サンタクロースパイ

54.人生を救うプレゼント

霧河にとって、休日という事になっている

元日に、クリスマスが終わって数日経った後だが、クリスマスに

着ているサンタクロースの服を着て、その家に、いつもの

〝ピッキング〟で侵入する事にした。



それから、時間が経ち・・・・・・



2011年1月1日(土)。年が明けたその日の深夜、霧河は、

その家にやって来た。



「う~ん・・・深夜とはいえ、元日だし、

相手は大の大人だ。起きてなきゃ良いけど」



〝ガチャ〟



入ってみると・・・・・・



「おっ!良かった!!大丈夫だな!!」



リビングには誰もおらず、至って静かだった。なので、そこで、

その夫婦が寝ている事が分かった。寝室へ向かい、枕元に、

あるプレゼントを置いた。そして、帰った。今回も、

ちゃんとヘマをせず、相手を起こさず、プレゼントを置き、

その家を出た。



「フ~ッ!!コレで、あの夫婦、幸せになれると良いな!!」と

言って去った。



翌朝、その夫婦の二人が枕元を見てみると、

とても大きな箱があった。



「ん?何だコレ?」



箱を開けてみると、その中には、

「読者の才能を発掘するための本」が3冊、

「社会心理学マニュアル」が4冊

「事業をする起業マニュアル」が5冊、

「接客の心理学マニュアル」が3冊、

計15冊の本、そして、「1000万円のお金が入っているケース」と、

「手のひらサイズほどの招き猫の置き物」と、

「手紙」が入っている。



手紙を読んでみると、

「〝拝啓、名前も知らないあなた〟、

おはようございます。そして、あけましておめでとうございます。私は、普段、イタリアに住んでいますが、何度も日本に

やって来た事があり、日本が大好きになり、日本の文化や日本語を勉強し、日本語を自由に話せるようになったサンタクロースです。イタリアのサンタクロースは、毎年、冬、

年末から1月6日まで活動しています。今、

これらのプレゼントを手に取り、この手紙を読んでいるあなたは、きっと、仕事やお金の事で、さぞ悩んでいるでしょう。ですが、

この1000万円と、色々なマニュアルと、招き猫があれば大丈夫。招き猫は神社にいる猫であり、キリスト教の猫ではありませんが、

私は、どの宗教も否定しないし、招き猫は、とても可愛いと

思っています。このとても可愛い招き猫をリビングかどこかに

置いて、色々なマニュアルを読んで、1000万円を利用して、

何か自分に合う仕事を始めて、

毎日、招き猫に生活を支えてもらいながら、癒されながら、

励まされながら、人生を頑張ってください。

これらは、私からのクリスマスプレゼントであり、お年玉です。

〝サンタクロースより〟」と、書いてある。

パソコンで書いてあるが。



すると、その夫婦の夫が

「何だこりゃ?めちゃくちゃ変な話だな。サンタクロースがもし、本当にいたとしても、普通、サンタクロースがこんな事、

するか・・・?しかも、この手紙、どう見ても、

パソコンで書いてあるだろ?けど、イタズラだとしたら、

こんなに色々置いてあるのはおかしいな~。お札も、

ちゃんと透かしがあるから、ニセ札じゃなさそうだし」と言った。



だが、隣にいた妻は、

「そうね~・・・でも、良いじゃない!!

