サンタクロースパイ

39.コーヒーを淹れる才能

窓河は、彼女に、「食器洗い、手伝おうか」と言った。



だが・・・



「あ~、良いわよ良いわよ!!窓河君はお客さんだし!!あ!でも、この後、もし興味があったら、コーヒー入れてみない?!」

「コーヒー?こんな時間に?睡眠の妨げにならねぇか?」

「良いのよ!良いのよ!私は明日、仕事、休みだし!!それに、

私ン家は皆、コーヒーが好きなの!!私も、お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも!!」

「へ~!じゃあ、弟君や妹さんは?」

「あ~、あの子達は皆、カフェオレは好きよ!!」

「そうなのか~」



窓河は、その時、窓河にとっては、初めての事だったが、

コーヒーを淹れてみようと思った。



「うん。分かった。俺はやった事はないけど、やってみるよ」

「ホントに!?ありがとう!!」

「いやいや。良いよ良いよ」

「じゃあ、やり方を教えるわね!こうやって、粉の中に〝の〟の字を書くようにお湯を入れるの!!」



そうして、彼女に言われた通りに、窓河は、お湯を入れた。



〝ジャージャー〟



「そうそう!上手上手!!窓河君、ホントに初めてなの!?」

「え?初めてだけど、こんなの、誰でも出来るだろ」

「そんな事ないよ!コレって、簡単そうに見えて、実は、

意外と難しくて、とっても奥が深いのよ!!」

「そうなの?」

「そうよ」

「そっか~。何だか良く分かんねぇけど、

そう言われるとテレるな (笑)。嬉しいよ!ありがとうな!!」

「いえいえ!美味しいコーヒー、出来そうだな~!!♪」その後、窓河は、次の日も仕事があるため飲まず、彼女の兄弟や姉妹も

先に寝たため飲まなかったが、彼女と彼女の家族は、

窓河が淹れたそのコーヒーを飲んだ。

「いただきます!!!」



そして、皆いっせいに「凄く美味しい!!」と言った。

彼女は、「窓河君、凄く美味しいよ!!ホントに初めて淹れたの!?」と言った。

「ありがとう。あ~、初めてだけど」と言った。



「凄い~!!じゃあ、また、いつでもウチに

来てよ!!また窓河君のコーヒーが飲みたい~!!」

「良いけど」

「良いの!?やった~!!!」

「こちらこそ!今日はありがとう!!また来ても良いんだな!!ありがとう!!また来させてもらうよ!!」

「じゃあね~!!」

「うん!じゃあね~!!」と言って、

その日は終わった。


40.居心地の悪い職場

そして、次の日、彼女は会社にはいないが、

窓河は、いつも通り働いている。しかし、やっぱり、

仕事は冴えない。



「は~。やっぱ俺、仕事はダメだな~・・・」



それは、相変わらずだった。しかし、そんな中、昨日、

彼女が言っていた言葉を思い出した。「いつでも来てね」と。

「いつでも来てね・・・か」



その日、夜になり、仕事が終わった後、窓河は、そのまま、

昨日のお言葉に甘えて、彼女の家へ向かった。



〝ピーンポーン〟



「は~い」彼女が出た。

「ハァハァハァ」窓河は、息を荒げている。

「アレ?窓河君?どうしたの!?」

「ごめん!ちょっと、すぐ聞いて欲しい話があって、走って来たんだよ!!突然ごめん!!!」

「良いわよ!窓河君、息が切れてるから、

とりあえず、中に入って落ち着いて!!」

「うん・・・ハァハァハァ・・・」



「で、何があったの?」

「俺、もう、この仕事、辛いんだよ・・・限界なんだよ・・・」

「どうして?窓河君、いつも、仕事、一生懸命頑張ってるのに」

「いや、頑張るとか頑張らないとかじゃなくて、俺、この仕事、

上手くこなせてないし、いつも、

君や職場の皆やお客さんには迷惑かけてばかりだし、

周りの皆とは上手く打ち解けられねぇし・・・」

「そうなの?」

「〝そうなの?〟って、そりゃ、見てりゃ分かるでしょ」

「あ~、ごめん!私は、そう思った事が全くないから。」



「そうか・・・でも、俺、昔から、いつも一人で、

名前が〝窓河〟で、そんで、席替えの時も、たまたま〝窓際〟に

なる事が多かったから、〝窓際族の窓河〟なんて、昔から

呼ばれてたんだ。でも、〝窓際族〟なのは、

今も変わってないんだけど・・・その上、

俺を採用した上司にだって、〝何でお前みたいなヤツを採用したんだろ?〟って言われる始末だし・・・・・・」

「そうなんだ」

「もう、嫌なんだよ!!この忌々しい蔑称も!!!自分も!!!」

41.たった一人の理解者だった

「そうかしら?私はその呼び名、好きだけどな」

「え!?〝窓際族〟だよ!!こんな名前のどこが良いの!?」

「いや、そりゃ、確かに、窓河君は、個性的で、色々とモノ好きだし、頑固なところもあるから、〝気難しい〟って感じる人も

いるかもしれないけど、だから同時に、しっかり信念もあって、

何事も途中で投げ出さないで常に一生懸命だし、そして、

何より優しいし。〝理解してくれる人が少ない〟っていうのは、

それだけ、窓河君の良さは、たとえるなら、かつての

〝ゴッホの絵〟みたいに、誰にでも解るワケじゃないくらい

〝魅力が強い〟って事じゃないかしら?」

「そう・・・なのかな・・・?」

「うん!きっとそうよ!!いや、絶対そうよ!!そうに違いない!!だから、物解りの悪い上司の人達の言う事なんて、

気にしなくて良いでしょ!!」



そう言われて、

嬉しさのあまり、窓河は泣きだし・・・

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫んだ。

たくさん泣いた。


42.窓際族はカッコ良い!?

数十分後・・・



「窓河君、ノド、乾いたでしょ?」

「う、うん・・・」



彼女は、

コップに水道水を入れて飲ませてくれた。



「はい」

「ありがとう」



〝ジュー〟



コレがまた、ただの水道水なのに、とても、

そうとは思えないほど、かなり美味しい。



「ア、アレ?コレ、悪いけど、ただの水道水だよな?」

「そうだけど・・・」

「何でこんなに美味いんだろ?この前、君が会社で夜遅くにくれた水と同じくらい美味い。何でだろ?」

「う~ん・・・疲れてて、凄く苦しいぐらいにノドが渇いてたからじゃない?でも、良く分かんないけど、この前の水も、今飲んでる

その水も、窓河君にとって物凄く美味しいなら、何でもないただの水道水でも、窓河君にとっては凄く高価なモノなんだと思う」

「そうか~・・・」



「窓際族・・・か」

「うん?」

「あ、いや~、さっき言ってた〝窓際族〟って、窓河君は、嫌ってる言葉だけど、私は、

「ワケあって周りの人達から受け入れられなくて孤立してるけど、

〝渋い孤独のヒーロー〟みたいでカッコ良いと思うんだけどな~」

「そうか。君は、とても前向きで真っ直ぐなんだね!!」

「そんな事ないよ!!(笑)」この時、

窓河は、「この娘はなんて純粋な娘なんだ・・・・・・!!」と

思った。そして、彼女は言った。

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