「お、そうだった!!!あけましておめでとう!!!危うく
言い忘れるとこだったよ!!」
「そうですね!!今日から2011年ですね!!!」
「そうだな!!!」
「パ~ッ!!とやりましょう!!!あ、そういえば、まだ、ここで、モーニング注文した事ないんで、モーニングをください!!!」「はいよ!!!」
〝コト〟
「わ~!!美味しそう!!!いただきます!!!あ、美味しい!!!」
「ありがとうな!!!」
「最高に美味しいです!!!」
そう言って、霧河は突然、泣いた。
「え?おい!?どうした!?霧河さん!!」
「あ、いえ!!何でもありません!!!」
「そっか・・・・・・」
実は、店長・窓河さんが作った、そのトーストやゆで卵の味が、
霧河の母以上に料理が得意な霧河の父が、休日に良く作ってくれていた、トーストやゆで卵の味に、とても良く似ていたのである。
「でも、そんなに喜んでくれて嬉しいよ!!ここの店長、
やってて良かったよ!!!」
「いえ!!こちらこそ、こんな美味しい料理達を、このお値段で
食べさせてくださってありがとうございます!!!」
霧河は、ムシャムシャと食べた。
「しかし、俺は、〝会社で働く〟って事が
合わなかったからこの仕事を始めたけど、前に、
霧河さんの話を聞いた時、本当に幸せにやってるんだな~」と
思ったよ。
「そうですか?」
「ああ!!色々と、良い仕事仲間を持てたみたいで、
凄く羨ましかった!!!」
「そうですか!!!」
「あ、そうだ!!今度、その色んな友達をここへ連れきなよ!!」
「良いですね!!それ!!!でも、僕、このお店が
凄く気に入ったから、仕事仲間達には悪いけど、
ここを隠れ家にしたいんですよ。いつか、仕事仲間達が
自分でここを見つけるまでは」
「そうか・・・・・・まぁ、それも、良いんじゃねぇのかな?!」
「はい!!!」
そして、時間が経ち、13時00分、お客さんが集まり、
〝年明けパーティ〟が始まった。
霧河は、弾き語りで演奏を始める。まず、1曲目は、
「気取ろうぜ」だった。コレは、霧河が、
大切な両親が死に、孤独になってしまった霧河が
自分を慰めたり、応援したりするために作った曲だ。
「辛い 苦しい 悲しい そんな事もあるさ
逃げ出したくて・・・
この世界で自分って人間はたった一人だから・・・
いっそ気取ろうぜ
寂しいけど 今日は星空の下で
哀愁漂う一匹狼を演じよう♪?」という曲だ。
演奏した後、
周りにいたお客さん達は、拍手しながら
「カッコ良くて渋い!!!」と言ってくれた。
両親へのあの哀悼の曲「いつか僕の心は・・・」は、
少し切ない曲でもあるため、2曲目に歌った。
「あの日から ずっと絶望していた
心に穴が開いてしまった 大きな大きな穴
考えれば苦しい 忘れようとすれば寂しい
どうすれば良いの? でも思った
ねぇ いつかきっと 変わってみせるよ
強くなってみせるよ あなたは大切な僕の一部だから♪?」
だが、その曲を演奏した後も、周りのお客さん達が、
拍手しながら、皆、
「へ~!素敵な曲!!」と言ってくれた。
「ありがとうございます!!!」と霧河は答えた。
(父さん、母さん、このギターを使って、ちゃんと皆を喜ばせる
事が出来たよ!!!)
だが、その曲が、死んだ両親への感謝の気持ちを込めて作った曲だとは、あえて言わなかった。そして、たくさん演奏したり、色々食べたり、色々喋った後、
パーティが終わった。
「フ~ッ!!楽しかったな~!!!」と、
その後、15時頃に店を出た。
その後は、ヒマだったので、映画館へ映画を観に行った。
作品は、映画館内のポスターを見て、どれを観るかを決めた。
すると、去年のクリスマスにマフラーをプレゼントした女の子が
勧めてくれた、「私の幻想はホントにあった」のアニメ映画版が
上映されていた。
「へ~!コレは、今になって、アニメ映画化されてるのか!!!
じゃあ、コレ、観るか!!!」
観てみると、それは、ファンタジー作品で、
「ヒロインの女の子が、ずっと魔法の存在を信じていたが、周りの人達にそれを否定され、ある日、突然、魔法が存在する異世界に
飛ばされて、不思議な魔法使いの王子様に出会い、恋に落ちる」
という内容だった。
(へ~!!絵も凄く綺麗だし、凄く面白いな~!!!じゃあ、
この後、本屋行って、原作小説買おうっと!!!しかし、
こんなカッコ良い王子様と俺が似てるなんて・・・)と
思いながら、やがて、映画が終わった。
その後、
その同じ建て物の中にある本屋に寄り、原作小説を買う。
「良し、また今度、読もうっと!!!」