良く分かんないし、怪しいお金とプレゼントだけど、もう、

私達には、全然余裕がないんだから!!!」と言う。



「う~ん・・・それもそうだな。藁にもすがる思いで、乗っかってみるか」

「うん!!ていうか、こんなの、藁どころじゃないぐらい頼もしいわよ!!!」

「そうかもな!!!」



「ねぇ、私達、つい昨日まで、明日からどう生きていけば良いかすら分かんなかったけど、元日の今日、こんなに良い事があったから、とっても良い1年になりそうね!!!」

「・・・そ・・・それは・・・どうか分からないけど・・・・・・」



そう、霧河は、実は、株や他の会社達に関する知識も豊富で、

株取引が上手く、普段は、全く使わないだけで、株取引で、

何千万円もの大金をしょっちゅう儲けている。



しかし、あまり、

自分が大金持ちだという事や、株取引が得意だという事を

たくさんの人達に知られてしまったら、大変な事になるので、

それは、全く他人に話さない。



しかし、そうやって、

株によって稼いだ、とても大きな財産を、あの夫婦に渡したのだ。霧河があの手紙に書いた、「差出人が元々は、イタリアにいて、

日本の文化や日本語を勉強した」というのは、もちろん嘘だが、

〝イタリアのサンタクロースが毎年、1月6日まで活動している〟というのは、実際に、イタリアで伝えられている説だ。



霧河は、少しでも、〝プレゼントはサンタクロースが渡している〟と、信じてもらうために、その説を利用したのだ。

もし、ネットで検索されても、

(これは本当にサンタさんがやってるんだ)と思ってもらうために。

55.父との思い出

翌朝、霧河は、起きた。



そして、朝から

「窓際族」へ向かった。店長に言われた通り、昔、両親から

もらった、大切なアコースティックギターを持って・・・・・・



外から見ても分かるが、今日は、色々と

オシャレな飾りつけをしてある。



〝カランコロン〟



「いらっしゃい。おっ!今日は、パーティだとは言ったけど、

まさか、朝から来てくれるなんて!!!」

「はい!!!今日のパーティ、楽しみ過ぎて、もう、

ワクワクしちゃって!!!あ、それと、

あけましておめでとうございます!!!」

「お、そうだった!!!あけましておめでとう!!!危うく

言い忘れるとこだったよ!!」



「そうですね!!今日から2011年ですね!!!」

「そうだな!!!」

「パ~ッ!!とやりましょう!!!あ、そういえば、まだ、ここで、モーニング注文した事ないんで、モーニングをください!!!」「はいよ!!!」



〝コト〟



「わ~!!美味しそう!!!いただきます!!!あ、美味しい!!!」

「ありがとうな!!!」

「最高に美味しいです!!!」



そう言って、霧河は突然、泣いた。



「え?おい!?どうした!?霧河さん!!」

「あ、いえ!!何でもありません!!!」

「そっか・・・・・・」



実は、店長・窓河さんが作った、そのトーストやゆで卵の味が、

霧河の母以上に料理が得意な霧河の父が、休日に良く作ってくれていた、トーストやゆで卵の味に、とても良く似ていたのである。



「でも、そんなに喜んでくれて嬉しいよ!!ここの店長、

やってて良かったよ!!!」

「いえ!!こちらこそ、こんな美味しい料理達を、このお値段で

食べさせてくださってありがとうございます!!!」



霧河は、ムシャムシャと食べた。

56.年明けパーティ当日

「しかし、俺は、〝会社で働く〟って事が

合わなかったからこの仕事を始めたけど、前に、

霧河さんの話を聞いた時、本当に幸せにやってるんだな~」と

思ったよ。

「そうですか?」

「ああ!!色々と、良い仕事仲間を持てたみたいで、

凄く羨ましかった!!!」

「そうですか!!!」



「あ、そうだ!!今度、その色んな友達をここへ連れきなよ!!」

「良いですね!!それ!!!でも、僕、このお店が

凄く気に入ったから、仕事仲間達には悪いけど、

ここを隠れ家にしたいんですよ。いつか、仕事仲間達が

自分でここを見つけるまでは」

「そうか・・・・・・まぁ、それも、良いんじゃねぇのかな?!」

「はい!!!」



そして、時間が経ち、13時00分、お客さんが集まり、

〝年明けパーティ〟が始まった。



霧河は、弾き語りで演奏を始める。まず、1曲目は、

「気取ろうぜ」だった。コレは、霧河が、

大切な両親が死に、孤独になってしまった霧河が

自分を慰めたり、応援したりするために作った曲だ。



「辛い 苦しい 悲しい そんな事もあるさ

逃げ出したくて・・・

この世界で自分って人間はたった一人だから・・・

いっそ気取ろうぜ

寂しいけど 今日は星空の下で

哀愁漂う一匹狼を演じよう♪?」という曲だ。



演奏した後、

周りにいたお客さん達は、拍手しながら

「カッコ良くて渋い!!!」と言ってくれた。



両親へのあの哀悼の曲「いつか僕の心は・・・」は、

少し切ない曲でもあるため、2曲目に歌った。



「あの日から ずっと絶望していた

心に穴が開いてしまった 大きな大きな穴

考えれば苦しい 忘れようとすれば寂しい

どうすれば良いの? でも思った

ねぇ いつかきっと 変わってみせるよ

強くなってみせるよ あなたは大切な僕の一部だから♪?」

だが、その曲を演奏した後も、周りのお客さん達が、

拍手しながら、皆、

「へ~!素敵な曲!!」と言ってくれた。

「ありがとうございます!!!」と霧河は答えた。



(父さん、母さん、このギターを使って、ちゃんと皆を喜ばせる

事が出来たよ!!!)



だが、その曲が、死んだ両親への感謝の気持ちを込めて作った曲だとは、あえて言わなかった。そして、たくさん演奏したり、色々食べたり、色々喋った後、

パーティが終わった。



「フ~ッ!!楽しかったな~!!!」と、

その後、15時頃に店を出た。

57.愛が好きな小説

その後は、ヒマだったので、映画館へ映画を観に行った。



作品は、映画館内のポスターを見て、どれを観るかを決めた。



すると、去年のクリスマスにマフラーをプレゼントした女の子が

勧めてくれた、「私の幻想はホントにあった」のアニメ映画版が

上映されていた。



「へ~!コレは、今になって、アニメ映画化されてるのか!!!

じゃあ、コレ、観るか!!!」



観てみると、それは、ファンタジー作品で、

「ヒロインの女の子が、ずっと魔法の存在を信じていたが、周りの人達にそれを否定され、ある日、突然、魔法が存在する異世界に

飛ばされて、不思議な魔法使いの王子様に出会い、恋に落ちる」

という内容だった。



(へ~!!絵も凄く綺麗だし、凄く面白いな~!!!じゃあ、

この後、本屋行って、原作小説買おうっと!!!しかし、

こんなカッコ良い王子様と俺が似てるなんて・・・)と

思いながら、やがて、映画が終わった。



その後、

その同じ建て物の中にある本屋に寄り、原作小説を買う。



「良し、また今度、読もうっと!!!」

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